本編のFDとして十分な出来。シナリオとしても前作同様に心温まるエピソードで満足。
涼香の推薦でなぎさは陸上部の主将に、新キャラとして涼香の姉・彩香が登場したところからスタート。
涼香アフター
涼香の元いた名門校で陸上部の顧問を勤める彩香が臨時顧問として学園に、そして秋人の家に住み込むことに。
お兄ちゃん大好きっ子の恵がテレビに対抗して女装させたところから始まり、有能な妹を堕落させた男として秋人はよろしくない第一印象を抱かれてしまう。
理性的で妹を心配する落ち着いた姉ですね。
しばらく普段の秋人の様子を見てパートナーにふさわしいかどうか見極めることに。
秋人に依存する妹の姿を見て、恋という感覚がわからない彩香は理解に苦しんでいたが、秋人の人の良さと涼香への好意を認め、女性としてだらしない涼香を改善させる方向にシフト。
さらにダイエットで走って保健室で倒れこんだ妹のために本気で走る秋人の姿を見て、涼香同様その才能に惚れ込んだ。
涼香は秋人の現状をどう思っているのか。
そう姉に聞かれた涼香は、秋人と共に走ることで自分はもっと成長できると嬉しさを感じた反面、共に走ることで選手として舞台に立たないことに悔しさを感じていること、彩香にも同じように選手として戻って欲しかったことを打ち明けた。
指導者の道を選んだのは自らの意志。
そういった彩香は、秋人もまた最後は自らの意志で自分の道を選ぶのだという。
心配事がなくなった彩香は元の学校へと戻り、涼香は秋人と共に日々を過ごしながら、彼に支えられるだけでなく彼の幼馴染達のように背中を預けられる存在になれていたことに気づく。
サイドストーリー 彩香の過去
子供の頃、一緒に走っていた親友と才能で差がつき、疎ましく思われてしまい疎遠に。
それから走る目的がわからなくなるが、天才ともてはやされ記録が伸びないと悩んでいた妹のために走り、同じ気持ちを抱くこれからの選手たちのために指導者の道にいくことを決める。
莉奈アフター
祖母の提案で、家系的に女性に奥手な秋人を知るための試用期間として同棲することに。
家事の分担をはじめ要領よく秋人との日々を送っていく莉奈を見て、噂どおりの秋人に相応しい相手だと認められていく。
常に周りに気を配ることができることが長所の莉奈。
普段マネージャーとして周りのために動いてばかりの秋人に、自分には素直に甘えて欲しいと気持ちを伝えたり、秋人に莉奈が近づくと避けている節がある瀬古にフォローを入れたりと今作でもその魅力を発揮。
幼い頃からそんな風に生活してきたため、普段は乙女心を素直に出せなくなっていた莉奈は、恵に乙女力が足りないとツッコまれている。
秋人が合宿で家を離れ、恵に秋人が自分のいないところでどうなっているかを意識させられた莉奈は、ようやく自分が不安を覚え、ヤキモチという感情を抱いていたことを知る。
2人の関係に気を使った恵が、莉奈に言っても電話しないので秋人にも電話するように連絡を入れると、秋人は直接会って顔を見たいと走って帰宅。
そんな2人の関係をなぎさも自然と受け入れているようで、幼馴染の関係性は良好。
莉奈とのデートの誘いよりも先に約束した瀬古との買い物を優先したところは、莉奈が「カノジョがいるからって男友達との約束を断るような人にはなってほしくないかな…」と言っていたセリフの回収。
そして同棲生活を終え、莉奈が家に帰ると決めた日。
秋人は莉奈に帰って欲しくないというわがままな気持ちを素直に莉奈に伝えることができ、2人の関係はまた一歩前進をみせる。
最後には母親となってご飯を作っている莉奈の未来の姿が。
サイドストーリー 偉大な親を持つ子たち
「凡人がいくら努力したところで、天才には勝てない」
テレビの特集でそう答える学生記録保持者の藤原京一の姿を見て、自分の現状に焦りを持つ瀬古。
彩香と話し、涼香と同じく恵まれた環境で育ちながらどこで差がついたのか、魚が跳ねているのを見てそれに例え、誰よりも速く泳ぐ術を知って決して陸に上がらなかった涼香に対し、それを知っていながら陸地に上がってもがき続けているからだと教えられる。
決定的なその違いは、偉大な親を受け入れているかどうか。
父親を嫌い、その恩恵を吸収することなく意地を張ってくすぶっている自分を自覚することとなる。
なぎさアフター
男子陸上部の一員として走る秋人と、マネージャーを彼女に持つ瀬古。
女子陸上部には秋人の代わりにマネージャーをする恵が。
知識に乏しく不慣れながらも、特別扱いせずに接する彩香に従い頑張っている姿がみれる。
ゴミを漁っていると噂になっていたなぎさを気にかけ、現場を問い詰めるとその中には秋人のために編んで渡せなかった編み物が。
無事にプレゼントは秋人の手に渡り、同じく秋人が毎年買って渡せずにいたなぎさへのプレゼントのぬいぐるみを、それに気づいていながらもらっていた恵がなぎさに返しに来たが、何年も経っていながら大事に扱われていた様子を見てなぎさはそれを恵の物だといった。
あなたの走りには度胸がないと彩香にアドバイスを受けていたのを思い出し、なぎさには自信が必要だと感じた秋人は、彩香になぎさの走りを見てもらえるように頼む。
涼香とのタイムトライアルで、なぎさの走りは涼香をトレースしているだけで理想の走り方ができていないと語ったがその才能は認めた様子。
しかしそれでも天才とはいわず、真にその可能性を感じていたのは、その後の記録会で自分のミスからなぎさを棄権扱いにしてしまい恒例となる外周をしていた恵の方だった。
なぎさとの生活を楽しそうに語る兄の姿を横目に寂しさを感じ、大きなミスもしてしまった恵だったが、恋人の関係になっても恵を気にかけてくれる2人の存在に不安は解消され、これを機に立派なマネージャーへと成長する。
なぎさの両親は不妊症から2度目の妊娠を果たし、彩香は教え子たちに的確なアドバイスを残して元の学校へ戻っていった。
振り返ってばかりだった過去を持つなぎさと秋人だったが、共に未来では前を向いて走りいちばんを取ってその先の世界を見ることを誓う。
サイドストーリー 勝彦のしあわせ
よく笑うようになったゆかりを見て、肩身の狭い彼女をかばってくれた莉奈に素直にお礼をいう瀬古。
教室からグラウンドを眺める莉奈を見て、秋人も女を見る目はなかったんだな、という瀬古だったが、莉奈は見る目はあった上でなぎさを選んだんだよ、と返答する。
何に幸せを感じるかなんてひとそれぞれ。
瀬古はこの彼女を大切にし、同じ道を歩むことにしあわせを見いだした。
サイドストーリー もう一度、あの場所へ
恵に秋人のことを聞かれ、走りの面では性格的なものもあって80点だが、恵の兄としては100点だと答える彩音。
兄へ恋心を抱いている恵に気づき、度重なる失敗もそれが原因である事を見抜くが、それに自分が関わっていいものか悩んでいたところ恵は大きな失敗をしてしまう。
彩音が学校を去る前日、共に草むしりをしながら兄へ恋しているの?と直球で聞かれ困惑する恵。
兄の姿を後ろから眺めているだけの恵だが、兄への想いを肯定し、選手としての可能性も知る彩香は、どちらの意味でもとれる同じ場に立つという選択を恵に与え、胸を張って生きなさいと背中を押した。
涼香にはまたお姉ちゃんの走る姿が見たいと言われ、選手を辞めたきっかけとなった昔の親友からも結婚式への正体と謝罪の手紙が届き、彩香もまた走り始めることを決める。
サイドストーリー しあわせは、きっと、そこにもある
学校を卒業し、なぎさと共に内地に引っ越した秋人。
当時は笑って見送ることもできなかった恵だが、月日が経って大人になり、3日間だけの里帰りで戻ってくる兄をまた笑って送り出せるまでに成長した。
ドラックストアの仕事を辞めてマラソンを始めるというやりたいこともできた。
それぞれの歩む道でしあわせがあるように、隣に大好きな兄がいない日々を送る恵にもまたしあわせが存在する。
この作品での恵のストーリーを明るく前向きに締めくくった。