同人ひまわりのごぉさんが手がける壮大な物語。考察が好きな人はやって損なし。
■ 夏編
共通ルート
記憶喪失で1999年の見知らぬ海岸に流れ着いた切那。
無限に続く輪廻の輪からようやく流れ着いた楽園で、この音を取り戻すため、あの子を救うため、というおぼろげな果たすべき使命を抱えている。
ヒロインの3人はそれぞれ浦島御三家の娘で17歳の少女。
町長である親父とは不仲で、町を出ようと心に決めている夏蓮。
タイムパラドックスの知識に詳しく、未来からきたという切那を警戒する沙羅。
切那の名前に覚えがある今作のメインヒロイン凛音。
10年前に死んだ凛音の父が書いた書物に挟まれた「切那は死ななければならない」というメモがシナリオとして引きが強かったが、どうやら話のキーポイントは5年前にあるようだ。
凛音の身に起きた神隠し、沙羅の両親が亡くなった神社への放火、浦島御三家にできたわだかまり。
これらの事象がすべて5年前。
(わだかまりの原因は凛音の母である玖音が当主の役目を放棄したからだと発言している)
さらに甘味屋の老婆によると、切那と凛音がよく一緒にカキ氷を食べに来ていたのもその頃。
煤紋病にかかった老婆や凛音は切那に覚えがあるのに、夏蓮や沙羅は全く覚えがないのも謎が深まる。
凛音が店の名前を聞いて行くのを止めたことから、凛音に当時の記憶があることは間違いない。
この煤紋病も大きなキーワードであり、ここ10年は落ち着いているらしいが、遥か昔に煤紋病を恐れて町を隔離した本土との確執は今も残っている。
閉ざされてしまった土地で、夏蓮の家系は政治、凛音の家系は自給自足のシステム、沙羅の家系では祭事を仕切り、御三家として力を伸ばした。
そして代々受け継がれてきた固定観念が、今では自ら孤立の道に進む悪しき風習の筆頭となってしまっている。
夏蓮が父・守継を嫌う理由はここにあり、町を出ようとアルバイトを始めている。
さらに島に残る伝承。
遥か昔の悲恋物語に登場する同姓同名の4人の登場人物。
血の繋がった身で恋をした凛音と切那。
愛情と島のために魔女に2人を引き裂かせた夏蓮。
顔を化け物に変えられた凛音が命を絶ち、残された切那に魔女の元へ行くように助言をした沙羅。
魔女との契約で、いつの日か再び生を受ける凛音と結ばれたら呪いは解かれることとなり、凛音は輪廻の運命を、切那はその時を待って氷の中で切那を行き続けることを選択する。
この呪いが煤紋病にあたり、島を守ることは、眠り続ける切那といずれ生まれてくる凛音を守ることにも繋がるとされている。
この伝承による名前の重みから、煤紋病を恐れる凛音は日差しを恐れて外へ出られなくなってしまっている。
凛音を切那として守り続けることを決断すると、未来で凛音との子供に浜辺で物語を聞かせているEND『未来予想図』
凛音は屋敷に引きこもり、切那は涙して、子供には痣ができる。
煤紋病は切那と凛音の血統では起こらないはず…、なので暗に最善ではない未来のイメージを表したものとして予想図という表記なのだろうか?(要検討)
決断ができず、外へ出る第一歩として凛音を海に誘うと先へ続く。
誘う口実として凛音と切那の伝承を否定し、期待を裏切ったことで凛音にビンタされるが、冷静になって日傘を差して海を訪れた凛音に、その後も本当の自分を探すために島に残ることを誓う。
平穏な今の日常が壊れてしまうのを恐れていた自分を見つめ直し、選んだ選択でルートが分岐。
夢で見た、火災の中で沙羅に世界を託された場面や、化け物のような姿になった夏蓮にコロシテと懇願される場面については、共通ルートで詳細は不明。
夏蓮ルート
この時代の人間だと選択すると夏蓮と海の沖にある海上ステーションの跡地(本土の象徴)まで泳ぐことに。
内部を調査しようとして溺れた際に、海底に人工建築物の集合体を発見している。
2人とも命に別状はなかったが心配をかけたため凛音に立ち入りを禁止され、その後は距離が近づいた夏蓮が午前からバイトに来るようになり、家に行って勉強を教えたりして過ごす時間が増える。
卒業したら許婚と結婚しなければならないから時間がないとキスをしてきた夏蓮を、過去を知らず、頼られる自信がなかった切那は突き放す。
その後、切那は沙羅と話して夏蓮が好きだという本心を自覚するが、初めて本土へ行く事を応援してくれた切那に否定され、沙羅にも自分で本気で行動してこなかった事を指摘されたことで夏蓮が帰ってきた兄に甘えていたところを見て許婚と勘違いし、またもすれ違う。
本当の許婚だった駐在と玖音の話で、夏蓮の母・夏未が過去に海洋ステーションで研究をしていたこと、そこで本土からきた男に恋していたが本土に行ったのは駆け落ちではなく告白を断っていたことを知る。
母と同じようにすれ違いを繰り返してしまわないようにと心に決め、バイトに顔を出していた夏蓮に告白し、玖音に会いに来て鉢合わせた守継から夏蓮を守る。
補修があるのに終わったと嘘を付き、本土に連れ出して欲しいと言っていながら内心で諦め、卒業せずに許婚の件を先送りにしようとしていた夏蓮に、切那は翌朝一緒に本土へ旅立とうと一方的に告げて選択させる。
夏蓮は切那を選び、共に本土へ船を向かわせるが霧に進路を失い、凛音の電話番号が書かれたメモもなくし、最後にすがった海洋ステーションも目の前で取り壊しによって消え、島へ帰還。
自分では何も決められない夏蓮を思う兄によって、夏蓮を時期当主にするという守継の古い考えは切那をだしに改められ、罪に問われて本土へ送還される切那と共に夏蓮も隠れて本土へ。
兄に聞いた夏未の住所へ向かった先にはお墓があり、そこで夏未の元部下である桃香に会い、夏未はお世話係などではなく海洋ステーションのトップで、身内にも隠して壮大な研究を続けていた研究者であるという真実を知る。
そして夏未が探していたものこそが、以前溺れた際に海底で見つけた人口建築物の集合体(竜宮城)だった。
夏蓮は自分の選択で島に戻る決断をし、お袋に顔向けできるようになったら戻ってくると誓う。
切那は記憶障害者として教養を受け、出所すると桃香の手引きで本土に進学した夏蓮と再開。
何も決められなかった夏蓮と過去がなかった切那はようやくスタートラインに立ち、2人で新しい一歩を踏み出す。
沙羅ルート
自分を唯一未来人と信じてくれた沙羅。
放火で家族を失ってから夏蓮の家で養われるも中学卒業の際に養子の話を持ちかけられ、家の名を守るために1人プレハブ暮らしを始めた経緯があり、人に本心を見せない。
島での過去を持たず沙羅に興味を持たれている刹那は、夏蓮に傍で理解者になってあげて欲しいとその役目を託される。
病気から島を救う神の子ともてはやされ、幻滅されたことから望まれる沙羅であり続けようとする少女。
自身の無力に嘆いて目に見えないものを求める同志として、島を救ってみんなを幸せにしたい、という沙羅の願いと力を肯定し、島を、世界を救う未来に向けて動き出す。
焼け焦げた山小屋を発見し、駐在によると8年前の山火事によるもので、さらに5年前の火事も放火ではなかったと語られる。
沙羅と共にその山小屋に行くと、沙羅がよく通って子供と会っていたことを思い出し、そして鶏につけた名前と同じ「まぁや」という名前が残っているのを発見する。
あるはずのない島影の出現と引き換えに存在するはずのものが一つ消える神隠しの噂。
それに当てつけて都合のいい道筋を作り出していく沙羅を否定して事実を告げるとEND『三人目のタイムトラベラー』
沙羅は両親の死と自らの犠牲が世界を救っていると解釈し、5年前に飛んで最善の行動を取らなかった切那を殺してナノマシンを奪い、3人目のタイムトラベラーになろうとする。
沙羅のことを肯定こそできなかったが、沙羅と切那が出会ったことには必ず意味はあると言い、人を信じたいという沙羅の思いに応えると先へ続く。
神隠しの島(暴龍島)の正体は海蛇で、伝承の魔女の正体が自らの家系、つまりその海蛇の毒を煤紋病の薬として活用した力こそが自らの家系の力だと推測した沙羅。
海蛇を釣ろうと釣りに出て、そんなことはありえないとわかっていながら知らない振りをし続ける。
偶然にも小さな海蛇を捕まえるもその効能は精力増強という見当違いのもの。
沙羅に恋人の関係を求めて断られ、世界を救う重みを持つ命を懸けられるのかと問われて沙羅のために死ねると答えるとEND『妥協の終着点』
命を懸けることのできる大切な恋人足りえる存在を見つけたことで、未来からきた自分を否定し、沙羅との関係も終わってしまう。
沙羅のためには死ねないを選択で先へ続く。
島に来た当初に凛音の父の蔵書で見た本に蛇と魔女らしき人が写っていたのを思い出し、その「浦島伝説の真実」から魔女の正体は煤紋病患者であり、暴龍島は浦島を指していたこと、沙羅の家系がやっていたのは赤ん坊を太陽の下に曝して煤紋病の疑いのある者を摘発する日送りの儀であること、山小屋は煤紋病患者を幽閉するためのものだったことを知る。
事実を受け入れずに町を救うという架せられた使命を貫こうとする沙羅だったが、最後に載っていた母親の名前に自分の存在意義が分からなくなる。
そんな沙羅に何も声をかけることが出来ずにいるとEND『蛇に魅入られた男』
沙羅は部屋を飛び出し、毒が回った切那は助かることなく死亡。
沙羅の涙を拭うで先へ続く。
煤紋病患者の資料が夏蓮の家に残っているかもしれない、さらに夏蓮の親父が黒幕である可能性があるという沙羅の言葉を夏蓮に聞かれ、口論になった末に切那も沙羅を擁護できず、沙羅は1人で飛び出してしまう。
その日、夏蓮の家が荒らされ、切那は海の彼方にないと思われた暴龍島を目にする。
翌日海にあがった犬の死体は首に刺し傷があり、駐在に犬と沙羅の関係性を告げないとEND『あのこどこのこ』
可愛がっていたマーヤの肉が入ったスープを出され、切那は沙羅という少女を信じられず、沙羅も自分を偽り続けて使命を全うしようとする。
沙羅のことを信じ、犬と沙羅の関係を正直に駐在に告げることで先へ続く。
マーヤは寿命で、犬は以前に与えた魚に海蛇の毒が入っていたことで苦しみ、助ける手段がなく、母の教えを守って生き物への責任を果たした事を知る。
さらに、5年前に沙羅が生き残ることを知っていたかのように振舞っていた万里愛の正体は、左胸の痣の一致から未来から過去へ飛んだ沙羅自身であると推測される。
未来からきた切那と出会ったことで過去に戻る定めにある沙羅。
止めようとするが、親殺しのタイムパラドックスが立ちふさがる。
5年前に戻って死んでしまうことを知っている沙羅は、ここで切那に殺されてこのループを断ち切りたいと願い、それに応えるとEND『Think about her』
このまま悲劇が続くよりも愛する人に殺されたいという沙羅の願いに応えた苦肉の結末だが、結果的には妄想を勘違いしたまま死んでしまったこととなる。
沙羅を手にかけず、他の方法を探すと先へ続く。
ご神体に過去へ行くためのタイムマシンがあると踏んだ刹那は、自らが過去へ行って沙羅を救ってみせると決意するが、沙羅は先に神社へ向かい、煤紋病患者も殺すことで救われると考えてしまった自分は死ぬべきだと自殺を計っていた。
遅れて辿り着いた切那が沙羅をこれまで導いてきた自分の責任を考え、沙羅の目を覚まさせることを決断するとEND『ありがとうさようなら』
嫌な自分を否定してくれた刹那に感謝し、共に炎の中死に至る。
沙羅と共に死ぬを選ぶと先へ続く。
沙羅の考えを肯定するが、現状の沙羅と子供には罪はないとご神体という大きな玉手箱に入って過去へタイムトラベルしようとする。
目が覚めると、沙羅と切那は現代に残ったままだった。
最近診療所に新しく入ってきたという新人看護婦の正体は母親の万里愛。
5年前の火災でご神体の中にあった骨と入れ替わって生き残り、行方をくらましていたらしい。
煤紋病患者の根絶に乗り出したのは、万里愛ではなく幼馴染である宗樹という父親。
汚れた血から子を産んではいけないという宗樹に「この子は島を救う子だ」という嘘をついたことで結婚し、その結果、宗樹が焼身自殺へと至ったことへの償いとして万里愛としての命を絶ったという。
疑問点は本編で切那も問いかけたがさらっと流されてしまい、どこまでが嘘でどこまでが真実なのか曖昧なまま。
沙羅と切那の髪型の類似や写真にわずかに写っていた父親の髪の類似、沙羅に似た巨乳の夢は深層心理で母親(妻)を思い出していたとも考えられることから、切那=宗樹という線もあるかと最後まで思っていたがなさそう。
「だって――約束しましたから、ね」の件は意味深に聞こえましたが、万里愛としての自分を許せる時が来たら沙羅に身を明かすという約束を守ることをほのめかしたものですね。
切那と沙羅の思い込みに最後の万里愛と、ごぉさんに散々弄ばれたルートでした…。
凛音ルート
2人攻略後、海岸で凛音と仲直りしたシーンで選択肢が追加され、凛音ルートへ。
凛音には名前以外の一切の記憶がなく、浜辺で意識が目覚めたときに助けてくれた切那と会うために海岸に足を運ぶようになり、再開して毎晩この海岸で会っていたという。
その際、切那のために本を持っていくうちに書庫で父の書いた伝承の本を見つけ、自分を伝承の凛音に重ねた。
悲しむ凛音に物語を書き換えてくれた切那にさらに恋をし、外の世界へも出歩けるようになる(甘味屋に切那と訪れていたのもこの頃)
その後、誕生日プレゼントで録音した声を届けに行った際に切那の前で海に落ち、目が覚めると神隠しにあった事になっていて切那はいなくなった。
過去の切那に恋する凛音に、切那と名付けられたことでその代わりを演じる切那。
夏蓮の言葉や凛音のみんなと同じ時間を生きたいという願いから小屋の中を確かめに行き、凛音は5年前の真相を思い出す。
そして今いる切那こそが過去の切那と同一人物なのだと結論付け、恋人の関係となる。
駐在さんに凛音が神隠しから戻ってきたのは僅か2ヶ月前という事実を聞き、当時17歳だった凛音は5年の期間を経てそのままの外見で戻ってきたという。
擦り傷の残ったままだった凛音は時間を越えてきたと仮定し、自分も過去の切那である証拠を探すが見つからず。
自分は本当の切那ではないと確信を持ったことで凛音の前で演じることを止め、仲違いをするが、信じることに理由が必要ですか?と沙羅に問われて思い直す。
切那の言動・行動から平行世界を無意識に知覚していることがわかり、真相を推察した結果
① 1994年、切那と凛音は神隠しで暴龍島に流れ着く。
② 切那が助けを呼びに島に戻った際に時空の揺らぎに飲み込まれ、1999年になる。
③ 暴龍島に戻ると凛音はすでに死んでいて、救うためにもう一度時空の歪みへ。
④ 1999年から戻った切那が、苦渋の選択で1994年の切那に致命傷を負わせる。
⑤ 凛音をボートに乗せて村へ戻し、1999年に凛音が現れる。
⑥ パラドックスを回避するために1999年に記憶を失った切那が現れ、凛音の記憶もまた前後の記憶を失った。
という結論に至る(沙羅の妄想であり、①しか当たっていない)。
ようやく自分が切那だと理解して向き合うことができた切那だったが、凛音に過去の切那を殺した人殺しと突き放される。
いちばん大切な人を奪ってやると言って嵐の中5年前の凛音を殺しに暴龍島へ向かった凛音を追って船を借り、最後には海に飛び出して流れ着いた暴龍島で出会ったのは1994年の凛音の振りをした凛音。
2人で一緒に生きたいという望みを叶えようと動く切那だったが、騙されて大切な人を失う辛さを体験する。
凛音は1994年の切那を置いて島へ戻ったこと、切那は凛音が救えなかったことが心残りとなって受け入れられずにいたが、時空の歪みが未来から過去への移動の方が長くなることを思い出し、協力してこれから現れるであろう過去の2人を救おうとするが、傍に切那の死体を見つけたことで現代であることを理解。
切那と改めて話して感じた、それが捨てられない物で、今を失いたくないという気持ちに素直になる。
2人で島に戻ろうとして力尽きた切那を前に、凛音は自分が死んで切那さえ生き延びればまた会えると伝承を信じて海に体を投げる。
遺品に混じっていたカセットテープの残骸から、その知識を知らない自分は本物の切那ではないと知るも伝えることもできず、切那だけが生き延びて町に辿り着く。
凛音の捜索が行われて死体が見つかり、その影響で町に来ていた桃香から知らなかった新事実を聞く。
・島の伝承に夏未が研究していた超技術(オーバーテクノロジー)の痕跡があったこと
・海洋ステーション設立に、町長・守継と万里亜の夫・宗樹に加え、玖音が特に反対派の筆頭として動いていたこと
・1989年に玖音と凛音が海に落ちて行方不明になっていたこと
・3日後に凛音が保護され(初めて切那と出会った場面)、本物の玖音は亡くなったこと
・凛音の父・典正に言われ、当時小間使いだった本当の凛音の母が玖音となって海洋ステーション設立を進めたこと
・玖音が3ヶ月前に、冷凍睡眠装置で眠る5年前に行方不明になった凛音を見つけたこと
意識を失った凛音がボートで町に流れ着くのはさすがに都合がいいと思っていたが、真実はこの超技術だったようだ。
この冷凍睡眠装置を使い、いつかタイムマシンが出来たら切那が凛音を救う。
その時まで切那は眠り、玖音たちがそれを伝え続ける。
そう決めるも、海上ステーションが何者かの陰謀で予定より早く爆破され、海に沈んでいく冷凍睡眠装置に切那は身を投じ、長い眠りにつく。
島で見つけた死体は御原家長男の切那であり、カセットテープは彼が凛音に貰った誕生日プレゼント。
夏編における凛音は、救われることなく自ら海に身を投じる。
■ 冬編 (NEVER ISLAND)
目が覚めた地でリンネに出会う。
22016年。
王がいなくなり、地球の気温が下がり、食糧難で戦争が起き、世界は雪で覆われて人々が地下で生活をするようになった未来。
地下の世界の総称をISLANDといい、外にはリンネだけが知るもう一つの世界がある。
食糧難から未来を守るために認識票制度による配給制度を取り入れるしかなかった教会の象徴であるサラ。
札なしで教会に不満を持ちながらも自分の力で生きようともがき、アヴァロンを結成したカレン。
聖典に語り継がれるリンネに憧れ、自分も信じたことを貫こうとするリンネ。
未来になっても置かれている状況は過去とあまり変わっていないようだ。
世界を救うと代々受け継がれてきたCDを解析し、録音されていた設計図を元に外の世界で部品を探すリンネ。
リンネの兄であり、サラと恋仲だったこの世界のセツナは、5年前に外の世界に希望を抱いて派遣隊として旅立ち、成果なく戻ったことで教会による隠蔽で亡くなった。
同じく母を教会によって奪われたカレンに協力し、セツナはISLANDを変えるために信頼できるサラともう一度話す機会が必要だと考え、誘拐を企てる。
誘拐の必要もなく直接話すことができて協力を得られたが、別の派閥の介入で教会の枢機卿が襲われたことで誤解を受け、破談に。
証拠もなく魔女として吊るし上げられたサラと、助けに入って共に捕らえられたセツナ。
本物の魔女だと嘯いて処刑は免れるが、燃え移った火の中、サラは世界を託して死に、セツナと助けにきたリンネは追われる身となる。
カレンは外の世界に出たことで煤紋病にかかり死亡。
リンネも捕らえられた後に亡骸が発見され(後にリンネの札を付けたカレンと判明)、セツナとネハンは追放の刑の処された。
セツナは再びリンネに外の世界で拾われて再会し、乗ってきた冷凍睡眠装置を見つけてその動力源でタイムマシン(仮)を完成させ、22016年のリンネを救うために出会った過去に飛ぼうとするも、リンネは結婚の約束を胸に
「もし、もう一度『わたし』に出会えたら――
――もう一度、好きになってあげて」
と、セツナを生まれ変わりの凛音の元へ送る(2万年に設定)。
この時、リンネがタイムマシン(仮)を冷凍睡眠装置だと知っていて2万年後に送ったのか、起動してからタイムマシンではないことを知ったのかはわからないが、その後、自らもセツナの乗ってきたもう一つの冷凍睡眠装置を修理して未来へ移っている。
夏編で切那が持っているシングルCDはこの冬編で切那に受け継がれている。
■ 真夏編
本物の切那ではないセツナは、凛音に言えなかった「いつかまた誰かを好きになれる」と言うセリフを伝え、始まりの出会いをなかったことにしようとするが、再び凛音に身元を匿われることとなる。
記憶が残っていることで住民との関わりも変化し、御原家に沙羅と夏蓮を招いて万里愛も加わった懇談会を開催するという夏編ではなかった展開をみせる。
煤紋病の研究を続けていた万里愛によって煤紋病は病原遺伝子によるものだと判明され、凛音の過去の検査結果から凛音は煤紋病ではないことと、御原家の人間ではないことも分かる。
この事と、リンネの別れ際の言葉から、セツナは凛音とリンネは同一人物だと思い込む。
凛音が初めて出会って恋をした切那は御原家の長男であり、セツナとは違う人物であることを知った上で愛し合い、母の玖音に
「必ず凛音を幸せにする」を選ぶと、玖音に結婚を認められ、神社で式を挙げるEND『凛音』
「必ずリンネを幸せにする」を選ぶと、凛音とリンネを混同するセツナに、玖音が凛音はわたしの娘だと言い切り、あなたのような人には任せられないと突き放される。
万里愛に聞いた玖音の過去
・元の名前は空(凛音に名前を含む全てを与えて空っぽになったことから?)。
・御原玖音の嫉妬により凛音と共に虐待を受けてきた。
・10年前の凛音失踪時、死んだ御原玖音に成り代わり、PTSDによって記憶を失った凛音や他の子ども達のため、典正・万里愛・夏未らと島の悪い風習を変えようと海洋ステーションを促進
・5年前に再び凛音が神隠しにあったことで計画が無に帰し、再び1人に
凛音が間違いなく玖音の娘であることと、遠まわしに父親がセツナであることも語られることから、この時点で玖音がリンネだと考えられる。
さらに桃香との探索で新たに発覚するのが
・暴龍島の洞窟がリンネと過ごした工房と同じ場所であること
・そこで作られていたのはタイムマシンではなく冷凍睡眠装置であること
・島に残る伝承は、冬編でのセツナの経験が元になっている可能性が高いこと
・NEVER ISLANDは未来ではなく過去であり、真夏編を現代とすると冬編は2万年前、夏編は4万年前にあたること
リンネが玖音として自室に篭り、これまでずっと世界を救うためにタイムマシンの制作を続けていたことを知り、すれ違った時を取り戻すと、生まれ変わってでも完成させるという玖音に役目を託してセツナは冷凍睡眠装置で未来へ。
END『Re:』は、「Prologue of midwinter(真冬編プロローグ)」というタイトルから想像するに、
「過去の凛音を救い終えたら、最後にお前を救いに行くから。
なぁリンネ、その時こそ始めようじゃないか、俺とお前の、本当の物語を。」
と言ったセリフの通り、この真夏編において凛音を救うことができたセツナが、過去の犠牲になった凛音達を救い、最後のリンネの元に辿りついたと考えていいでしょう。
凛音とセツナの幸せを考え、自分を犠牲にして2人の恋を勧めるような性格であるリンネが報われると思うと嬉しいですね。
凛音に家族と強調していたこと、すぐ戻ると言っていたことから、ここでいう本当の物語とは2人が凛音の両親としてスタートする家族の物語だと想像できます。
■ 総評
このゲームの世界観としてまず受け入れなければならないのは
『約2万年ごとに氷河期と間氷期を繰り返し、人が生まれ変わっていること』
『約4万年ごとに同じ歴史が繰り返されていること』
氷河期(冬編)にリンネ、間氷期(夏編)に凛音という人間が生まれ変わり、繰り返されるせつなとえいえんのおとぎばなし。
全く同じ歴史が形成されていることには違和感があるかもしれないが、お伽話に関わる一定範囲において循環していると考えれば、伝承がある種の呪いのような運命的力を持ったファンタジーとして考えられ、受け入れやすいかもしれない。
冷凍睡眠装置の使用によって記憶が失われ、多くの繰り返しで数え切れない犠牲の果てにようやく凛音を救うことが出来たのがこの物語の真夏編にあたる。
せつなはセツナ、えいえんはセツナが最初に救いたいと願ったリンネである玖音(久遠)のことを指して、セツナとリンネの物語と解釈してもいいのかもしれない。
(明確に最初と定義すればさらに遡ることとなるが、あくまでこの物語においての最初である)
ゲームの感想で、凛音のことを本当に好きだったのか、という表記を見かけるが、これには愛していると言えるでしょう。
まず分岐時点で凛音とリンネを同一人物だと思っていたとしても、どちらを強く思ったかはプレイヤーに委ねられます。
プレイヤーが凛音を選ぶ ⇒ 凛音と結婚して幸せに
プレイヤーがリンネを選ぶ ⇒ 真実を知って本当のリンネを助けに行く
物語の世界構想的にEND『Re:』のイメージが強くなり、そう感じてしまうのかもしれないが、予約特典であるドラマCD『明日、わたしは―』を聴けば、END『凛音』がいかに大きた意味合いを持っているかわかるでしょう。
切那は凛音を救うことができないというジレンマを越え、伝承として語られ続けてきたこの作品のテーマの1つでもある「切那と凛音の悲恋物語」への終止符を、切那と凛音の結婚という結末で唯一形にしたのがこのルートです。
END『Re:』にしても、もともと凛音の存在は恋愛的意味合いよりも守るべき対象としての意識が強く、娘と判明したことで、凛音に向けられていた気持ちが家族愛へと移ることは何もおかしなことではないと思いました。
主人公をどう思うか、に関しては個々の感性の問題なので正直しょうがない部分もあるかもしれません。
自省しても何度も同じ事を繰り返し、成長がみられない姿は、見ていて気持ちのよいものではないですし。
第三視点から見ているプレイヤーですら混乱する状況なので実際にそれを経験しているセツナを擁護したい気持ちもありますが…。
長々と書きましたが、突き詰めていくと止められなそうなのでこの辺で。
シナリオがごぉさんということでひまわりが好きだった私は何ヶ月も前から楽しみにしていたのですが、本当に期待以上でした。
伏線に何度も結末を思い描いてはプレイを進めるごとに否定され、最終的には頭が痛くなりました。
ゲームの過程全てを肯定するわけではありませんが、構想がよく練られていて、最終的に想像もつかない結末を用意されて納得できるゲームはプレイして本当に楽しいです。
作品として十分に堪能させていただきました。
SILENT WORLDも購入したので近々読もうと思います。