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kaza-hanaさんのアストラエアの白き永遠 Finale -白き星の夢-の長文感想

ユーザー
kaza-hana
ゲーム
アストラエアの白き永遠 Finale -白き星の夢-
ブランド
FAVORITE
得点
75
参照数
552

一言コメント

幸ルートのみプレイ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・幸グランドルート

滅亡した火星(白い星)の隕石に友達を望み、それに残っていた生き残りの遺伝子(雪々の母)が応えたことで、世界で初めて生まれたエルフィン(妖精)となった白羽幸。
白羽幸の命を代償に具現化した雪々は、「火星の遺伝子を伝播させる」ことを本能的に目的としており、それは異能という形で共感能力によって人類に植え付けられていった。
雪々の同類である、「心に傷を抱え、自分の存在を誰かに認めて欲しい」という人たちへ。
それは、寒冷化で火星と同じ運命を辿る地球で今度こそ生き延びるための新人類の創出だった。
これを振り返り、雪々は自身を -月を食べたがっていた狼- と比喩している。
しかし、その行いが人類の消滅に繋がっていると知った雪々は伝播した遺伝子を回収し、その力と自身(ルーン)の消滅と引き換えに地球を救おうとした。

それに対し、陸は自らの命を与える事で雪々を生かし、2人で異能回収の旅へ。
その旅によって陸は衰弱するが、死の直前に未来予知の力で明るい未来を見つけて救いを見い出したのが前作のグランドエンド。

そんな前作から分岐して展開されたのが今作のグランドエンド。
陸たちは3年生になり、来年の春に至ればフィムブルの冬が終わって雪々の望むエルフィンが人間に戻る結末を迎えることができる。
しかしここで、狼以外が月(シラハ)を食べたがっている、という予知が雪々に浮かび、それはESA(欧州宇宙機関)であることが判明する。
研究所に勤める白羽(母)は娘の白羽幸が研究対象とされる拒むために匿っていたが、ついにそれがばれてしまい手が回ってしまったとのこと。
白羽幸は孤児だった陸にとっての本当の姉にあたり、血の繋がらない妹(異母兄弟)であるりんねは対抗意識を燃やしている様子。
初めは月を食べたがっていた狼も、今では守りたいと思うようになった。
そう言い残し、陸にシラハを守って欲しいと告げて雪々は姿を消した。
幸が眠りに落ちたことで、自分という存在(ルーン)が幸の命を削り、陸を孤独に追い込んだことを知った雪々は、前作同様に自身(ルーン)を消滅させることで人類が生き残る道を選んでいた。

共有感覚によってエルフィンは雪の届く範囲で雪々の意思を共有する。
これには強制効果はないが、エルフィンは元々同類しかその異能に目覚めないため、共有の効果が大きい。
これによって外での安全が約束された白羽幸は、研究所を出て、姿を消した雪々の想いを汲んで陸と家族の時間を過ごすことを決める。
そこに雪々にも戻ってきて欲しいと望む2人は、夢の世界で雪々を探し、ユグドラシル(雪々の母)の導きで雪の結晶(思い出)を探すこととなる。

夢の世界で亡き父と出会った2人は、出産を反対したにもかかわらず白羽(母)が陸を産んだのは、幸を1人にしないためだったと明かされる。
しかし、その後、幸はエルフィンに覚醒。
その際に現実で起きた事故で父は幸を守って亡くなり、幸は多くの研究機関から注目される立場になってしまった。
さらに、研究により異能は絆が深いほど受け継がれやすいことがわかり、白羽(母)は苦渋の決断で陸を養護施設へ送ったのだという。

現実では幸も学園に通わせることで話が進み、コロナの火星探索の見送りやその際の写真を文化祭で展示するなど、思い出を重ねていった。
そしてお互いの感情に素直になった2人は愛し合い、雪ちゃんを匿っていたユグドラシルから最後の雪の結晶を受け取る。

幸や陸とずっと一緒にいたいからずっと冬が続けばいい、そう思っていた。
けれど、そのせいで幸も陸も不幸にしてしまった。
わたしは、変えたくないものを守りたいから今では早く春になって欲しいと思っている。

そんな雪々の想いの詰まった記憶を。

そして春になり、運命の日。
ようやく雪々に出会えた2人は想いを告げ、本当はみんなとこのまま一緒にいたいという雪々の本心を共感する。
陸はヒュプノ(催眠能力)を自らにかけ、雪々に行使。
回収されるはずだったルーンは雪々とエルフィンを繋ぐ絆となり、エルフィンはその異能を手放すことなく雪々も世界に残された。

雪は解けて春に変わり、雪々はお別れではなく自立のため、望まずにルーンを受け取ってしまった人々からルーンを回収する旅に。
その際にESAの能力者のルーンも回収しており、幸を狙う脅威は無力化されている。
リハビリの成果もあり、幸は車いすを絶って自分の足で学校を卒業。
まだ見ぬ星にいるかもしれない雪々のような助けを求める生命体の為にも、宇宙開発の研究員として、電波天文学を学ぶことを決める。
陸と一ノ瀬は能力飛行士、落葉は研究所の職員とそれぞれが進路を定め、未来へ向かって歩き出し始めた。
そんな中、陸と幸は再び夢の世界へ導かれ、旅を終えて眠る雪々と再会。
共に3人で歩み、思い出を紡いでいく未来を手にする大団円を迎える。


総評

本編を終えてのFDということで世界観が出来上がっている状態から展開されている上に、異能バトルの展開もないので、プレイする上で楽しむ要素は間違いなく減っている。
前作のメインストーリーが幸ルートになることで、どんな結末に変化するのか。
そこが大きなシナリオとしてのポイントだが、正直物足りなさも感じてしまう。
前作が楽しくても楽しめるかは微妙なところ。
作品の世界をちょっとでも長く楽しみたいという人向け(というかFDってそういうものなんですが)。
終盤までの道中(異能関連やメインとなるシナリオ)の展開自体に面白さを見い出していた人はわかりませんが、前作の日常パートの雰囲気や世界観自体がもう大好きって人は楽しめると思います。
キャラが弱いわけではないのですが、やっぱりベースがあってシナリオが描かれてるわけで…

結論何が言いたいかというと、
仮にこれがミドルプライスなら納得だけどフルならFDでももうちょっと期待しちゃうよねってこと。