発売前、OHPで公開された情報……陳腐なタイトル。多すぎる登場人物(女性)。ぶっ飛んだデモムービー。これを見て「一体、どんなゲームなんだ?」と、恐れ「覚悟」していた人は「案の定」と賞賛し、他方、SNOW続編としての期待を捨て切れなかった人は大激怒。そんなゲームです。私はある意味、怖いもの見たさで購入しましたが、メーカーとユーザーの「幸せな共同幻想」を、自らぶち壊した2004年一の快(怪)作と言えるでしょう。ただし、SNOWをプレイして間が無い方、桜花ファンの方は回避を推奨します。
このゲームの評価の決め手は、結局のところ、舞台が前作と同じ龍神村で、人外の存在…竜神や恋の妖精「くくり」が登場しても、あの輪廻から開放された後の、あくまで人の欲が主役の「人間界」の物語と言う前提に、プレイヤーが果たして納得できるか?及び、それでも、たった一人「異界」に留まり続けたヒロイン芽依子の、数百年間押さえ込んできた願い……一度でいいから誰かに愛されたい……を、「くくり」が一気に開放した結果、引き起こされる性欲の大暴走と、それに乗じた「制作スタッフの煩悩大爆発」に対し、頭に来ずに笑い飛ばせるか否かにかかっていると言えます。
何でこれが笑ってしまえるのか、不思議に思う方もいるかも知れません。が、理由は唯一つ「芽依子様○百歳」。これに尽きます。
それさえ割り切ってしまえれば、中盤以降のシナリオ、主人公によって芽依子の心の闇が解かれていく過程や、セリフの組み立ては緻密で、彼女が最終的に「人」に戻る=素直に自分の欲しいものが、欲しいと言えるようになる(一方のルートでは言葉ではなく、手を離さないと言う行動でですが)場面は美しく、高く評価できると思います。
客観的な評価は、85点くらいだと思いますが、個人的には、純愛物としての最低線はギリギリ守っていること(回避可能なキャラに手を出すと自業自得なエンド)、コンシューマー移植を考慮せず、ファンが半減しかねないシーンを入れてまで、自分たちの作りたいゲームを作ってしまったスタジオメビウスの度胸に100点です。
結局のところ本作は、芽依子という稀有なキャラを得て、作り得た彼ら理想のゲームなのでしょう。しかし、長かった物語ももうおしまいです。次回作で彼らの真価が問われることになります。それこそが、本当の見物かもしれません。