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kidopeさんのScarlett ~スカーレット~の長文感想

ユーザー
kidope
ゲーム
Scarlett ~スカーレット~
ブランド
ねこねこソフト
得点
72
参照数
326

一言コメント

スパイものの雰囲気をなぞった作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

設定が特殊。リアルなスパイものではなく、粗の目立つ俺様ルールに則っている世界設定。そのため、その中で四苦八苦するキャラクターをみても、いじわるな見方をしてしまえば、滑稽です。スパイごっこみたいです。っていうか、このルールじゃ、そもそも成り立たないでしょう。フィクションにしても滅茶滅茶すぎるように思えます。

設定の粗に目をつぶったとしても、ボリューム不足です。プロローグ、エピローグと全四章の構成ですが、第一章が馴れ初め、第三章が丸々過去編に割り当てられ、第二章、第四章は九郎ばかりが活躍し、片割れの主役である明人の活躍はほぼない、といっても過言ではありませんw プロローグは明人の物語から始まるけど、実質的な主人公は九郎です。ヒロインのひとりであるしずかも、登場時のインパクトほど活躍の場をもらえませんでしたw
物語の筋は一般人の明人が非日常の世界に身を投じ、成長し、離脱するまでが描かれています。ですが、成長の部分が一足飛びで、それは良しとしても、活躍している描写もほとんどなく、ドジって、ヒロインとくっついて離脱。その間、冒頭で期待させるような、バトルや緊張感のあるスパイとしても駆け引きは皆無です。
第一話、第二話、そしていきなり最終回を読んだ気分です。明人の成長譚がこのゲームの半分であるはずだけれども、それを成り立たせ、読者にみせるにはエピソード不足でした。
明人が主人公でも、九郎が主人公でも、いったい誰の物語だったのでしょうか? 視点もそうですが、その部分が散漫で、欲張って全てを描くにはボリューム不足でした。このキャラクターたちをこの筋で魅せるには、最低2倍以上のテキストが必要だったんでは?と思います。

テンポのいい文章で、不必要な萌えやらギャグがだらだら続くこともなく、ストーリーにも引っ張られ、最後まで大きな間隔を空けることもなくプレイできたのは良かったです。魅力のあるキャラクターたちと、非日常(という厨二臭い言い回しと願望w)もそれはそれで魅力のある舞台だったように思えます。
つまらなかったか、おもしろかったかと訊かれれば、不満はあるけどおもしろかったというのが正直なところです。しかし、先に述べたように消化不良。この手のゲームでプレイヤーが(というか、私がw)期待するのは、ベタでも、命のやりとり、弱者(=主人公)の強者への逆転劇、ヒロインを守るとか、その辺じゃないでしょうか。そう、この手のゲームに必須(だと思われる)燃えがないんですよぉ!!w せっかくの世界観を活かすための、そういった美味しいところが描かれてないのが残念。もったいない、という言葉に尽きるかもしれません。