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kihaneさんのティアーズ・トゥ・ティアラII 覇王の末裔の長文感想

ユーザー
kihane
ゲーム
ティアーズ・トゥ・ティアラII 覇王の末裔
ブランド
AQUAPLUS
得点
71
参照数
13171

一言コメント

微妙。本作を一言で表現すると、微妙としか言いようがない。長文前半はネタバレなし、後半は盛大にネタバレしつつ感想を述べていく。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


本作・覇王の末裔のネタバレはないが、前作・花冠の大地のネタバレは少々あるので注意。
また、推敲らしい推敲はしていないので、誤字脱字は勘弁。


クリアタイムは72時間半ほど。私のプレイスタイルは以下の通り。
・アドベンチャーパートは基本的にオートモード(スピードはデフォ)で、99%以上のボイスは最後まで聞いた。
・バトルパートは最終章あたりまで基本的に敵を殲滅したり、宝箱を取りに行くのを優先して、勝利条件を満たすのは二の次だった。
・雑魚戦(シナリオ進行上、必須ではないバトル)は二、三回ほどしかしなかった。
・前作・花冠の大地のクリアタイムは62時間半ほど(プレイスタイルは本作と同様だった)。

というわけで、単純に考えれば本作は前作より10時間分もボリュームが多かったことになる。
ただ、このボリューム増大を良しとするか悪しとするかはプレイヤーの気持ち次第。
物語に没入できれば喜ばしいことなのだろうが、そうでなければ辛いことになりかねない……


おそらく誰もが気になっているであろうシナリオについて。
これは上述したとおり、微妙としか言いようがなかった。
悪くはないのだ。では、良かったのかと問われれば、決して首を縦には振れない。
続きが気になるような話ではないのだが、かといって途中で投げ出してしまおうと思えてしまうものでもない、実に中途半端さ漂う物語だった。
正直、良し悪しの二択で答えるのなら、悪かった。とてもではないが、前作を超えたとは言えない。
シナリオは公式サイトにも記述されているとおり、ヒスパニアという国の反乱に主人公ハミルが巻き込まれていき、帝国と戦うことになる。
が、物語の進め方があまりにもお粗末。中学生でも書いていけそうな展開が続き、本作謳い文句の「待望の正統派ファンタジーRPG最新作」が聞いて呆れる。
前作のシナリオとも一応リンクしてはいるものの、花冠の大地はプレイしていなくとも問題なさそうだった。ただ、プレイしておいた方が良いのは確か。
本当にシナリオは壊滅的と断じて良いデキだったが、一つだけ号泣できたイベントがあり、そこだけは前作以上に感動できたことが唯一の救い。
本作に71点をつけたのは六章の感動に免じてのもの。もし六章がなかったら、50点以下になっていただろう。


キャラクターにも前作ほどの魅力がなく、キャラ同士の掛け合いもワンパターンなものが多かった。
敵キャラにも惹かれるものがなく、例えば前作のガイウスやリディアのような、最後まで敵役でありながらも人情あふれる想いや事情を抱えたキャラがいなかった。
というか、敵の想いや事情は理解できるし共感もできるが、それを掘り下げていなかった。
前作の敵キャラであるガイウスや腹心の副官デキウス(デキウスはアニメ版だけだったか?)は彼らなりの正義を持って、それを上手く物語に織り込んで、見せ場へと昇華させていた。
だが、今作にはそうした物語への上手な織り込みが出来ていなかった。決して下手というわけではないが、及第点は与えられない。
主人公については、悪くはない。前作はアルサルのクズっぷりに呆れ、アロウン様の素晴らしさに惚れ惚れしたものだが、本作の主人公ハミルはその中間くらい。
優秀で良い奴なのは確かだが……如何せん、中二病全開すぎて少し引いてしまった。
ヒロインであるタルトについては可もなく不可もなく。見た目は可愛いし、性格もツンデレっぽい感じで悪くはない。しかし、それだけ。なんともテンプレっぽいキャラだった。


グラフィックに関してだが、これは3DとCGとの差が激しすぎる。
CGは文句なく、業界最高峰に美しい。塗りがビックリするくらい丁寧で、今年プレイした作品の中で最高に美しかった。
というか、もう麗しいと言えるレベル。立ち絵も前作より安定していて、イベントCGに関しては確実に進化している。ただ、イベントCGの枚数が39枚と少なかったのが残念でならない(差分含まず)。
3Dグラフィックについては、どうしてこうなったと嘆かずにはいられなかった。
ポップなチビキャラになった必然として顔が大きくなり、おかげで喜怒哀楽の表情を表現できるようになった一方、前作に比べて相当に安っぽくなった。
特に今作は「覇王」がテーマの一つで、戦争とは切っても切り離せない物語になっている。その戦争シーンでチビキャラたちが戦っていても臨場感が伝わってこなかった。
これは致命的な欠陥で、大きな見せ場や緊張感漂う状況でもショボく感じてしまい、結果的に感情移入の妨げになった。


音楽は相変わらず素晴らしく、サントラが発売すれば確実に購入するレベル。
特に「永遠の誓い」、「悲しき安息」、「はじまりの日」あたりはBGMとしては飛抜けている。
OPの主題歌も良くできているし、挿入歌、ED曲にも外れがなかった。
前作のアレンジ曲が結構あり、それはそれでティアーズ・トゥ・ティアラの続編らしくて良いのだが、もう少し新規楽曲に力を入れて欲しかったとは思う。
声優も特に問題はなく、立ち絵つきのキャラは総じて良い声と演技をしていた。特にハミルの父親ハッシュドゥルバルの声を大御所が当てていて、かなり味のある声で大変良かった。


バトルは及第点。ただ、今作は難易度が上がっているように思える。
三章あたりまでは難易度ノーマルでプレイしていたが、すぐに味方キャラが死ぬため、イージーに変えて最後までプレイした。
ノーマルは雑魚戦でレベルを上げながら進めていけば、歯ごたえのある戦闘を楽しめると思われる。レベル上げせずに物語りをサクサク進めていくにはイージーが最適。
バトルはリザルトで評価が下されるので、私は出来るだけターン数を少なくしてクリアしようとしていたため、ノーマルで難しく感じていたが、べつにターン数にこだわらなければノーマルでも良いかもしれない。
バランスブレイカーである巻き戻し機能について、プレイ前は「こんなゆとり機能、絶対に使わん」と馬鹿にしていたが、これが便利すぎて多用してしまった……
前作はどうだったか覚えていないが、今作はSRPG作品で有名なSTINGが制作に関わっているので、バトルに関しては特に不満はなかった(グラフィックには不満ありありだが……)。
シナリオを進める上での必須バトル数は46、7回ほどだったと思う。
プレイ時間におけるバトルが占める割合は……おそらく、五割ほど。一戦に一時間以上かかることが結構あった(とはいえ、バトルパートで勝利条件の達成を最優先にして進めていれば、相当の時間が節約できる)。
クリア後に表示されるバトルのトータルリザルトはBランクで、総ターン数は432。平均して一回のバトルは10ターン以下で終わる計算だが、実際は5~20ターンかかるものまで幅広い。
クリア後にはおまけシナリオが解禁され、専用の遺跡で難易度HARD固定のバトルが楽しめるようになっている。私は少ししかやってないが。
ただ、このおまけシナリオにはボイスがない……


システムは必要十分なものが揃っていた。
しかし、アドベンチャーパートでセーブできないのは痛かった。そろそろ寝ようと思っても、アドベンチャーパートがなかなか終わらず、眠気を堪えてプレイしていた。
それにセーブデータが99個までしか保存できなかったのはいただけない。幸いにも、クリアデータを含めてちょうど99個全てが埋まったから良かったものの、せめて200個くらいのセーブ枠は用意してほしかった。
普通はそこまでセーブデータを残してはおかないのだろうが、ADV+SRPGのゲームは重要なイベントシーンがバトル後にあるので、再プレイ時の対策として、バトルパートクリア直後のデータを残しておかなければ、すぐにシナリオが読めないという欠点がある。
なので私はいつも小まめにセーブして、それを残しておくので、こういったゲームにはチャプター機能をつけて欲しかった。エロゲにおけるえちぃシーン回想のような、マブラヴオルタで見られたあの機能。




総評としては可。
取り分けて駄作というわけではないが、良作というにはシナリオが平凡以下で残念すぎる。
一部のイベントは本当に素晴らしいものだったが、それ以外はある意味ありきたりで幼稚な展開が続き、苛立ちを覚えたことは一度や二度ではなかった。
本作最大の欠点はシナリオだが、その次が演出で、ポップなチビキャラが全てを台無しにしている。せめて3Dグラフィックが前作同様の等身大なものだったら、佳作にはなっていた。

ではなぜ、前作から打って変わってショボい3Dグラに趣旨替えしたのか。私はずっと不思議に思っていたのだが、ふとプレイ中に気がついた。
考えてみれば至極単純なことで、移植のためだ。
前作・花冠の大地はPS3からPSPへと移植する際に、3Dグラを総リメイクした過去がある。花冠の大地の3DテクスチャはPS3では処理できても、PSPではとても処理しきれなかったからだ。
十中八九、本作はPS3版のデータをそのままに、PSVitaへ移植されるはず。
PSVならばPS3の花冠の大地レベルのデータも処理できそうなものだが、携帯機は画面が小さいので、等身大の3Dキャラだとゴチャゴチャして非常に見辛いだろう。
しかしチビキャラならば分かりやすいし、キャラが小さいから周囲のマップデータ(主に建物)も細部は簡略化したテクスチャが使用できる。
それは処理負荷の軽減に繋がり、引いてはPS3からそのままデータを流用して移植可能ということになる。
PS3・PSVの両機展開タイトルとしては既に英雄伝説 閃の軌跡が発売されているので、十分に可能なことだろう。閃の軌跡はプレイしたが、グラフィックのレベル的に本作と同程度だったので、まず移植は容易に可能なはず。
というわけで、前作がPSPに移植されたので、今作はまず間違いなくPSVに移植される。たぶん一年後くらいに。まあ、PS3版が売れなかったら移植されないだろうが……
一方で、PCへの移植はないと思われる。前作が移植されなかったので、今作だけ移植というのは可能性が低すぎる。



アクアプラスの続編ものタイトルとしては「うたわれるもの2」が控えているわけだが……もう私は希望を捨てた。
うたわれ2が発売されれば、まず間違いなく購入するだろう。しかし、過度な期待はしない。
そして……なあ、アクアプラスよ。私は初回限定版を購入したが、結局アルルゥを使用することなくクリアしてしまったぞ。
なぜだ、なぜ十一月七日からしか特典がダウンロードできないのだ。アルルゥ使えるの楽しみにしていたのに……


ネタバレなし感想としては、こんなもの。
以下のネタバレあり感想は愚痴めいた雑記のようなものだが、私的に本作の感想としてはむしろメイン。
盛大にネタバレしているので、目を通すのはプレイ後かプレイ予定のない人でなければ、オススメしない。





















=========以下から盛大なネタバレ==========





















本作のシナリオで、まずなによりも不満だったのが、死を冒涜している点である。
第九章において、拠点であるタルテトス防衛戦があり、そこでモノマクがもののふとして熱い気持ちを滾らせて、結果的に見事タルテトスの防衛を成功させる。
しかし彼は瀕死の重傷を負ってしまい、彼の心意気に応えて現れた竜族によって丁重に弔われることになる。
ここは割と感動できた。ここに至るまでのシナリオがお粗末なもので、とても感情移入できるものではなかったが、この場面だけ切り取ってみればなかなかの名シーン。
クリア後の特典として解放される声優のボイスメッセージでも、このシーンが感動的だったと何人かの声優も口にしていたほどだ。

が、問題はこの後。

あれだけ感動的なシーンにしておいて、なんとモノマクが復活する。人間ではまず助からなかった傷を、竜族の力によって癒やしたのだという。
……なんだそりゃと。ふざけるなっつの。
39枚という数少ないCG枠を割いて、瀕死のモノマクと号泣するディオンを見せつけておいて、モノマク復活て……
システムメッセージでも「モノマクが死亡しました」とか告知しておいて、今度は「モノマクが復活しました」って。

ライターは死をなんだと思っているのか。

物語において、仲間の誰かが死ぬというのは重大なイベントだ。決して取り返しの付かない、だからこそ意味のあるイベントなのだ。
モノマクの拠点防衛イベントが感動的だったのは彼がその命を賭してタルテトスを守ったからだ。
にもかかわらず、後になって「実は生きてましたー、テヘ☆」というのは感動をぶちこわす行為に他ならない。ライターはプレイヤーを苛立たせたいのか?
この復活イベントのおかげで、物語最後のタルトがハミルを庇って死ぬ場面では全く感動できなかった。
「どうせ復活するんだろ?」というのが目に見えていたからだ。もしライターがモノマクを死なせたままにしておけば、あるいは「タルトは生き返らないのか?」と緊張感を覚えたかもしれない。
だが結果は案の定で、タルトは元気に復活し、大団円のハッピーエンドを迎えた。
作中に登場するゴルメスは死んだ人間を材料に作られ、主人公たちがそのことに対して「死を冒涜するな」と声高に主張する場面が多々ある。
しかし、私はライターにこそ「死を冒涜するな」と言いたい。
それとも、本作はライターの自身に対するアンチテーゼなのか? 死を重んじるからこそ、死を軽んじる展開にしたとでも言うのか?

という、ご都合主義的に最悪のイベントがあった一方で、イゼベル死亡のシーンは最高だった。
本作最大の山場である第六章において、剣メルカルトの能力によって封じられていたハミルの記憶が蘇り(あるいは周囲の人間の記憶が結合して)、イベゼルの秘めたる想いが明らかになる。
私は初めからイゼベルに対して、「実はこの美人、味方なんじゃ?」と疑っていたが、物語が進むにつれてその疑問を否定するようになっていった。
なにせ、イゼベルが悪役すぎたのだ。本当は味方なら、ここまですることはないだろという血も涙もないイベントが盛りだくさんすぎて、それはそれで逆に怪しかったが、イゼベルは敵キャラなのだと思い込んでいた。
まあ、敵キャラといっても安っぽい敵キャラだが。心情や主張が見えず、ただ悪役っぽい悪役。
物語を盛り上げるための装置のようなキャラクターだと思い、私は「これがティアーズ・トゥ・ティアラの続編かよ……」と失望していた。
しかし、過去編が始まって失望が一転、期待に変わった。当初抱いた疑問が正しかったことを確信した。
イゼベルが敵に回っていた理由などは意外で、なるほどと納得できた。六章に至るまでの苛立ちの募る展開の数々も、許容しても良いと思えるくらいに感動した。
イゼベル死なないで仲間になってくれないのかな、と本気で思ったほどだ。しかし彼女はしっかりと死に、物語の舞台から綺麗に退場した。
六章だけなら90点あげて良い。それくらい素晴らしいデキだった。

こういった感動的なイベントをプレイヤーに見せつけておいて、九章でモノマクが死に、生き返ったのだ。
モノマクが死んだ当初、私は「あー、マジか……」と落胆した。まさかここでモノマクを退場させてくるとは思いもしなかったのだ。
だからこそ、モノマク死亡イベントは評価できたし、それなりに良いシーンとして覚えていたのだが……モノマク復活で全てが台無しになった。


本作は物語の展開するテンポが非常に悪かったことも不満点に上げられる。
重要な、緊張感のあるシーンで、キャラクターたちが暢気に会話したり、長々と話を続けたりするシーンが多々見られた。
そのせいで臨場感もクソもあったものではなく、ショボい3Dグラと相まって幼稚な茶番劇を見ているようだった。
しかも無駄にダラダラと続く無駄話の大半はディオンが馬鹿な言動をし、それを周囲が呆れ諫めるというワンパターンが非常に多く、手抜き感が浮き出ていた。
特に腹が立ったのは二章終盤のタルテトス前のイベントで、敵味方共に行動すべきところで行動せず、ダラダラと無駄話を続けていき、結局はご都合主義的な展開になった。
全十二章構成の二章目で、早くも心が折れそうだった。
しかし、そこで期待するのを諦めたおかげか、三章のアルティオとサウルの話や五章のエリッサとダフニスの話などは、それなりに楽しめた。
今思えば、良くもなく悪くもない、せいぜいが及第点レベルのありきたりな話にもかかわらず、徹底的に落とされた後に見せられた話だったので、思わず「おお、いいじゃん」と思ってしまった。
これをライターが狙ってやっていたのだとしたら、大したものだ。
物語というものは読者にストレスを与え、それを解放させることでカタルシス――つまり感動をもたらすわけだが、ライターはこれを最低最悪の方法で実現したと言える。


上記にイゼベルのイベントが感動的だったと述べたが、私はハミルとタルトの話にも何か感動的な要素があるのだと最後の最後まで思っていた。
なにせ主人公とメインヒロインなのだ。イゼベル以上の感動が彼ら二人の間にもあるのだと、かなり期待していたのだが……
欠片もなかった。胸を打たれるようなイベントが全くなかった。
物語最後のタルトがハミルを庇うシーンなどは、OPムービーでも一瞬だけ見られ、ライターとしては感動的な山場にしたつもりなのかもしれない。
が、プレイヤーとしてはタルトの心情に全く共感できず、唖然としてしまった。
タルトの「私はお前たちを裏切るのだ」云々のくだりが茶番すぎて、開いた口がふさがらなかった。
なんだそれはと。そんな茶番シーンのために、わざわざOPムービーでハミルとタルトが剣を交わらせている意味深なあのカット入れ、プレイヤーの期待感を釣り上げたというのか?
もうね、失望を通り越して絶望した。最後の最後で致命的なまでにとどめを刺された。これがティアーズ・トゥ・ティアラの続編かと思うと、もう呆れて何も言えない……


キャラクターの魅力不足も、シナリオの良し悪しと切っても切り離せない関係にある。
今作の仲間たちには決定的なまでに見せ場が不足していた。
例えば上記のモノマクなどは飛抜けて良い活躍の場を与えられていたが(結局は復活イベントのせいで台無しになるわけだが)、他のキャラはそうでもない。
アルティオとサウル、エリッサとダフニスは未だしも、ディオンやエネアデスの内面を掘り下げる話が決定的に不足していた。特にエネアデス。
パッケージの右下に女性と見まがうほどの超絶イケメンとして描かれているエネアデスだが、彼には全く見せ場がなかった。ただの教師役的な都合の良いキャラ。それがエネアデス。
極めつけはアエミリアとゴリアテ。この二人は冷遇されすぎ。というか、物語の進行上、仕方なく仲間にした感がありありのキャラ。
ゴリアテなどは敵キャラとして立ちふさがるかと思いきや(公式サイトの記述もそう思わせる文章なのだが)、あっさりと仲間になり、しかし彼の人間性については全く掘り下げられていない。
それはアエミリアも同様で、おかげで仲間たちに愛着を持てなかった。
ただ、カリスは過去編、クレイトは竜化と彼女らには見せ場があったが、それが各キャラを好きになる切っ掛けにならなかったのも痛い。
特にクレイトなんかは掘り下げようと思えばいくらでも出来ただろうに、それを上手くシナリオに絡める努力もせず、退屈なシナリオにしたライターの罪は重い。
むしろメインキャラよりサブキャラが光っていた。ハッシュドゥルバルやタルトの母親イシュタルなどの方がメイン陣よりよっぽど魅力的だった。


演出面について、これだけは述べておきたい。
本作は戦争がメインに添えられたシナリオが展開していく中で、3Dグラフィックによる演出が稚拙すぎて、迫力が微塵も感じられなかった。
表示される民衆や兵士たちの数も圧倒的に少なく、読み込めるメモリ容量の限界などといった問題はあったのだろうが、そのせいで戦争という場面を上手く演出できていなかった。
むしろショボい3Dグラフィックがシナリオを貶めていた。まるで人形劇のような戦争シーンはない方がマシなレベル。
前作・花冠の大地のうアヴァロン城戦などはそれなりに臨場感もあって楽しめたのだが……今作にはそれがなかったのが残念でならない。


私は六章のイゼベルイベントを見たときに「これはアニメ化するな……」と期待したものだが、六章から終章までのシナリオでその期待感は完膚無きまでに消え失せた。
上述したが、本作は六章が山場。苦労して六章という頂に登り、そこから見えた景色は最高だった。
が、その後の残り六章分のシナリオはまさに消化試合。登った山は下らなければならいので、仕方なく歩いたという思いを抱かずにはいられない。
極端な話、私はティアーズ・トゥ・ティアラにSRPG的な要素は端から期待していなかったので、どれだけバトルが残念でも構わないと思っていた。
代わりにシナリオが良ければ、それだけで良いと思っていたのだ。
それは他にも数多あるエロゲにも言えることで、私はまず第一にシナリオを重視し、絵やシステムなんかは二の次だと思っている。
だからこそ、本作の残念すぎるシナリオには心からの落胆を禁じ得ない。本当にもう、やらかしてしまったよアクアプラスは。
72時間半もかけて――並のエロゲならば2、3本はコンプリート出来るだけの時間を使ってクリアしたにもかかわらず、シナリオがあの完成度。
六章でやめておけば良かったと後悔しても時既に遅し。消費した時間は戻ってこない。
上述したとおり、うたわれるもの2も発売日に購入してプレイするつもりだが……うたわれ2が今後のアクアプラス(ひいてはLeaf)の試金石になるのは、もはや決定的。

ティアーズ・トゥ・ティアラⅡ 覇王の末裔
本作を再プレイすることは二度とないだろう。したとしても、六章の過去編とイゼベル死亡のイベントだけ。
もはやおまけシナリオをプレイする気力はないし、特典のアルルゥをダウンロードして使用するためにPS3を起動するのも面倒くさい。