細かいことは気にしない方向で
ネタバレです。
叙述トリックは基本に沿っていて、ネタ明かしはいいタイミングだったと思います。病気オチ、兄貴オチもミステリ小説では珍しくないので別段気になりませんでした。
部活ネタや栄一ネタなどギャグも肌に合っていましたし、緊張感のあるシーンに引っ張られ(疲れたけど)退屈せずに遊べました。
気に入っているのは椿姫のBADENDで、あまりギャルゲにないタイプだったと思います。陵辱系ではありそうだけど。
不満点として、
・権三が書き込み不足。最期のシーンもおかげで盛り上がらんし、そもそも魔王様や主人公とのきちんとした対決の場も用意されずにあんな尻すぼみ的な死に様はプレイヤーへの裏切りなんじゃないかなと思います。FDに持ち越すのか?
・弟に母親を押し付けて、仕送りもせず自分は復讐(計画)に逃げたくせに、散々悲惨な目にあって母親のために権三のもとに降った弟を糾弾する魔王様。あんたわがままMAXなんじゃないかと。そのため、感情移入(同情)がしづらく、魅力を感じられませんでした。迂遠で正面から戦うこともなく、知謀ばっかり振りかざし、子供っぽく、他者への思いやりに欠け、のわりに冷血漢というわけでもなく、非常に中途半端なお方で、権三のほうが悪役としては立派に魅力がありました。
・主人公の弱さ。頭が回るわりに、あまりその設定を活かせず、ハルが謎を解いてひゃーっと驚いてみる係。それでも、ミスリード期間中ならばそういうフリをしているのか?と読ませますが、ネタが上がってからは単純に弱すぎる……。かといって、無能ではないけど、せいぜいパパの兵隊を配置する役割に利用される程度。
権三や魔王様とは本来なら、こいつが決着をつけねばらないのに対抗するには能力不足。権三が降臨されて、いよいよ主人公にも力が?と思いきや、ヤクザをビビらすだけ。その強さが特に発揮される場面がなし。
個人的には、魔王様の正体は主人公で、ハルと知謀をめぐらし対決したほうがおもしろかったなとか。というか、凄惨な目にあった主人公が魔王に近い感情を抱かなければ嘘でしょう。大きなストレスを抱えて、時々(ヒロインたちに)暴力的にはなるけれど、強いものと金に従い、おまけに知力でハルに大きく劣り、武力も低く、これがエロゲの主人公でなければ典型的な小悪党。小悪党に振る舞いながら、裏では魔王様っていう設定のが魅力があったんじゃないかな。
・カタルシスが弱い。どのルート、エンディングも手放しで良かったね!っていえるのがなく、プレイヤーに媚びろっていうわけじゃないけど、微妙にストレスの溜まるシーンばっかりだったのが疲れた……。結局、勇者御一行は魔王様の手のひらで最後まで踊っていたわけで、魔王様に打ち克てないわけで、すっきりとしない。欝とまではいわないけど、プレイヤーにプレッシャーをかけて物語をずっと進めているわけだから、その溜まったプレッシャーに見合うラストが待っていても良かったんじゃないのかな。事件が解決するのも魔王様の手引きであり、主人公たちは何もしてないわけですからねえ。
あのグランドエンディングもこのゲームの必然といわけじゃないし、あれがあったからこそ主人公の罪が償われたのかもしれませんが、魔王様にしてやられた感が強く、ストレスが残りました。綺麗にまとめたいだけだったんじゃないかと。そのせいか、小理屈は多いものの、ハルエンドの展開が強引に感じられました。
そういう意味では構成とバランスの悪いゲームだったなと思います。
・ユキさん、あんた何しにでてきたの……。捕まりそうになって、引きこもり。その力で主人公たちと魔王様を追い詰めてくれるものだとばかり思っていまして。ハルルートとは別に、そういう展開も用意して欲しかったなと思います。
ツッコミどころはたくさんあるんですが、あんまやっても仕方がないので、この辺りにします。
全体的にストーリー、キャラクター(の活かし方)、演出などが中途半端な印象です。どんでん返しばかり狙い、ひとつひとつのプロットが散漫だったのが残念。
勧善懲悪ではなく、理不尽を描いている物語だけれども、整合性のなさ、強引な展開が目立ち、不満点が多く残りました。そういう点では、物語としての説得力が弱かったと思います。
ただし、単純に物語を引っ張る力があり、おもしろかったのはおもしろかったので80点です。