これの為にPS3買うか悩む程プレイしたかったけど、結局他にやりたいタイトルが無いから断念していた。まず始めに、ありがとう。
無印発売からおおよそ14年越しのリメイク。(PS3版が2010年に出てますので実質12年)
雫、痕、ToHeartと順調に階段を昇っていって安心と信頼のLeafになるはずだったというのに、THで作り上げた王道をいきなり崩そうとした意欲作であり問題作であり怪作であるWhiteAlbum。
上述した通り私はToHeartがエロゲー=学園モノの公式を作ったと思っており、いやまさかここまで脇に逸れるとは思っていませんでした。
多くの人がそうだった事でしょう。
それほどまでにビジュアルノベル三部作、特に最終作ToHeartは強烈なイメージを残しました。
本作は簡単にまとめてしまうと、グズグズで他人任せの主人公が彼女と別れ、別の女性と付き合うまでの物語です。
浮気ゲーであり主人公寝取られゲーでもある。こう書くと不思議なゲームですね。
抜きゲーですか?と思わず聞いてしまいたくなりますが、残念、全年齢対象ゲーです!
原作でも1ヒロインに対し1~2回しかHシーンが無かったと記憶しています。
まあ浮気してどっちつかずになってグズグズするゲームは「君が望む永遠」「Shooldays」等の有名作が後発してるのである種の流れを作った事になるのかもしれませんが、本作は元祖なだけあって色々と改良の余地が残った作品になっています。
私が一番そう思う箇所は、主人公です。
君望やスクイズを思い返すと、どちらの主人公も強烈な個性を持ってるんですよ。
まあそれ故に鳴海考之は猛烈に嫌悪され、誠は誠氏ねって言われるわけですが、物語を展開させる為に主人公の優柔不断さや個性が鍵になっていた事は確かだと思います。
対して本作の主人公は、最後までプレイしてもイマイチ人物像がハッキリしせず、どういう人間でどういう考えを持っているのか掴みきれないのです。
壁にぶつかり、悩み、意思や欲望を持って行動するのは全部ヒロイン。
だからこそ、プレイヤーは主人公よりもヒロインに感情移入してしまい、基本なんでもOKでどういう選択でも受け止める主人公の人物像が余計に見えなくなってしまうのです。
主人公がいるからこそヒロインが浮気や寝取りの罪悪感に苛まれるわけですが、主人公の空気具合が一転して、この物語主人公必要ないんじゃね? と思い始めてしまう怪作っぷり。
まさかこのどこを狙ってるか分からない作品が王道を作ったToHeartの次に出てくるとは思わないでしょう。
当時の乱数システム(リメイク版では改良されてる)も含め、多くの人の期待を裏切りました。私自身原作には70点という低得点をつけています。
しかし難点ばかり上げて置いてこう言うのも何ですが、私はWhiteAlbumが好きです。
主人公が受動的過ぎるからこそ感じる事が出来る美咲さんの苦悩や、由綺と理奈のビンタの応酬や、マナの切なすぎる決意や、はるかの「由綺が泣いちゃうなら…私のこと、忘れちゃっていいよ」って台詞が、大好きです。
全部が動かざる事山の如しの主人公だからこそ産まれた名シーン名台詞です。
恋って熱病みたいなもので、一度惚れてしまったら手にいれるまで中々ブレーキが効きません。
自分のモノにするのに苦労すればするほど熱が上がり、そして相手がダメな奴だと解っても諦められない恋は、相手がダメだったらダメな程加熱されてしまう。
その先に破滅が見え隠れしていてもどうしようも無いんです。彼女たちはそういう不確かなモノに恋をしてしまっているのだから。
無個性故に自分の理想像を投影しやすい主人公に惚れたが最後、彼女持ちだからこそ「なんで好きになったんだろう?」と振り返る余裕も無く限界まで走り続けます。
そういう儚さというか、恋の滑稽さというか……そういうものが、上手に描かれていたと思います。
さて、このリメイク版。
前の絵がすごく好きだったので最初に絵を見た時はひとさじ分の改悪感があったりしましたが、最後までやってみたら改良と断言出来るようになりました。
絵がかなり動く。理奈なんか柔らかい声も相成って、ん~んって顔を振る姿がなんか天使になっちゃってました。
マナの文句言いたげな顔も美咲さんのちょっと暗めな表情も素晴らしい出来だと思います。
また、キャスティングが豪華なだけあって声が素晴らしい。
アニメ版でもそう思いましたが、リメイク版をクリアしてより声がキャラに合ってると思うようになりました。
特に朴路美さんが演じる弥生さんの威厳があって可愛げが無くて酷く事務的な声は、私が想像していた以上に弥生さんでした。
追加ヒロイン如月小夜子については、他ヒロインとの対比が面白かったです。
WhiteAlbumはもう14年前のゲームですので、ヒロインの魅せ方がやはり古いんですよ。
古いって言い方がちょっと悪いですね……私は好きなのですが、良くも悪くもアッサリしていると言うか……。
ヒロインの気持ちをしっかり理解出来ないから想像し、自分がこうあって欲しいって気持ちを交ぜながら共感するってのが主流だったように感じます。
だからこそこのキャラが好き!って強く思ったら他に「一番」を何人も作らなったのでしょう。
他人の心の中は見えないってのは当たり前の事ですので、プレイヤーとヒロインを一体化しないというのはある種の美学を感じます。
ただ、ヒロイン本位のWhiteAlbumの場合、ヒロインの気持ちが十全に理解出来なければすべて急展開に感じてしまうんですよね。
で、追加ヒロインの如月小夜子。
今流行りの「ちょっと残念な女の子」です。
あけすけで自分本位でプライドが高くて失敗して泣きじゃくる、いい感じに保護欲を燻られるダメキャラです。良くも悪くも理解出来過ぎる。
一体化するほど掘り下げられているので憧れや理想が混じらないからこそ、可愛いし好きになりやすいけど一番にはならない。だけど、ヒロインの気持ちを十全に理解出来るからこそゆっくりと歩むように物語が進んでいく。
WhiteAlbumを現代風に作り直したらこういうキャラ達になるんだろうなぁと感じました。
WA2は2ヒロイン贔屓の構成で主人公にもしっかりと個性があったので、プレイ中あまりWhiteAlbumを想起しなかったんですよ。なので如月小夜子こそ現代版WhiteAlbumのキャラなのでしょう。
アニメもやり、リメイク版をPS3で発売し、PCに再移植もしましたので、WHITEALBUMはここで一つの終わりを迎えました。
14年越しの、終わり。
アニメが決定した時は何故WhiteAlbumなのか正気を疑いました。私は嬉しかったのですが、どう考えても人気出ないだろと思ったのです。
視聴したら主人公が変な個性を持っていて驚きました。なんか女神探してましたよ。
リメイク版が出た時は、PS3を買うか買わまいか悩みに悩みました。
環境的にコンシューマーゲームはやれる時間も少なく他に欲しいタイトルが無かったので断念しましたが、それでもゲーム屋で新品が半額くらいに値引きされてる様を見ると、何処か切なくなるのと同時に、PS3持ってないけど買っちまうかァッという衝動に駆られた事は一度や二度じゃないありません。
その癖ダウンロード版が出てる事に気づいたのは発売後で、即時に購入しました。
それも、終わり。
三角関係で切ない冬の物語ってコンセプト自体すごく好みですので、WhiteAlbum2って人気作が出たように、3~4とシリーズ化して続いていってくれると大変嬉しく思います。
最後に(も)……ありがとうございました!