初丸戸にして思い出補正を上回った傑作。長文は主にキャラについての感想。
かの名高いWA2を筆頭に数々の名作エロゲーを生み出した丸戸氏。
そんな中、自分にとって今作が初めての丸戸作品だったのですが、
プレイ前第一印象としては「まあ有名なライターだし、それなりに面白いんだろう」くらいしか思っていませんでいた。
で、ひととおりプレイしてみて感想は…
「素晴らしい」それに尽きます。
一番良かったのが、主人公こと理。
三十路間近の社会人であり、さらに、リストラ、偏食、バツイチと面白いオプション盛りだくさん。
学園もので、なおかつ童貞の青臭い主人公に飽きが来始めていた自分にとって驚き、そして嬉しいキャラ設定でした。
他にも良かった点を挙げればキリがありません。
が、褒めてばかりだと、それはそれで個人的に面白くない。
書きたい絶賛レビューは100~90点付けてる先輩方が一通り言って下さいましたからね。
ここは満点をつけた責任として、この作品のマイナス面について踏み込んでみたいと思います。
それは、「不快キャラ」について…
ヒロイン。脇役。皆素晴らしいキャラ達です。
しかし、全員が「完璧」ではない。これはプレイ済の方なら分かると思います。
今回挙げるのは三人のキャラについて。
一人目。トコの友人、倫子。
トコのNGな恋に対して、反対し続けるキャラ。
友人としてトコの恋路をなんとか阻止しようとする姿勢は見ててほほえましい。
が、その言動は、やや自分勝手であり、
最終的には成功しようがしまいが、倫子自身はトコに片思いしていた尾関とくっつくという、ちょっとそれは…みたいな結末になります。
尾関に片思いしていた真鶴は「進学先で、もう他に男できたから」となり、あっさりフェードアウト。
これは人によってはかなりモヤモヤするでしょう。
極め付きにトコと絶交宣言しちゃうシーンなんかは、あらら…と思う他ありませんでした。
しかし、トコの幸せを完全否定しているわけではなく、むしろ最後の最後には祝福してくれます。
いいじゃないか。こういうキャラがいても。
ゆえに減点対象にはならず。
二人目。麻美と同じ教師で若手体育系の、松本先生。
麻美がバツイチ年上といえども、果敢にアタックする熱血っぷりは見てて面白い。
が、麻美が不妊症と知ってから態度は一変。
子供が出来ないなんて女としてどうでしょうかね。という発言を前旦那たる理にしちゃう空気読めない男に成り下がります。
これは理解キャラが多い今作内ではかなり不評を買ったでしょう。
しかし、子供が欲しいというのは主に親の期待を気にしての発言であり、決して一方的にバッシングされるべき事ではありません。
その気持ちは分かる。
というか、彼の存在があるからこそ、麻美√での理の言動に拍手を送らざるを得ないわけです。
いいじゃないか。こういうキャラがいても。
ゆえに減点対象にはならず。
三人目。トコの母親、穂香。
理がトコと出会うキッカケになった重要キャラのはずなんですが…
この方は、ほんと「不幸」です。色んな意味で。
一年間娘をほったらかしにした挙句、さまざまな男ととっかえひっかえ付き合い、
最終的に連れてきた自称運命の人は結婚詐欺師だったというトドメっぷり。
さらに第三者の介入があったとはいえ、トコの恋を中々容認せず、理を残し、引越しして一緒に暮らす事を強要してきます。
理との出会いも完全記憶喪失しており、もはや救いようがないダメダメキャラになってしまい、多くのユーザーの怒りを買いました。
ですが、娘を想う気持ちはまぎれもなく本物であり、たとえそれがエゴだろうと愛情は決して嘘じゃない。
さらに自身の駄目っぷりを、切れモード麻美に説教喰らうシーンは見てて爽快でしたし、そこで「ああ、この人の罪は償われた」と思いましたね。
さらにさらに、ご隠居、熊、八の「大家さんが惚れた男にマトモな奴はいない」で爆笑しました。このシーン好きです。
理解不能意味不明救済不可キャラっていうワケでもありませんしね。ある意味、一番リアルな人だと思います。
いいじゃないか。こういうキャラがいても。
ゆえに減点対象にはならず。
何を言いたいかというと、多少不快でも無駄なキャラなんていない。と言いたかっただけです。はい。
この作品はただひたすらに温かい。
優しさに包まれた内容で終始、楽しむ事ができ、そして心が癒されました。
理とトコのバースデーセックス前に「お誕生日おめでとう」と言うトコの健気な姿に涙腺崩壊。なんちゅー所で泣くんだ。いいトシした俺。
感動しました。
ありがとう。HERMIT。
ありがとう。丸戸さん。