★グレード高い。
幾星霜を経て紡ぎ出された感情の奔流に圧倒されます。
様々な登場人物の、様々な生き様、想い、感情、色んなモノが複雑に絡み合って物語が構成されている。
短いながらも厚みのあるシナリオで面白かった。
【感想】
全体的に細部の作りは甘いものの、シナリオ等の根幹部分がしっかりと固まってるのでブレが無い。
勢いがある。センスも良い。私の抱いた印象としては、本作品のほうが「ヴィザルの日記」(以下:ヴィザル)
より人間ドラマとして深みがあり楽しめた。スケールの大きさも、ヴィザルと本作品では段違い。
ただ一方でBGMや歌、戦闘シーンの演出等についてはヴィザルのほうが優っていたように思う。
●(絵・背景・キャラクターデザイン)
キャラデザインの質はあまり良くない。とはいえ、その他のCGは勢いがある。
人間よりも魔獣のキャラデザインのほうが面白かった。終盤に、まさかあんな大事が始まるとは
思ってなかったので、テンション上がりました。ここまでやるかと感心しました。
演出効果は、実のところ絶賛する程の高品質ではないものの、それでも同人にしては十分凄い。
気になった点としては、黒曜鏡・・・少女ってレベルじゃねーくらいの爆乳で少し引いた・・・。
あと、ダイヤモンド・グレイスの素顔・・・・見たかった。熟女スキーとしては残念。ヴィザルでも
出演してるキャラで、ババア声が気に入っていただけに、どんな顔してるのか見たかった。
●(シナリオ・テキスト)
・~テキストについて~・
これは本当に素晴らしい。細やかな情景描写だけでも質が違う。
そこら辺の萌えゲー担当ライターと同列にしていいレベルではない。
相変わらず安易なメタ発言で笑いを取ろうとする癖があるのだけど、ヴィザルほど露骨ではなかったし、
ネタを上手く使っていた事もあって面白く感じた。また、メタ発言を使ったギャグの他にも、
オチのある笑いも見受けられて面白かった。ヴィザルと差がついたのは、登場人物の数の違いもあるかもしれない。
本作品は、とにかく大勢の魅力的なキャラクターが登場する。それらの絡みだけでも相当なもので笑いの仕掛けも尽きない。
・~シナリオについて~・
正直、言い出せば、「最初からああしとけば、こうしときゃよかったんじゃない?」とか、
「あれ?矛盾してないか?」とか、「都合良過ぎだろw」とか、色々とツッコミ所は多々ある。
そういうのが気になって仕方ない人は評価を下げることになるだろう。私も何度か首を傾げた。
しかし、テキストに勢いがあるので、あれよあれよという間に押し切られる。これには参った。
カラスじゃないけど、面白さが先に来て、もう何か色々とツッコむのをプレイヤーである私は「あきらめた」。
特に中盤あたりの人間関係が絡み合う展開は非常に面白かった。黒曜鏡が召還されてからの怒涛の展開も良かった。
2キャラのヒロインがいるのだけど、どちらを選んでもエンディングにさほど影響はありませんでした。というか、
後半のバトル展開も全く同じなので齟齬が生じてしまっている。選択肢でHシーン(感情移入の度合い)を分けたのはよくなかったと思う。
リィ・ルゥを選ぶと、アーベルの激変ぶりが浮くし、アーベルを選ぶと、今度はリィ・ルゥのエルに対する気持ちがプレイヤーに伝わらない。
あと欲を言えば、EDも分けてほしかった。
アーベルのほうは、戦いが終わって直ぐにエルが迎えに行くのもアリだと思う。都合良すぎるけど、綺麗な終わり方で好感が持てた。
ただ、2ヒロインのどちらもそれじゃあ納得できない。
せめてリィ・ルゥのほうは、エルの命が形が分からないほどに崩れているという先の展開を活かしてほしかった。
エルの魂がボロボロという話は何だったんだ、都合よすぎだろと言われても仕方ない。
黒曜鏡をちゃんと召還したのは良かった。「黒曜鏡の魔獣」という大スケールで描かれた物語は非常に見応えがありました。
エルの隠し持つ必殺技については、地味に凄いんだけど・・・凄いのは分かるけど、もうちょっと演出に派手さが欲しかった。
ここで流れるBGMはカッコイイ。冷静に戦闘を進めるエルの戦いぶりと非常によくマッチしてた。
できればもう少し、エルの魂の素性とか、ヒロイン達や魔獣のエピソードを・・・。展開早いなぁ。もっと日常を見たかった。
この同人サークルは、切り口を変えてサイドストーリーとして小分けして独立した作品に仕上げつつ、
色んなキャラクターの魅力を掘り下げていくので、どうしても単品だけでキャラの魅力の全てを伝えることができない。
というか、そういう仕様なので言っても仕方ないんだけど、できれば、もう少しエピソードが
欲しかったところです。魔獣たちの魅力は、次回作「名無しの召喚師」を待つしかないのか。
●(声優・BGM・歌)
やはり効果音が単調でうるさい。チープな音で聞いてて少し不快になる。ここはもうちょっと力をいれてほしい。
ヴィザルをプレイして、その尋常ではないBGMの質の良さ、種類の豊富さに舌を巻いてた私としては、本作品は少し物足りなかった。
というか、ヴィザルが凄すぎた。とはいえ、心の琴線にふれるBGMは本作品にもあるので、そこは期待していいと思う。ボイス無し。
ED歌も挿入歌も無し。効果音の単調さは、やはり気になる。
コルクの駆動音って、ディアブロの首捻る音の流用だよね・・ショック。
●(ゲーム性・やり込み度)
任意の箇所にセーブポイントを置けない仕様なのは駄目だと思う。2度3度、読み返したくなります。
内容が頭に入るにつけ、語られていない他のエピソードがもっと読みたいという欲求にかられる。
勢いがあり、惹き込む力がある。ただ、やはりツッコミ所がいくつかあるので、「Fate/stay night」で冷める人は本作品でも辛いかも。
私は概ね違和感なく楽しめました。
ただ、・・・ヴィザルの後に本作品をプレイしてるので、あの名高い最古のダークエルフ「ロード」とアーベルが殴り合うシーンは
ちょっと引きました。。。ダークエルフ皇子の場合は、もうほとんど無敵のスーパーマリオ状態だったし、それを見知っているだけに、
いくら十騎士の一人と戦った事があると言ったって、どんだけ凄いんだアーベル、ダメージ半減させても死ぬだろ普通。
というか、ロード弱すぎ?素手で原子分解するんじゃなかったっけ?とか思ったり。
ダークエルフという亜人の中でもさらに特殊な存在と、ただの人間とを「感情」で結びつけて同列に語ってほしくなかった。
感情が高まれば人間でもダークエルフに対してあそこまで戦える?。それは流石に看過できない。
私の大嫌いな中二設定で、ここはガッカリ。ヴィザルのコルクとリアンの戦いは、ちゃんとしてただけに残念でした。
後半のバトルシーンで、リィ・ルゥが召還した冗談みたいな武装の数々・・・これはこれで面白かったし、可愛かった。
リィ・ルゥは本当に素晴らしいヒロインでした。
こんなにウザいのに(笑)、可愛くて、優しくて、真面目で、面倒見がよくて・・・もう終わってみれば全てが愛おしくなる。
アーベル、カラス、十騎士、クリス、ディール、魔獣たち・・どのキャラも魅力的で、製作者の創った世界の中で活き活きしてる。
だからこそ、他の作品にも触れてみたいと思わせてくれるんでしょうね。惹き込まれます。
●(H・エロシーンの魅力)
ヴィザルのHシーンは、ヒロインに感情移入するのが難しい作りだったけれど、本作品は良かった。
特に、アーベルの可愛さが光っていた。
ただ、純愛なんだけど・・・やってる事はハードなんだよなぁ・・・。
人によっては受けつけないだろうとは思う。萌えゲーマーとか引くだろ多分。
また陵辱シーンも悪趣味で(笑)、手が込んでおり面白かった。
オールクリア後に出現する追加Hシーンもあるし、頑張ってるなと感心する。
最後に。
アーベルは何で本物の教皇を殺したのだろうか。影武者を捨て駒にした復讐?。