インモラルホラーというジャンルをよくここまで作品として表現できたなと思う。生み出された独特の世界観が見事。点数はシナリオとしてよりも、作品としての奥深さを評価して。
第一殻 ~邂逅編~
主人公の五樹は記憶障害で過去の記憶を失っている。
医者に言われ故郷の実家に帰省した五樹は、蔵の近くで誘われるように脇道を進み、蔵女に出会う。
「また逢うたな」と言っていることから以前に会っていることがわかる。
周りの人間は五樹が記憶を思い出すように気遣っているようだが、記憶がなくなった原因を知っていてそれを伏せている様子。
現在の恋人だというきりこの言葉から両親の死に関係していることが分かるが、周りに反してきりこは思い出させたくないようだ。
いとこの夏生が言うには、蔵女という名前は、生きる意志を失ってしまった人をとらえては腐らせてしまう腐り姫の物語という伝承の少女と同じ名前らしい。(蔵女が名乗る前に「蔵女」と五樹が呼んだことをそこにいなかった夏生がなぜ知っているのか)
既に亡くなっている樹里という五樹の妹とそっくりの姿をしているが、潤に指摘されるまで夏生はそれに気づかず、町の人間も見ても誰も分からなくなっている。
1日目に蔵女が五樹と行動を共にしながら林の中で男を腐らせていること、電話の時に蔵女がいるのに五樹がそれに気づいていなかったこと、腐り姫伝説のことを話した夏生がそれを次の日には忘れてしまっていることから、蔵女は姿を消しどこにでも行くことができるし、人の記憶にも干渉することができるらしい。
最後の犬は殺された男のことを考えると蔵女の使い魔?
妹の樹里、飼っていた犬、蔵女、両親の死が記憶を失ったことに絡んでいるのは間違いなさそう。
第二殻 ~真相編~
刑事の清香さんが登場。
「もう2年になるのね」という言葉と、2年前の冬から記憶が途切れていることから当時の記憶を失くした一件でとうかんもりに来たのだと思われる。
夏生ときりこがいがみ合う様子を見て、蔵女はきりこの腹に紅い爪を挿していたが何の変化があったのかよく分からず。
夏生は五樹の記憶に執着しているように見えたが、それは思い出して欲しい過去があるかららしい。
「五樹が事故にあったって聞いたとき・・・」というセリフで
父さんと妹が死に、僕が生き残った、事故。
という記憶がないはずの五樹の心情から、過去の事故の概要が判明。
帰ったら蔵女が夏生との行為や心情を全て把握している様子から、蔵女は町の中で起こっていることならば何でも把握できる様子。
第三夜(第一殻の第四夜)になると世界はまた赤く染まり第一夜に戻った。
同じようにまた町できりこに出会うが今回はきりこが来ていることを知っていたようだ。
前回は知らない様子だったのに今回覚えているのは蔵女の起こした行動の影響だろうか?
時折デジャブを感じている様子があるので無意識に覚えていた線もある。
買い出しに行く途中で出会った紅涙に蔵女が名乗ったことで、腐り姫伝説について、腐らせて食ってしまうかわりにその者の願いを叶えるという一説があることが判明。
その後またきりこと出会うが、きりこが初めて会った蔵女と面識があるように接していたので、蔵女の指先を刺した行動はそのためのものだったのかと思ったらまた今回も挿したので、そういうわけではないらしい。
青磁はやけに蔵女に驚いていたが樹里に何か後ろめたいことがあるのだろうか?
合流した清香が、五樹を帰らせるために家族を説得したいという伊勢を後押しして家に行くが母親に逆に説得させられる。(清香さんも簡単に意見を変えて絶賛。刑事なのにけっこう短絡的な人らしい…)
一人で帰ると言って出て行ったきりこを五樹の姿で送った蔵女。
きりこの願望を叶えて腐らせることが目的なのだろうか?
気を良くしたきりこは次の日、もう一度母親の説得に行き、五樹の選択に任せるという答えを得るとそこにまた五樹(蔵女)から連絡が入り、カフェにいる本物の五樹と合流。
賛同を得られるわけもなく、一人悲しみにくれているところに蔵女が幻想を見せ、満たされたことできりこは赤い光となって尽き果てた。
分かりづらかったがきりこの望みは五樹を自分に振り向かせたいというだけではなく、自らがそんな五樹に従うことで果たされるらしい。
そしてやはり蔵女の赤い爪を挿す行為は、夢に誘うために意味を持つもののようだ。
五樹にはきりことなった蔵女から先に帰って待っている旨の電話があり、今回も世界が赤く染まって第一夜に戻った。
蔵女の潤に対する好意的な反応から、潤も蔵女のターゲットになったように見える。
回想から母の芳野が誰かを殺そうとしている様子を、夢で五樹が樹里をむりやり犯す様子を見る。
芳野が父の健昭から一度も抱かれなかったことでよく似た五樹に劣情を抱いていたことから、五樹も潤も樹里もみんな彼女が生んだ子供ではないことがわかる。
恨ましそうに芳野が誰かの首を絞めていたのはそれが関係している?
さらに次の夢では樹里が五樹に淫らに奉仕している姿があった。
芳野が樹里を憎んでいたことを感じた五樹は、樹里を殺したのは芳野だと思い込み殺そうとする。
しかし、再び浮かんだ過去の記憶は、母の朱音を守りきれなかったのも樹里を拒みきれなかったのも自分のせいだと芳野に泣きつく父の姿で、五樹は樹里を殺したのは芳野ではなく自分なのではと結論づける。
次の日、蔵女の保護者が見つかったとリカルドが家を訪れ、引き止めるも虚しく離れることになるが、諦めきれない五樹は最初に出会った湖に蔵女を求めて駆けつける。
誘われたその場所で再び出会った蔵女は嬉しそうに「次こそ…逃さぬ…」と笑みを浮かべる。
世界は赤く染まり、意識を失った五樹を抱えて樹里が微笑む。
蔵女の中に樹里の意識はともに存在している?
第三殻 ~郷愁編~
自分が時間を繰り返していることと蔵女が腐り姫であること自覚した五樹は、夏生に電話して腐り姫について調べることに。
一日目は成果を得られず次の日、調査のために迎えに来た夏生は蔵女に赤い爪を挿され、紅涙先生に話を聞きに行くもあまり進展はなし。
それでもその行動にデジャヴを感じた夏生に光明が見えた五樹だったが、伝承に固執する姿に記憶を取り戻す真剣さが足りないと突っぱねられ気まずい雰囲気に。
日が変わって夏生の代わりに青磁が訪れたが進展はなく、夏生に電話するも忙しいから明日の午前中迎えに行くと約束を取り付けられ、最終日を迎える。
一向に記憶を思い出さない五樹に最後の手段として性行為を強要する夏生。
それにより夏生を好きだったという記憶を思い出した五樹。
五樹の好意を利用して好きだった青磁を繋ぎとめようと関係を持ったことを、全て思い出した五樹に嫌われてから謝りたいという気持ちは夏生なりのけじめだろう。
でもそのエゴのために記憶を思い出さない五樹にイラつき、最終的に強要するのは悪印象の上乗りだった。
蔵女の影響のせいだと分かっていても、過去の過ち自体は夏生自身が起こしたもので、見ていて印象が悪くなってしまうのは否めない。
目的を達した夏目は赤い光となって消え、世界は赤く染まりまた繰り返す。
きりこが赤い光となって消えてから姿を現さなくなったので、消えた者はもう存在できないのかと思ったが、夏生は変わらず登場。(蔵女かとも思ったが本物のよう)
蔵女の姿に樹里を感じて反応を示すようになった芳野に蔵女は赤い爪を挿し入れる。
芳野は感情の制御が効かなくなるが、自分から全てを奪った樹里には負けられないと気を張る。
それでも次の日には正気を失って五樹に迫り、最後の日には潤を置いて二人で逃避行をして赤い光となって消えた。
同時に世界は赤に染まる。
蔵女の存在と繰り返される日常に苛立つ五樹。
樹里に似ている蔵女を毛嫌いしていた潤もまた蔵女をすんなり受け入れるようになっている。
蔵女を家族から遠ざけようと外へ連れ出すと例の犬に遭遇するも、クロだった犬は五樹を傷つけなかった。
五樹は追ってきた潤に八つ当たりをして殴られ、蔵女に会いに廃墟に行くと家族との過去を思い出す。
家族を、樹里を愛していたと言う五樹に、蔵女は五樹が樹里を犯した記憶を永遠と見せつけた。
日が変わり、青磁と夏生の幻想が現れ、失って現れた人達は偽物でもそれは理想的な姿だったことに気づく。
そして過去の家族が本当は歪な関係で、ずっと幸せな理想的な家族でなかったことも。
祭りの時の一時的な理想だけを直視し、あとはなかったことにすればいい
同意しない > 姿の変わったクロと、赤く染まる世界の中で幸せな過去の家族の姿を夢見ながら終焉を迎える。
同意する > あの時の思い出さえあればいいと塞ぎ込む五樹に、樹里と蔵女が現れて誘い込む。蔵女を樹里だと思い込み、性行為をしている間に世界は赤く染まりまた繰り返す。
同意するの続きで、嫌なこと(蔵女のこと、世界が繰り返していること)は忘れリスタート。
潤はまた以前のように蔵女を煙たがっているが、本物ではない夏生は五樹の記憶を戻すことに執着が見られず、しばらく会えないと言われ動揺する五樹。
それでも残滓になってなお青磁にコンタクトをとって五樹のことを任せる夏生の行動力もあり、青磁と会って五樹は過去の断片を思い出していく。
五樹を犯した夏生と衝突する青磁、虚ろに自分の名前を呼ぶ母の姿。
過去を思い出しては傷つき、大切な人を徐々に失い終焉に向かって繰り返す世界に希望も持てない。
耐え切れず自暴自棄になった五樹に、過去の事件の際に塞ぎ込んでしまった五樹に何も言えず記憶を失わせてしまった後悔を払拭し、青磁がその心を繋ぎとめる。
世界は赤く染まり、五樹と青磁は東京に引っ越した。
とうかんもりは赤く染まったまま誰もいない抜け殻のようになっているが、五樹は数ヶ月に一度数日の旅行に行っては町をまわって帰ってくるようだ。
故郷に未練を感じ続けている様子がよくわかる。
再び始点に戻ると蔵女はひどく衰弱していた。
潤が蔵女のことを嫌う様子はまたなくなっていて、潤は雨の中外に出て行った蔵女を探して連れ戻してはお風呂に入れてやり一緒に寝る、とひどく世話を焼いている。
しかし、夜を明けると五樹との夢を見せられ、蔵女にも言いえぬ不信感を抱いていた。
夜には樹里の存在に怯え部屋に閉じこもったが、その恐怖は樹里から五樹絡みで散々嫌がらせをされた過去や、事故を装って芳野さんを殺そうとした過去があったからのようだ。
次の日、恐怖を憎しみが埋め尽くし潤は蔵女を殺害する。
樹里の恐怖から解放され、潤は五樹の妹として生きることができると喜んだが、行為のあと五樹が微睡んだ数分の間にその命は失われた。
(殺されたのは実は潤で生きていた蔵女が見せた幻影だった線も考えたが、後に、人間には殺すことのできない存在である蔵女は死んでおらず潤を殺したことがわかる)
潤までも失ってしまい、五樹は人の存在を滅ぼす蔵女を絶対に許さないと思うと同時に、蔵女の存在と魂を滅ぼすと誓った。
第四殻 ~蔵女編~
■ 過去
前回で五樹には蔵女と同じ人外の力が覚醒し、その際に星は滅んだようだ。
ただの力の塊となった忌まわしき終焉をもたらす神。
復讐のためそのまま消滅させてしまうか迷ったが、その存在の矮小さに五樹は蔵女と呼んでそのあるべき形をとらせた。
五樹の記憶から蔵女は時間を跳躍し、それを追って辿りついたのは過去のとうかんもりだった。
両親の二人は拾われてきた子で、朱音の予言もあり秘密裏に蔵に閉じ込められ、虐げられていたところを健昭が朱音を連れて逃げたこと。
健昭と赤ん坊の樹里を抱いた芳野が新しい家に移り住んだ時のこと。
当時五樹の一番の友達だった子犬のクロが、いつも邪魔者扱いしていた樹里が散歩に連れて行った先で事故に遭って死んでしまったこと。
健昭と朱音の死を誘発したのが樹里で、芳野が樹里を殺そうとしていたこと。
時間を飛んで真実を知っても、五樹のたった一人の妹である樹里を守るという意志は変わらなかったが、辿り着いた先で、樹里に本物の五樹ではない抜け殻だと断定される。
衝撃を受けた五樹は、湖で樹里と二人愛し合って死んだ記憶を思い出す。
すでに死んでいた五樹は蔵女に命を与えられ、幾度となく繰り返す4日間を経て蔵女と同じ存在へと誘われたのだ。
神となった五樹はその事実を知り、なお生き続けるしかない滑稽さに蔵女と同じく孤独を感じた。
蔵女を求めて数多の時を駆け、見つけた母の予知の力が蔵女への道しるべとなった。
■ 未来
蔵女とは、繰り返した夏の4日間から1年後のとうかんもりで再開した。
お互いがお互いを探し求め、膨大な時間を経て。
五樹によって心を持つ身となった蔵女は以前とは違って人間味が感じられる。
人を腐らせ、その精髄を得ることで存在し続ける宿命を持つ身に心は必要ない、と考えていたようだ。
町に降りると、電話で母の声を聴き、潤の姿も見ることができた。
潤だけは未来がなかったため、蔵女は腐らせていなかった。
そのため、抜け殻ではなく本物として生き生きと音楽の関係する道を目指して生きているようだ。
蔵女と関係を持ち、未練がなくなった五樹はこれからのどうするかを決める。
END 1
自らの存在が多くの犠牲を出すことを承知で、それでも蔵女と共に生き続ける。
赤く染まった生まれた星を見納め、命ある星へ向かう。
END 2
犠牲を出して生きることも、どちらか片方が生きてまた孤独を味わうことも良しとせず、二人揃って命を断つ。
蒼空を見上げ、お互いが「ありがとう」と言葉を残し赤い光となって消えた。
TRUE END
力も記憶も全てなくして真っ白な状態でやり直すことを提案。
二人の新しい人生が始まる。
岸に打ち上げられた二人をそっくりだと言っていたことから、同じ家系の者に拾われたと思われる。
いろいろ想像はできるが、それがどういった意味を持つのかはプレイヤーの想像に委ねられた形だろう。
― 総評 ―
4日間を繰り返すループ物であり、ループしたことによる変化や、思い出される記憶の断片から、作品の設定や今後の展開を想像させられるのは魅力的。
分かりやすい作品ではないし曖昧な部分も多いが、考察ゲーとしてプレイする価値がある。
インモラル・ホラーADVというジャンルの通り、この物語のヒロイン達は、従姉・義母・義妹・実妹と5人中4人が家族間の繋がりがあり、かつ愛の形が常軌を逸している。
さらにこのテーマをより際立てたのが同じ姿を持つ蔵女と樹里の二人。
蔵女は繰り返される時間の中で好きなように世界を作り変え、自らも行動を起こしてヒロイン達の想いを助長していく。
想いを叶え、満たされたことで、赤い傷跡が広がって腐って消えていく様はホラーそのもの。
樹里は、始めは優しく病弱で内気といった印象があったものの、真実はまるっきり違い、兄を手に入れるためなら
実の親も平気で殺す。
仲睦まじい者は子供でも脅迫。
兄が好いているペットの犬ですら事故に見せかけて殺す。
と病的なまでに五樹だけを真っ直ぐに想う狂愛の持ち主。
五樹にだけは微笑みを絶やさず、裏で行った残虐な事実も隠そうとせず、全ては兄のためとでも言うように悪びれる様子もない。
最終的に五樹と婚礼を挙げながら共に死ぬことで、永遠に五樹を自分のものとした。
ここまで徹底した愛の深さを見せ付けられると本当にゾッとする。
常に謎が付き纏う独特の世界観。
腐り姫の少女と妹の関係。
背徳的な愛による幸福と死。
異色な要素を組み合わせ、イラストと音楽も相まって他のゲームには出せないこの作品の味がしっかりと出ている。
いくつか不自然なテキストもあったがこれだけの濃い内容だったので些細な問題。
簡単にまとめると、自身で死ぬ事すらできず滅ぼすことしかできない人造生命体の蔵女が、死んだ五樹を同等の存在へと誘い、誘われた五樹がどのような選択をするかという話。
サブストーリーとして、何よりも兄への愛を優先する異常な妹と、そんな実の妹を愛してしまう異常な兄の近親愛。(一応生きている時に性行為をしたかは明確になっていない)
といった感じでしょうか。
↓↓↓ 個人的見解 ↓↓↓
生きていた樹里は既に蔵女の能力下にあったのかもしれない。
元々樹里が兄に好意を抱いていて奥底に独占欲を持っていたとすれば、蔵女の力が働くとどうなるでしょう?
こんな狂気的な妹になってもおかしくない気がします・・。
明らかに異常な数々の行動もそのせいだと考えれば納得もいくでしょう。
そして五樹自身も実の妹を愛してしまう異常性があったことを考えれば影響下にあったと思ってもおかしくありません。
湖で二人死んだ場面は死んだ後の描写はなかったので曖昧ですがそう考えると本懐を遂げた二人はそこで腐っているはず。
五樹という存在に同じ存在となる適正を感じた蔵女は五樹の抜け殻だけを繰り返す世界に連れて行き、樹里の姿に変わって滅びの神へと誘った。
『抜け殻』という存在は、蔵女によって腐らされ存在を失った者しか作中で存在していない。
そのことからも五樹も腐っていると考えていいかもしれないが、そこに関連があるとは言い切れないので断定するには弱い。
個人的にはしっくりきているが断定する材料がないし何とも言えない。
腐り姫読本読みたい・・・。
気になった点
・滅ぼすという意志から蔵女と同等の神という存在になったにもかかわらず、蔵女への復讐心が消えていること。
自分が既に死んでいたことなど衝撃の事実もあったろうが、そこから自分を繰り返す世界に誘い、大切な人達の存在を奪った蔵女を絶対に許さないと誓った気持ちはどこへ行ったのか。
蔵女という存在への憎しみが、孤独を共にする仲間意識へと変わる気持ちの変化。
これがすんなりしすぎていたように思う。
個人的にもうひと押し欲しかったのは、インモラルホラーというジャンルが日常と結び付きづらいのが仇となったのか、作品を終えてメッセージ性があまり強く感じられなかったところ。
ただ作品の作り方が優秀なので楽しんでプレイできたのは間違いないし、こういった作風の作品にそれを求めるのは違うような気もする。
何か胸に強く響く、作品を通して訴えかけてくるようなものがあればさらに評価される作品になったのは間違いないと思うが、これはこれで完成されているようにも感じる。
-腐り姫読本より補完-
クロ → 五樹の願望から実体化し、魔物となった。
秀人 → 芳野を愛人とし、間に潤をもうけた。芳野と健昭との間を取り持った建築家。潤は芳野の子ではないと勘違いしていたが、健昭との子ではないだけであって自分で生んだ子供で間違いない。
芳野 → 樹里への憎悪の裏にはありのままに振舞うその姿に強い憧れがあった。
ゲーム序盤~中盤の樹里の幻影は五樹自身が創り出した幻(五樹の心の影)
樹里の狂愛はあくまで個人で育んだもので蔵女の影響はない。
五樹の樹里への愛情は、両親からの愛情を得られなかった分、かけがえのない肉親として大切にしたいという想いが強い。
心中したシーンは決して愛し合っていたわけではなく、罪を重ねていく樹里を自分が何とかしなければならないという兄としての行動。
蔵女という存在が生まれた星にも設定があり、触れた相手と精神的にも接触することができるテレパシー能力を持つというバルカン星人のような文明から創られた。
お互いの意識や知識の共有 → 安楽死願望の共有
リフレーンでのシーンは健昭と朱音が宗家に拾われるシーン。
健昭=五樹の生まれ変わり
朱音=蔵女
朱音は茂晴から性的虐待を受けていて、五樹はそれにより身篭った子供。
樹里は朱音と健昭の子供。
朱音は生まれ変わりである健昭よりも五樹そのものを欲し、それを邪魔者とした樹里が排除を画策。
朱音は既成事実を作らされ、それを元に焚きつけられた健昭の手によって殺される。
樹里との入水心中から五樹が抜け殻となって目覚めたのは蔵女の意図あってのものではなく、朱音の血を強く引く者として奇跡的に起こったことらしい。
蔵女の流れ
1. 流れ着いた地球で五樹に蔵女と名付けられる。
2. 五樹に興味を持った蔵女は時を遡って接触し、能力を覚醒させるべく大切な人を腐らせていって刺激する。
3. ついに目覚めの瞬間に立ち会うも反動で引き離される。
4. 五樹を求めて時空を放浪(その際の痕跡が「腐り姫」の伝説として語られている)
5. 五樹と再開するも、永い旅路で心を得た蔵女は犠牲なくして生きられない哀しい自らの生に終わりを求める。
五樹は神となったことで時空を超越しているため、蔵女が地球に流れ着いた段階で接触することが可能。
芳野と健昭の流れ
1. 桐生の愛人として潤を出産
2. 桐生の仕事繋がりで健昭と出会い、惹かれて交流を持つ(病弱な朱音に代わり五樹と樹里の育てる)
3. 芳野の想いを察した桐生とは穏やかに離別し、とうかんもりを離れて東京で潤と母娘2人で暮らす
4. 樹里にそそのかされるままに妻の朱里を殺し、罪に苦悩する健昭を支えたいと思い再婚を申し出る
5. 新生活を始めるも、樹里の狂気が芳野と潤に向いてしまう。1年持たず健昭は心中を企て果たせずに自殺。
6. 五樹が樹里と心中自殺するも1人記憶をなくして生き残り、芳野は健昭と樹里の心中として事件を隠蔽。
7. 健昭の面影を感じる五樹を男として意識するようになる。理想の母を演じて理性を保っていたが、蔵女によって願いが果たされてしまう。
腐り姫は曖昧な部分が多い作品だが、あえて全てを説明することをしていないとライターの星空めておが公言している。
理由としては、スマートではない、プレイヤーの好奇心を奪う、物語のリズムを阻害してしまう、など。
郷愁を感じる田舎の落ち着いた雰囲気と健全な日常から一変してじわりとくる恐怖の二律背反が作品の中で見事に調和しているのも、原画の中村氏や背景の米谷氏の力もさることながら、めておさんの制作方針が功を成したように思う。
豆知識:五樹の部屋は魔女の宅急便の屋根裏部屋がモデル