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kazu28シュトラッセさんのななついろ★ドロップスの長文感想

ユーザー
kazu28シュトラッセ
ゲーム
ななついろ★ドロップス
ブランド
UNiSONSHIFT:Blossom
得点
100
参照数
572

一言コメント

忘れていたもの。長文は、ノナ→撫子→すもも、と読み進めた感想。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


少女漫画チックな魔法少女エロゲという触れ込み。
とにかく雰囲気が良いという前評判でしたので、
後は登場キャラとシステム云々の細かい点だけが気になる位でしたプレイ前の印象としては。
しかしこれがふたを開けてみれば中々どうして…
前置きとして、システムに関しては特に指摘するほどの事は無いと思いました。あくまで個人的にですけど。

以下各√感想

・ノナ√
静かな口調だけど強気な眼鏡っ娘。
しかし、変身後は強い口調で強気な魔女っ娘アスパラさん(笑)に。
中の人の演じ分けが上手く出来ているかは、経験値不足の自分にとっては断固とした判断はしかねますが、まあ悪くは無いのではと。
擬似の恋に悩み、自分を上回る才能の存在に苦しみ、自身の正直な気持ちに戸惑う。
そんな彼女が「こんな恋なんていらない!」って涙目で叫ぶシーンはグッと来ますね。
で、ノナというキャラを語る上で外せないのが、お付き人松田さんでしょう。
お嬢様お嬢様と慌てふためくキャラなのに、見てて不思議とウザったく感じませんでしたし、
ヒロインのノナ以上に顔面がコロコロ変わって、コメディ色が濃い、良いサブ男キャラだと思いましたね。
松田さんは主人公がイザコザに巻き込まれる、悪く言えば元凶というか、発端の人なんですが、悪い印象はこれっぽちもありませんでした。

・撫子√
すももの幼馴染ヒロイン。和風。
すももという大正義が居るのでちょっと見劣りはしますが、撫子も充分魅力的なキャラでした。
「なぜ、私を好きになったの」とか「恋がこんなに苦しいものだったなんて」など、
すももを推していた姿勢から一転、主人公からの恋愛アピールに辟易する様は見てて楽しいような悲しいような、ちょっとフクザツな気分になり、
で、この√進行中は、とにかく心のなかで「すもも、すまん」と謝りたいくらい切ないシーンが随所あり、別の意味で大変でした。
しかし良かった点も多くありました。
この√は、すもも√ですらなかった撫子の唯一の可憐な涙姿が見れる√でもあり、これだけでもおなかいっぱいになります。
で、シナリオ終盤デートでは、おめかし姿でバーンと登場。これもこの√限定の格好であり、嬉しかったですね。
薙刀を嗜んでいるという設定もそれなりに生かされてて良かったです。


・すもも√
これが今作のメインですね。
シナリオの気合の入りようもこの√だけ別次元でしたし、
他√が霞んで見えるとか、手抜きではないのかとレビューされる先輩方の意見も尤もだと思いました。
まあそれは置いておくとして、
共通から思っていたことですが、変身マスコット主人公こと「ユキちゃん」といい、すももの魔女っ娘としての立ち振る舞いといい、
往年の名アニメ、カードキャプターなんとかを少なくとも意識してますよね。これ。
まあそれも置いておくとして、

まず第一に賞賛したいのは「ユキちゃん」を演じた、アグミオンさんの熱演でしょう。
人間としてすももと接する時はやりきれない感情を持て余し、ユキちゃんとしてすももと接する時の彼女のギャップに悩む主人公。
そんな二律背反的言動をアグミオンは非常に巧く演技していましたね。
ユキちゃん関連のSD絵も可愛いし。

第二に褒めたいのは、すももと主人公の不器用で初々しい恋愛模様ですね。
主人公は、エロゲでよく見られる鈍感ヘタレ…とまで言う程でもありませんが、
好きな相手に率直な発言が出来ないもどかしさは、まさに青春を生きる男子そのものに見えました。
で、それはすももも同じく、主人公が好きなのに、断られたらどうしようという、その一点のみに恐怖し、
あいまいな言動をしまくる姿は、けなげでいじらしい。
そして初恋を大事にする純粋な乙女でもあり、
それを親友や、ユキちゃんまでもが自分に嘘をついてでも「がんばれすもも」と応援したくなっちゃうのは道理といえるでしょう。
で、これは自論展開なんですが、すもも担当がふーりんさんだからこそ逆ヘタレ行動が許されるのであって、
他声優がすももというキャラを演じようものなら、イライラしたかもしれません。
そういう意味で、嗚呼やっぱり自分はふーりんファンなんだな~…と改めて認識した次第であります。

第三に褒めたいのは、魔女関係ですね。
今更言いますと、自分、魔女ものに弱いです。好きなんで。
アスパラさんも悪くはないのですが、やはり魔女コスプレすももは可愛い。
そして魔女としての成長をきちんと描かれているのも良かった。
普段弱気な自分を変えようという明確な意思をもって行動する彼女は、
ユキちゃんのサポートを伴って、星のしずく集めの日々の中、たくましくなっていきます。
魔法の種類は某アニメほど多くはありませんが、それぞれ面白い個性があり、見てて飽きませんでした。
ノナ√では謎だったすももの魔法に対する天才的才能の理由もこの√でハッキリします。
まあ、出来ればノナとカリンの相対するシーンが見たかったですけど。

第四は、記憶喪失の件に関して。
このシーンを見た時、「ああ、懐かしいな」と思いました。
自分が初めて満点を付けた「さくらシュトラッセ」という作品にもあったネタだったので、感慨深かったです。
で、主人公がすももと知り合ってから付き合うまでの期間全てといえる、
半年分の記憶が無くなると分かってからの、二人の行動は、もう涙なくして語れません。
主人公は言う。「すももはどうしたい?好きなことを言いなよ」と。
すももは言う。「そばにいてほしい。ずっとふれていてほしい」と。
激しい愛や、肉欲によって刻まれる記憶なんていらない。
ただ一緒にいるだけ。
静かに手を握り、優しく抱きしめ合っていれば、他になにもいらない。
そして約束を。
「もう一度、好きになってみせる」
…自前の文にするとありがちで淡白な内容に見えるのは申し訳ないのですが、とにかくこのくだりは泣きながら読んでました。
二人で最後のしずくを取りに行くシーンなんて、もうやばいです。思い出すだけで涙腺が緩む。
そして記憶を失ってからの主人公とすもものやりとりは、ただただ素晴らしいものでした。
ご都合主義とでも書けば楽なんでしょうが、私はここのシーンを文で表現できない。
無念。

第五に褒めたいのは、全キャラ良い人。であることです。
非攻略サブ女性キャラがやけに多いのは、ブランドの過去作からの出演も兼ねているという事だからだそうで。
そして、皆いい人。
全体的に察し感が高く、主人公やすももが落ち込んでいるときは皆で励ましてくれたり、嬉しいことがあれば皆で喜んでくれる。
単純じゃない、けどこんな当たり前のような事が、エロゲ界では非常に貴重なことなんです。
主人公やすももの悩み多き恋愛や人形化騒動、記憶喪失に関しても、如月先生を始めとする全キャラの心温まる優しさがありがたく、
薄汚れた私の心を浄化し、自然と涙を溢れさせていました。
ああ、忘れかけていた。この優しい気持ち。
思い出せて良かった。気持ちのいい心のありか。

最後に賞賛したいのは、EDシーンです。
改めて「好き」という気持ちを伝え合った主人公とすももは、
満天の星空の下、二人静かに歩いて、想いを語り合いながら家路へと帰ります。
この時の背景と二人の歩き絵とバックで流れるEDソング「虹色のルシア」は、
全てがパーフェクトにマッチした、素晴らしい感動癒しシーンでした。
「おつかれさま」。
そんな言葉が今作製作スタッフから贈られたような、そんな気がしました。
ありがとう。UNiSONSHIFT:Blossom。
ありがとう。ななついろドロップス。