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kazagurumanoyasitiさんのハナヒメ*アブソリュート!の長文感想

ユーザー
kazagurumanoyasiti
ゲーム
ハナヒメ*アブソリュート!
ブランド
mirai
得点
65
参照数
1418

一言コメント

決して不満点だらけだったわけじゃないのに、なぜだか良い点が見つからない、そんな作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ハナヒメアブソリュート(以下ハナアブ)があまりにも酷評されているので、個人的に気になったポイントを書いてみた。

やけにクルくると比較する部分が多いですが、このゲーム自体クルくるの要素を多分に受け継いでいるので、ご了承ください。

☆シナリオ面
要約すると、プロゲーマーが一つの職業として広く認知された世界で、ゲーマーやアイドルや一般生徒を見境なく育成している学園を舞台にした、VRゲーム大会のおはなし。

ゲーム関連のことを抜きにすれば、シナリオ自体は普通の萌えゲー程度といったところ。1つ1つの話がやけに短かったり、主人公が空気だったり、どう考えてもそれで解決するはずのない王子側の素性やゲーム内の不具合の詳細調査に尺を割きすぎている以外は、いたって普通。

そんで問題点があるのが、ゲーム内ゲーム「クラウンハーツ」に関わる部分。まずは誰もが触れる、花姫側と王子側の実力差。実際、体験版で「星王子の1人は花姫3人分だから~」とあーりんが言ってたときは、またまた御冗談を、と思ってたんだ……。

それがゲーム内でPvP(プレイヤー間バトル)が始まってみたら、星王子1人に苦戦するわ、3人を1人で襲われて負けるとか、こいつら同じ土俵で戦ってるのか、と思うほどの実力差。

これは花姫が超えるべき壁として星王子を設定してしまったのが悪いと思う。ぶっちゃけクルくるの生徒会vs七大魔将と同じ構造になってしまったのだ。

クルくるの場合、生徒会メンバーのほとんどは変身覚えたてであり、相手も好き勝手ばかりの人外の魔物ばかりで、しかもその背後にはリ・クリエとかいう正体不明のエネルギー体があるものだから、最初から戦力はイーブンじゃないし、最後までイーブンとは言い切れなかった。

一方、ハナアブでのクラハとは、姫・王子のトップ各7人が選ばれたVRゲームなのだから(都合により王子側4人だけど)立ちはだかる壁ではなく、同じ目標に向けて切磋琢磨するライバルポジションに最初からしてほしかった。もしくは超えるべき壁に設定するのなら、なんらかの要因やチートコードで最初から超強化されていたといった方が自然だと思う。王子側には開発者や運営AIがついてるんだし。

次に、前半部のトレモン狩りの下りが非常にだるい。このトレモン、タイプの違いを除けばわずか5パターンしかおらず、しかも序中盤で出てくるのはそのうち4パターン。いくらなんでも手抜きしすぎだろう、Norn……。さすがにトレモンバトルは中盤あたりから大幅省略されるのだが、それはそれでこんなゲームをしていてキャラクター達は面白いのか?という疑問が残る。

☆バトル面
まあ、ぶっちゃけ不満面はここに集約されます。

まず、3Dにする必要はあったのか。要求スペックを上げているとかエラー落ちがあるといった面もあるけど、それ以上に「3Dにするほどの演出がない」事が問題。3D使うエロゲの多くはここのところを気にせずに時代の流れだと思ってやってみる傾向があると思います。背景の☆がくるくる回って目を痛くしたり、むやみに画面を光らせたり、ミニキャラが高速で駆け抜ける演出は3D必要じゃないですよ。

次に、アタッカーが最大4人なのにEXゲージの最大が300%、しかもコマンド先行入力なこと。これは結構大きいです。1人がEXゲージを使って消費するのは最低100%なので、4人ユニゾンをした場合、1人は通常攻撃確定になります。しかも中盤あたりから使えるようになるコスプレEXは200%消費なので、更にゲージ圧迫が激しくなります。一応、クライマックスモードという救済手段は設けられていますが、特定ステージ以外はHP減少が必要なので、あまり役立ちません。このあたりはクルくるのEXゲージ溜まり次第入力できたシステムの完全劣化です。

最後が、バトルが手ぬるいこと。今作は最初からHardでプレイしたのですが、序盤あたり以外はほとんど詰まらず、ラストの女王に至ってはエラー落ちが最大の強敵という有様でした。God評価もぼろぼろ取れます。前作クルくるが難ステージばかりだったことで批判があったのかもしれませんが、星王子たちが強敵と描くのであればバトル上でもそのようにして、ラストバトルももっと難しくてもいいはずです。

このラストバトルが異様に簡単な原因が、王である虎春がプレイヤーとして参加できないことにあるのではないでしょうか。神姫であるシキがあの性能であれば、神王子である虎春もかなりの強キャラになったでしょうし、そうなればクルくるラストバトルのシン君のように場外から来るまで耐えるという、難関設定になったはずです。ハナアブでは『花姫たちだけで勝たなければいけないため、女王側もそれに合わせるしかなかった』という皮肉な構造になった気がします(それにしても易しすぎると思いますが)

☆各キャラ考察
・メア
かわいい。
とくにルート入ってからのバトルで「正々堂々一騎打ち。がんばるぞ」のボイスはお気に入り。

キャラとしては、クルくるのナナカから蕎麦と流星っ子を抜いて、ゲームとわずかな猫分をぶちこんだ印象。みなさんおっしゃる通り、あんだけ好意見せててルート入って恋心自覚とかどうなの?って部分も気になったけど、個人的に気になったのはメアがすでに『プロゲーマー』だということ。プロってのは容易にアマに負けちゃいけないんですよ。それなのに虎春はおろか、星王子たち(全員芸能科)、杏子、復活後のシキにも負けている(虎春・シキはシナリオ上だけど)。Nornからもアイドルの方に比重が置かれているようで、これなら「それほど強くなかったアマチュアの女の子が、作品を通して強くなっていく」ポジションにした方がよかったのでは……?ゲーム内でのプロゲーマーの扱いも正直微妙だったし。

バトル性能としては攻撃・スタン効率・ノックバック・回復に優れた万能型。範囲ノックバックに優れるブロードエンドアクセルに目が行きがちだが、フロンティアクラッシュには「この攻撃で相手がスタンした場合、待機フレーム数増加」という効果が付くので差別化がなされている。フィールザラプチャーは悪くないのだが……ミニキャラのテンション上がってきたとばかりのカクカク具合がどうもいただけない。

・玲奈
絵はかわいい……んだけど、「デース・マース」の如何にも外国人デスヨワタシ的なキャラ付けは必要だったのだろうか。Hシーンまでこの調子だから、私だけかもしれないが魅力が削がれまくってる気がした。

バトル性能はHIT稼ぎ・スタン・単体ノックバック・範囲ノックバック・相手EX減少と隙がない。しかもリーダーはスピードタイプがスタートダッシュ有利なので、選べるのなら外せない最強キャラ。玲奈のルートでは、玲奈無しの負け確定イベントバトルがあるのだが、あそこで玲奈を選べるのなら延々と戦える気がする。

・ポリーナ
まだ攻略してないので、バトル性能だけ

EX1:スタン値・EX効率的にはいいものの、ノックバック性能はあまりよくない。攻撃対象位置に関わらず全員当たるのはいいんだけどね。ランブル調整程度。
EX2:スタン確定が取れる初見強技。ハナアブのバトル仕様的にスタン値全残りが多いから意外に使えるものの、他キャラのEXにゲージ回した方がいい展開が多い。
EX3:空気。というか直前までザコトレモン化しててもGoラインきたら治ってたりして、プレイヤーを油断させるEX。

・陽良子
まだ攻略してないので、バトル性能だけ
EX1:HP・スタン値・異常状態の回復。ただクルくるやった人は分かると思うけど、このシステムで回復にゲージ使う(もしくは使うはめになる)のは一番の悪手。ただ、HP受けても回復しておけばcool評価は貰えるので、倒す直前に使うのはアリかもしれない。
EX2:ある意味貴重なデバフ技。ただし、使ったことはない。
EX3:味方のゲージを生贄にして、相手のゲージを200減らす、正直イミフな技。性能とは関係ないが、このEX絵はかなり良い。てぃひっとか言いそう。

・イヴ
どうして虎春を好きになったのか、過程がまるで理解できなかった。でも恋ってそういうものかもね。というか作品内での関わりがイヴルート以外はほぼ女王になっちゃうから、キャラがよく見えない。

EX技は優秀なものが多いけど……イヴが参戦できる唯一のバトルでは、いなくても問題なく勝ててしまうのが最大の問題。バトルをイージーモードにする役割と割り切るしかないか。

・杏子
まだ攻略してないので(ry
EX1:HIT稼ぎつつEX微増できる優秀EX
EX2:範囲内にノクバまいてスタンも稼ぎつつ、消費EXも多少回収できる優秀EX
EX3:クルくるメリロットの例のアレ。鳳家直伝と言ってるけど、ニベの一族なのだろうか(そういえば髪色は似ている)
他3人が揃っている状況等だと、ちょっと効果が変わる。
EX4:アンアンのだし、多分強いんだと思う。↑3つで十分すぎて使ってないけど。

・あやね
まだ(ry
EX1:壁要員。シナリオ序盤や、中盤のスタートダッシュ直後だと重要性が高いが、各キャラEXが増える終盤だと空気になり気味。
EX2:味方の攻撃力を増やす技だけど、ユニゾン順にスピードが関係でもしているのか、あやねの攻撃順はラストになりやすいので、使うほどの効果が見込めるかは……。
EX3:結構使えるけど、消費ゲージが多いのが問題。

・女王
攻略できませんし、Hシーンもありません。当然おみ足で踏んでいただけることもないですし、逆に拘束して奴隷プレイみたいな胸熱展開もありません。

すべての行動がゲームとしての域を出られない、プレイヤー側がクリアできるラインで戦う、というのはからくりサーカスの自動人形の原理に似ているなぁ、となんとなく思いました。

以下男キャラ(星王子達ルートのバトルイッカイダケの感想)
・有希
四天王最弱の皮をかぶった四天王最強。EX1クラッシングビートの使い勝手はよくないが、EX2レボルトブースターの使い勝手は異常。とりあえずブースターして余裕があればバイスエアレイドばらまけば非常に楽になる。

男キャラの中で一番出番がありそうに見えて、理事長の方が出番多い気がする親友枠。コスでこはるくんとからませればよかったとおもうな(適当)

というか、王子たちのアイドル設定って必要だったのだろうか。全員ゲーマーでいいじゃん。

・善行
パラダイソフィアは普通に強い。
ジャッジメントディオス(笑)を使うと『味方の』HPが削られる謎仕様(Ver1.10時)。
ラディカルグレイブで自殺ダメージが加速する。

なんか会長が好き(というか畏敬?)なようだけど、そのあたりの経緯は全く触れられず。

・連十郎
防御貫通とか防御上昇とかのEXなんだけど、星王子ルートのバトルでは花姫たちのターンは1~2回程度だから、まったく使わない。

善行と絡みがありそうだがそんなことはまったくなかったシスコン(ただし、姉はゲーム内に出てこない)

・ナオ
味方のゲージをクライマックスモードにする卑劣な魔術師。しかも効果発動中にバトル敗北した後に同一編成でやり直しを選ぶとクライマックスモード続行。善行のジャッジメントディオスと組み合わせることで、任意のタイミングでつよくてニューゲームが楽しめる。開発者に敵はなかった。

なんか裏設定として魔女界と関わりがあるそうだけど、作品中ではほぼ語られていない(あるんだろうなーと思える程度)ので、自分の楽しみのためロキに好き勝手させていたら制御できなくなっちゃったというだけの人。正直、こういうポジションは悪役こそ輝くのだが……はなあぶはひしょいがいでわるいひとなんていないから、しかたないよね!

自分の作った存在とはいえ、ロキの暴走を見過ごして花姫側の危険をないがしろにしたり、星王子の異常を見て見ぬふりしたり、CEOという色々ひっかぶらないといけない立場でありながら問題終息後も飄々としていたりと、発売後人気投票してみたら驚きの最下位になりそうな……ってもとから圏外だったか。

とりあえず、教育機関の理事長をしていい人物ではない。