神の顕現。唯一無二の100点
シナリオは加奈~いもうと~、C†C等の製作を手がけた田中ロミオ(山田一)。随所に専門用語が散りばめられ、時間軸が交差し、氏独特のテイストが効いたシナリオは難解の一言に尽きる。大多数のプレイヤーが、
「今、何が起きているか、このシーンは一体何なのか分からない」
という一種の荒唐無稽さを感じることだろう。状況が理解出来ず、何が面白いのかもわからなく、ただ、眠気が脳内を支配するだろう。
だが、最後まで、エピローグまで読み終えた瞬間。そこで初めて、最果てのイマという作品に触れることが出来るはずだ。
あまりに浮き世から離れたその作風は、大多数のユーザーには受け入れられないだろう。ただ受動的に読むのではなく、能動的に読む姿勢が求められるからだ。
もし貴方が、大手のメジャータイトルに辟易しているならば、あからさまにウケを狙った描写にうんざりするならば、ユーザーに媚びること無く真に面白いものを望むのならば――
視えるものがある。
手にする価値がある。
意識し、没入し、咀嚼し、紐解き、考察し、視認せよ。
神性をも彷彿とさせる繊細さを以て構築された圧倒的な世界の姿を。
真の天才が圧倒的な筆力をもって描く「自己」と「他者」との関係性。
破綻無くまとめられた精緻なる設計図に加え、哲学的命題をも孕んだ世界。その突出したシナリオにピアノを基調とした音楽と本作独特のブログシステムが追随する形となり、それらを明確な意図のもと設計された各種システムデザインが鮮やかに彩る。
これこそが究極。
田中ロミオという稀代の才覚が解放された作品。
エンターテイメントという枠から大きく逸脱した作品。
商業でありながら、採算を度外視したとしか思えない構成。
そんな作品が、今ここに在るという奇跡。
ただ、そのことに感謝の念を覚えた。
千々に撒かれたパズルのピース どうか優しく配列されますように―――
【タグ】
R-18 田中ロミオ S級USER専用 たくまる 哲学 SF