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kaza-hanaさんの家族計画 ~そしてまた家族計画を~の長文感想

ユーザー
kaza-hana
ゲーム
家族計画 ~そしてまた家族計画を~
ブランド
高屋敷開発
得点
82
参照数
363

一言コメント

末莉ルートのその後。家族計画という経験を通して得られた司の思いがしっかりと描かれている。低コストで短いが、それでこれだけのものを残せるのはさすが。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

高屋敷に一人住む司の下に、家族関係に難のあるあかりが家出をして訪ねてくる。

調査により、幼少期に別離した育児ノイローゼの母親(舞子)と同居を再開したところ、舞子は精神を保つために無意識にあかりを娘の友人とし、玉子料理が好き、表情豊か、気だてが良く成績優秀という、あかりにはない舞子の望みを押し付けた偶像となってしまっていたことがわかった。(舞子は玉子料理が得意で、あかりは玉子アレルギー)
父親の祐也も家庭の維持に奮闘したようだが、あかりも自分を曲げることはなく家族はすれ違い、祐也も仕事に逃避するようになった。

司はそんな裕也と電話で話し、このまま家族として茨の道を進むか、あかりを司に任せるかの選択を問いかける。

「……お願いします」
とあかりを預ける決断をする裕也に

「おう、任せとけ
 そんでな
 だからおめぇはひよっこだって言うんだよっ!!
 半生かけて後悔しやがれ
 おめぇが今、何を突き放したのかをな!」
と叫び電話を切る司。

そうして高屋敷の家族計画の一員になったあかり。

家出してきた当初の、
「どうして、親って選べないの?」
というあかりのセリフは家族への不満を表していたように思われたが、その言葉の裏にあったのは母親の幸せを願う娘の優しさだった。

そんなあかりに司は、高屋敷を与える条件として幸せになることを追加。
最高の男をつかまえて大人になったら両親を引き取って優しくしてやれと告げ、それがあかりを家族から手放すこととなった弱い舞子と優しいだけの祐也への報いになると、本当の家族である2人に向けて長年かけた仕返しを仕込んだ。

2週目

あかりを引き取ったその後。
司はすでに年老いていて、共に人生を歩んだ仲間は劉を除いて既に亡くなっていたことが分かる。
思っていた以上に時が経っていたようで、舞子と祐也という名前に見覚えがないのも無理はない。
高屋敷の家と土地の権利を譲ると言ったのも納得。
大切な場所を受け継ぐ相手としてあかりは相応しいと司の目に映ったのでしょう。
かつての家族計画の仲間は、司と共に高屋敷に遺影として存在している。

末莉が会いに来ていたのは、高屋敷に1人残る司の下に現れる末莉の幻。

そう……ここで微睡めば、いつだってあいつは戻ってきたものだった。
滑舌の良いやさしい声色は、たとえ幻聴であったとしても、俺をいっとき、貧困と騒動と困惑と……幸福の時代へ連れ去るのであった。

とあることから、末莉が昔の姿で現れていたことにも頷ける。
最後は司も静かに息を引き取る。

3週目

亡くなった司の視点から見たその後。
あかりは司の死を体験し、自分を客観的に見つめ直して精神的に成長。
司の下に末莉が迎えに来て、鳥子という新たな家族を高屋敷に迎え入れたあかりを見届けた後、かつて共に人生を歩んだ仲間が待つ場所へと旅立っていく。

なおボロ泣きした模様。
また家族計画の世界に触れることができて本当に幸せだった。