短い中に丁寧に物語を作ってメッセージを残した良作。物語としては非常にありがちで大きな驚きもなく、話の終着点もあふれかえったもの。 しかしながら、昔ながらのKeyらしい作風でしっくりくるものがあった。
人間のために作られた、人間のパートナー「フィロイド」
廃棄された施設から唯一目覚めた少年は、人間を探しに外に旅立ち、倒れたところをリオナに拾われる。
レイという名前をもらい、自らが機械であることを隠して共に過ごし、感情を知っていく。
人間のためになるというフィロイドの目的を敢行し、シオンやマッドさん、ティピィの問題解決を望み、その過程で自身の腕のオイルを使ったことで動作に不具合が生じてしまう。
廃工場で秘密裏に治すも、帰り際に傷を負って倒れている青年を助けて町に運んだことで、襲撃者を町に誘導してしまい、町は人間によって占拠される。
町の住民は全てフィロイドで、レイは人間だった。
フィロイドを創ったことで愛の育み方を忘れた人間は、感情すらも失い、派閥の戦争によってその歴史を終わらせていた。
襲ってきたのは感情を失って生きる人間の残党。
レイの機械の腕は、戦争で失われて補われたもの。
シオンは命の概念が搭載された最新世代のフィロイドだが、マッドさんはそれを知らない前の世代、ティピィは食べ物から動力を得られないさらに前の世代のフィロイド。
旅に出たはずのマッドさんが店で息絶えていたのは、稼働するために不可欠となっていた息子への怒りという感情がレイの行動によって喪失し、処理能力を超えてしまったため。
ティピィがいつも図書館にいるのは唯一の発電システムがあるからで、いつも持っていたクマのぬいぐるみは補助バッテリー。
シオナが度々不可解な行動を取ったのは人間にフィロイドであることを悟らせてはいけない決まりがあったから。
ティピィに冷たく接していたのは悲しみこそがティピィが稼働を続けるために必要な感情だったから。
町を離れ、人間から逃げて旅をする3人。
レイが目覚めた施設で休息するも、ティピィは稼働の限界がきて活動停止。
続いてシオナも人間からレイを庇って銃で撃たれた時の傷が原因で壊れてしまう。
レイは2人をコールドスリープ装置に入れ、死の直前に管理者を書き換えることでティピィにもらった図書館の知識と、シオナから学んだ感情を胸に、人間とフィロイドが共存できる世界を探しに旅立つことを決める。
時が経ち、世界は調和を取り戻し、ティピィとシオナもレイによって目覚めさせられる。
初期化され、失った記憶の奥に確かに残る温かい何かを感じながら、シオナはかつての町で歌を歌い始める。