田舎という舞台を生かした登場人物の接点を緻密に繋げた群像劇。話が断片的に展開していくため理解しづらい。しっかりと情報を組み立て、理解できれば面白さがわかる作品。
始まりの1章
ありきたりな同じ人を好きになるという子供の恋愛模様を描いた過去編から現在へ
六年振りに伊月と再会するも、何か引っかかる境遇や噛み合わないばあちゃんのセリフ
死生観をテーマに持つ今作ですが、この章では伊月が性格や偶然も相まって「死んだ人間を生き返らせる」ことができると本気で信じ込んでいます
伊月は自分が死ぬことで、自分のせいで死んでしまった小夜を蘇らせようと考えたがすでに自分は死んでいて小夜は生きていたというのが結末
言ってしまえば簡単ですがこれに至るまでの過程がなかなかしっかりと描かれていたと思います
想像は付く範囲なので驚きはあまりありませんでしたが読了感は感じることができました
個人的に特に好みだった2章
プレイしていてefを思い出すような雰囲気が感じられたが2章のシナリオ担当が御影さんということで納得
白河さやかにはどこか雨宮優子を思い出す魅力がありました(作品がでた順番で言えばこちらが先ですが)
1章という短編の中にしっかりとストーリーを作り、情報を制限して話の核心へと繋げていく手法とその構成力、そしてそれを演出するセンスはお見事
待ち合わせに来ず行方不明になる蒼司、搜索にでるも因縁のある不良に遭遇し逃げるさやか
最後までハラハラする展開で楽しめました
そんなこの話は不器用で絵を書くことでしか愛情を表現できなかった父親とずっと誤解し続けてきた娘の物語
真実に気付いた時にはすでに時遅く父親は亡くなってしまいましたが、妙に後味のいい読み応えのあったENDでした
さやかが一番好感を持てたこともあって最初から最後まで入り込めました
もう一つの美絵ルートもしっかりと話が作りこまれていてかなり印象深いです
上代蒼司という人間性がよりわかるのはこちらですね
妹の上代萌もこちらでは立ち絵でよく出てくるようになり個人的にポイント高いです
話に深みがあった3章
良和が好きな透子と茜、そして透子と付き合いつつも妹である茜に恋愛感情を抱く良和の三角関係
病室の茜と日常の茜、2人の茜の描写がある
実は日常の茜は鏡太郎の暗示によってリボンをした時だけ茜に見えるという透子だったのですが、それを匂わせる伏線の数々がしっかりとさりげなく入っているのが素晴らしい
謎が解けるタイミングで本当の茜が戻ってきて、過去の再現からのリスタートという形で物語の結末へ持っていく構成も素晴らしかったです
しかし茜と鏡太郎の気持ちを把握して掌の上で弄ぶ透子さんまじやばい…愛が重い
シナリオは2章に並びますが2章の方が強いと感じたのは好みの差ですね
最終章 4章
考察は長くなるので割愛(他も大分はしょってますが)
ぶっちゃけ1プレイでは完全に理解できませんでしたw
他の方のレビューを読んで補完しましたがかなり内容を詰め込んでいて断片的な伏線回収がありまくりなので、周回プレイした方々のまとめを読んでからやり直すのが一番いいかと思います
大筋としてはかなり作り込まれていて飛躍する話のスケールについていければ作品のラストとしてふさわしい物語だったと思います
作品の空気感・背景やBGMは今の作品にはあまり見られない古き良さがあり、物語の難解さから大衆的な評価が一定で留まってしまうのがわかりつつも確かな評価を得ている作品として頷けるものだと感じました
追補の水夏0章、夏休みのクリスマスでさらに世界観が広がり、閉幕の後の本当に最後の「外伝・始まり」
基本的に水夏のストーリーはキーとなる情報を隠すことによって物語に幅を持たせ、読み手を引き込む作品でした
全体として見ても、全てを終えた後に物語の始まりとなる部分を持ってくるという構成は素晴らしかったです
章ごとに別々のキャラに焦点を当てた話を書いているのに、ふとした時にその登場人物達の繋がりが見えてくるのも楽しいですね
プレイしていてじわじわと良さを感じることのできた作品でした