面白かったし個人的には好きな話だったが、いい意味でも悪い意味でも期待を裏切らない
ほとんど感想を書いたことがなく見苦しい文章かと思いますがご容赦ください。
本作ですが、舞台背景や設定が丁寧に作りこまれており、
「失くした過去を乗り越え、未来へと歩む物語」というキャッチコピーについても
しっかりと描かれているのがよかったです。
ただ、王道なシナリオのため先が予想しやすいです。
似た展開や世界観をゲームや小説等で見たとなる可能性は高く、
この辺を気にする人は評価が落ちるかなと感じます。
尚、個人的にはこの点を評価に含めておりません。
ゲームのプレイ順で評価が変わってしまうのは好ましくないと思うので。
唯一無二の展開などは評価しますが、正直面白ければなんでもいいかなと。
シナリオですが、テンポが非常によく、常に読み進めたくなる構成でした。
各エピソード終わりの転換がよく、区切りも明確で読んでいてつまらないなという区間は少なかったです。
ミリィが口だけではなく実際に行動に移し続けるので好感が持てました。
現実と理想のギャップには苦しむものの、心折れず糧にして前に進み
主人公や他のヒロインを変えていく流れもよかったかなと。
設定が非常によく練られていることから、
種族間で起きる問題や展開等についても違和感はあまりありませんでした。
正直なところ欠点だと言える点は少ないです。
しかし、全体を通して勿体ないなという感じる部分が多々ありました。
その中でも大きく感じたのが下記2点です。
①伏線箇所が分かりやすい上、その答えがあまりにストレートすぎるところ
②個別ルートにのミリィの見せ方について
①について
ミリィがクラウディアについて話す際、カイが「奴がヒュームとの融和 情報と違う」と奴呼ばわり
シルヴィアに妹がいたことがわかるシーン後すぐの場面、若葉「私に兄はいなかった」発言
ヴィルレーベン「おかしい、貴方からは吸血衝動がしない」
他にもあるのですが、展開、セリフから感じる印象、予想がそのまま答えになるパターンが非常に多かったように思います。
また、本人が思ってることと実際は違うというパターンも多く、
これも反対なんだろうなという予想も大体その通りだった印象です。
伏線が露骨すぎる点は、解答シーンで損をしているように感じました。
割と急に伏線みたいなこと喋り出すので、これ何かあるよなと思うシーンも多かったように思えます。
伏線が分かりやすいのはメリットでもあり、期待しながら読み進めること自体はできたのですが、
裏切られるシーンがほとんどないため、期待を超える展開や驚きが少ないわけです。
場面の見せ方で損をしているという感覚は拭えず、非常にもったいなと感じました。
核心の一つや見せどころについてミスリードを混ぜる等が工夫があれば違っていたかなと。
②について
レイリやソフィア等、多くのキャラクターが成長していったのが見ててよかったです。
レイリですが、若葉を通して成長、目的を達成した後、取り巻く環境から次の目標を見つける。
行動理由も自然で、キャッチコピー通りしっかりとまとまっているなと思いました。
ソフィアは目的の為なら手段を問わず、人を駒のように扱い損得勘定で動くキャラでしたが、
後半、自分以外を信じるという選択を取っています。
EP1の時点では自分の破滅が他人の手で決まる、そんな選択はできなかったなはずで確かな成長を感じました。
また、親の遺言を実行するだけでそこに自分の意志は介在していませんでしたが、
成長の過程で自分自身でやりたいことを見つけていますし、綺麗なまとめ方だったと思います。
※なぜかソフィアルートだけ退場者が多かったようには思いますが。
ミリィですが、多くのキャラクターが成長するきっかけになっており、
まさしく希望といえる存在でした。その描き方について文句はありません。
また、EP1で自分でも周りでもいいから力を持ち、それがあるなら正義を貫けと言われていましたが、
自信の姿を周りが認めていき力をつけた流れもよかったです。
ですが、ミリィ自体の見せ場で納得がいかない、勿体ないという部分がありました。
それがトロッコ問題についてです。
EP1にてミリィはどちらも救うことを諦めないという、理想を目指す旨の回答をしますが、
カイの言及通り二択問題であり、回答にはなっていません。
レイリルートにて再登場した際、レイリを犠牲にすれば全て丸く収まる。
大局的に見ればそれが正解であるものの、カイやミリィ等、みんなすぐに選択することができません。
最終的にカイが中立特区を安全地帯に変えるいう方法で問題を解決しますが、
ミリィは答えを出していないまま話が進んでいきます。
そしてようやくミリィルートで回答の機会が訪れます
帝国VS連邦、合衆国の構図となり、CSSの予想でヴァンプが壊滅的な被害を受けることを知る場面ですね。
ここでミリィは多数を取るために帝国を裏切ります。
この決断が大きなものなのはわかりますし、成長の賜物でしょう。
しかし既に戦争が確定しており、ミリィ個人ではなく皇女としての選択として、一種の正当性、大義名分があっては
トロッコ問題の解答としてはふさわしくないと感じてしまいました。
正直なところ、レイリルート同様、個人的な感情が天秤になければ多数を選ぶのは当たり前ではないかと。
この後のアーマゲドンの件も同じです。
戦争が始まっており、帝国を裏切って引き返せない今、打たないという選択があるのでしょうか。
私はミリィに究極の二択が必要とは思っていません。
シビアな世界観に反して絶望的な展開や鬱、暗い描写は避けているように思えたので、
希望や光といった部分を強調したいのかなとも感じています。
ただ、個人的な感情を抜きにした多数か少数かを選ぶ問題のシーンで、
「これが私の答えです」と答えられても説得力を感じませんでした。それはそうではと。
それならレイリルートでレイリを含む少数を選択できない展開を入れる必要がなかったように思えますし、
そもそもEP1でミリィに与えられるのがトロッコ問題なのは不適切ではないかと
EP1の問いにグランドルートで答えるという場面として非常に勿体ないなと感じてしまいました。
本国の指示でシルヴィアは戦争に参加中、
アーマゲドンを打つと巻き込む可能性がある、シルヴィアの位置を確認している間にも
死者が増え続け民間人も巻き込まれているているがどうするか等、
見せ方は作ろうと思えば作れたようにも思えます。
実際にシルヴィアが巻き込まれる必要は必要なくその可能性があるのに選択できるのか、
それくらいはないと回答シーンとしては弱かったなと。
何度か見返したのですが、レイリルートでの流れがあるため、
ただ多数を選ぶという見せ方に最後まで納得がいきませんでした。
レイリルートと違ってカイと恋人関係になり、「彼が傍にいるからミリセントでいられる」などと言うのであれば、
ミリィルートだからこその強さが際立つ展開、または別の問題提議が必要だったのかなと。
最後の父との展開、父の想いは大好きです、
王道の極みとも言え純粋に面白いと思いました。
※ミリィが父を撃つことについてもトロッコ問題の解答としては弱い認識です。
死者が出ていない、戦争開始前であれば話は違いましたが。
愚痴のようになりましたが、微妙だと感じた点は以上です。
よかったところについて
虚構から始まっても過ごしてきた時間は本物
この考え方が好きでした。
レイリが顕著で、ミリィに庇って貰った際にはヴァンプなんかに助けられたと話し
納得できていなかったのが、若葉の件を通して理解する流れが素敵でした。
シルヴィアについても同様です。
ミリィの平和を望む根源、ソフィアが自身の感情に気づくシーンなど、
重要な場面では常にこの考え方が出てきたように思います。
紗衣奈に関しても同じなのでしょうが、
結果的には、雲の下記のセリフの通りでしたね
人の気持ちはわからない、だからこそ言葉にする
もしも言葉にしなくてもわかる人がいたらそっちの方が大変
秘密を抱えたままの方が壊れる
エピソードごとの情報量についてもよかったです。
レイリルートのみ、ソフィアルートのみで明かされる情報があり、
最後のミリィルートまで楽しみながら読むことができました。
ミリィ達なら自分たちが分かり合えたように、もっと多くの人を巻き込み
平和を実現できるんじゃないか、そんな希望を持った終わり方も綺麗で好きです。
テーマやまとめ方はとても好きな作品でした。
また、先が読みやすいといった点についても当然全てがわかったわけではないですし
読み進める面白さは確かなものだったと思います。
楽曲も最強クラスといえるくらい強く、キャラクターも可愛いです。
ミリィのように強い意志で理想を目指すキャラクターは総じて好みです。後顔もいいしおっぱいも大きい。
個人的に楽しんだレベルは上位の作品でした。
他にも書きたいことや気になった点は多いのですがきりがないのでこの辺で。
※ミリィルートでナダルが助けに来た理由ってソフィアがカイがDNA上子供であることを
伝えたからって認識でいいんだよね?とか
最後に私が一番好きになった曲、スノウトロップの歌詞に触れて終わりたいと思います。
薄氷に浮かべた願いはいつか根を張り芽吹くはずね 背伸びした夢から見えるのは満開のhappyend そうでしょ?
紙一重のバランスで成り立っている世界、
平和はまだまだ遠いけど、ミリィ達の手で最初の種は蒔かれた
いつの世代になるかはわからないけど、世界の行く末はhappy end
ミリィルートに照らし合わせるとこんな感じでしょうか。
FDが出るのであれば、ミリィ達が礎となった世界の姿を見てみたいですね。