死生観を絡めてストーリーが描かれた古き良きゲーム 短編としても魅せるものがあるし全体を通しても楽しめる作品
第五章過去編の続き
銀糸を運ぶ久世(領主)と、都への同行を求めた石切(皇族の姫)。
久世はそれを作った大井跡の意向もあり、自然の理を曲げるものとして封印することを望んでいる。
石切の姫は人々を幸せにするために使いたいと望む。
部下の五行博士は私欲の為に使うことを望む。
峠の渓で過去に助けた女が疫病にかかって苦しむ姿を見かけるが、銀糸の力を安易には使えないと見殺しに(第五章の姉)。
・憶測
その後、五行博士の目を欺く為に商社の荷物に紛れ込ませて銀糸を都から山里に移し、神社に奉らせることに決まる。
第一章 逢津の峠
足の腱を斬られ、慰み者にされて闇に心を閉ざした名もなき少女と弱肉強食に生きる野盗の男の話。
月の光に向かって村を出た少女は、峠で男に出会う。
男は少女の雰囲気に魅せられて見捨てられず、弱者である少女を殺せない自分に苛立ちを覚える。
過去に親友に裏切られ、疫病にかかった両親を見捨てて自らも殺されかけた経験を持つ男は、毒消し草を探してこいという命令を律儀に守って自分を救った少女に信頼を寄せる。
その頃、銀糸を運んでいた商人が通りかかるが、男によって殺され、少女は朱糸を拾っている。
やがて男は無抵抗な弱者を斬れなくなり、獲物の命を見逃がしたことで峠を通る人が減ってしまう。
それでも少女と共にすることを止めず、握り飯を与え続ける。
やがて銀糸を探しにきた者達が現れ、男は奇襲をかけるがその際に少女が背中を負傷。
助けるために村に降りて薬を奪った際、命乞いをした幼い少女の口約束を信じずに殺すと、騒ぎを知って追ってきた村人に男は殺されてしまう(BAD END)。
信じると、助けを呼ばれ村人に襲われるが、生きながらえて少女の元に戻る。
洞窟で1人息絶えた少女は、死ぬ直前に銀色に光り輝いた朱糸に生きた証が欲しいと願う。
(少女が拾い、髪を結んでもらっていた朱糸こそが、何でも願いが叶えられると言い伝えられている銀糸だった)
少女は戻った男によって渓に埋葬され、好きだと話していた花の名と同じ「あやめ」という名を与えられる(TRUE END)。
第一章と第二章の間
久世と石切は商社が襲われた失われた銀糸を探しに、再び都に行く際に通った峠に。
洞窟で銀糸を回収するが、五行博士の使いに石切が襲われて致命傷を負う。
銀糸はあらゆる願いを叶えるが故に争いを生んでしまうからこそ、朱色をしているのだと考える久世。
それでも、結局自らも石切を助けるために銀糸の力に頼ることとなる。
・憶測
回収された銀糸は当初の計画通り神社に奉られる。
その際、朱色から銀色に何らかの方法で変えられ、琴の弦として偽装される。
第一章であやめが願った際に銀色に光ってからまた朱色に戻っている為、石切を助けた際に力を使ったことで銀色に戻ったわけではないと考えられる。
第二章 踏鞴の社
世継ぎ争いをする兄2人から厄介払いのように山里の調査を命じられた久世家の三男・頼人と、そこでの住居となる神社で手伝いをして生きる狭霧の話。
周りとの関係に苦労してきたため用心深く物事を警戒しやすい頼人と違い、裏表なく無邪気に接してくる狭霧。
その純粋さに関心を持ち、心の優しさを知っていく。
10年前の洪水で両親を亡くして神社に引き取られた狭霧は、幼少期に役立たずと周りの子に虐められていた。
しかし、亡き両親の生前の行いから訳も分からずありがとうと礼を受けた狭霧は、それをきっかけに自身も変わろうと決意して今に至る。
頼人は一般の民の実状を知り、洪水を防ぐ堤防の完成目途が立ったのを見て梅雨の前に都に帰ろうとするが、狭霧が祈祷の為の人柱であることを知る。
それが選ばれた自分だけにしかできない崇高な役目だと受け入れ、晴れ晴れとした笑顔を見せて自分のように傷つく者を出したくないと言う狭霧。
頼人は、狭霧に幸せな日常を与えてあげたいと思考するが、狭霧の決意に口を挟まずに見守ることを選択すると儀式はそのまま行われ、真相を知らぬまま都に帰ることとなる。
その後、村が洪水に見舞われることはなくなった(BAD END)。
共に都に行かないかという提案を告げると、役に立つことを証明したいという前向きな意思によって断られるが、真相を知ることに繋がる。
狭霧が蔵から出し、夜に奏でていた琴の弦の1つこそが銀糸であり、里の皆がずっと幸せに暮らせるようにと願っていたことがわかる。
儀式は終わり、都への帰り道で狭霧が生贄に選ばれたのは仕組まれていたことを知った頼人は村人に激高し、戻って狭霧を助けようとする。
しかし、村人に追い返され、銀糸に八つ当たりして琴を壊したことで水害が発生。
その隙に頼人は狭霧を助け出すが、真相に気づきながら役目を受け入れていた狭霧は、助けられてなお川に身を投じて自らの命を捧げる。
奇跡的に水害は収まり、狭霧は自らの役目を果たしたことになる(TRUE END)。
第二章と第三章の間
・憶測
琴が壊されてむき出しになった銀糸は後に首飾りの紐となって残っている。
願いが叶うという伝承が伝わっていたことからおそらく頼人経由。
神社ではなく一般家庭に移ったことからも、その後の人生でその力の言い伝えと共に大切な人に受け継がれたのかもしれない。
首飾りになった時期は不明だが、朝奈の母が思い入れのある石に繋げて首飾りにしたと考えるのがしっくりくる。
第三章 朝奈夕奈
両親が亡くなり、残された喫茶店を切り盛りする姉妹の話。
姉の夕奈は妹の朝奈にとって尊敬できる憧れの存在だが、責任感が強く1人で悩みを抱えてしまう性格。
そんな姉には支えになる人が必要だと、朝奈は何でも願いが叶うという母の形見の首飾りに素敵な出会いがあるようにと願う。
そこで現れたのが陸軍に所属する志朗。
朝奈は2人の距離を近づけようとさらに願いを重ね、意図せずに志朗が軽傷を負うことになってしまう。
その後も願いは叶うが朝奈の望まない方向へと事態は進み、志朗が夕奈よりも朝奈に気をかける展開に。
張りつめていた感情が緩んでいたところを裏切られた夕奈は病んで嫉妬し、優しい朝奈は自分を責める。
首飾りに誰か助けてほしいと願った朝奈は、夕奈の異常に気付いた志朗によって助けられる。
しかし、それがさらに関係は悪化させ、近々死ぬと感じた朝奈は首飾りの存在を志朗に託すことを決める。
志朗は効果があると勘違いした石の方を預かり、銀糸は形見として朝奈に残され、それは夕奈の手に渡る。
その後の志朗を手にするために手段を選ばない夕奈を見かねて、朝奈は遂に自分の意思で反論。
店内で口論し、お店の経営に関わる醜態を晒したことで夕奈に冷静さが戻り、一度は仲直りするが、銀糸では願いが叶わないという勘違いを正直に告げられたことで再び瓦解する。
逃げることはせず、夕奈からの仕打ちを我慢して家族の繋がりの証であるお店を守りたいという朝奈。
2人は全てを包み隠さず夕奈に話し、首飾りの力で事を収めることに決める。
朝奈と結ばれなかった場合は2人で夕奈の元を訪れ、石に願った志朗の願いは叶わず、銀糸に願った夕奈の願いが叶って朝奈も志朗も殺されて死んでしまう(BAD END)。
結ばれると、眠る朝奈を巻き込みたくないと志朗は1人で夕奈の元へ。
遅れて駆け付けた朝奈が夕奈に殺されそうになったことで、無意識に夕奈を剣で突き刺す。
死の間際になって夕奈は正気に戻り、志朗に銀糸を渡して朝奈の優しい姉として息を引き取る(TRUE END)。
第三章と第四章の間
・憶測
形見としてその後も大事に保管され、何らかの経緯で水辺に移ったとも考えられるし、銀糸の力に気づいた朝奈と志朗によって水辺の地に捨てられたとも考えられる。
その後、「あやめという名を持った者の為」という本来の込められた願いから銀糸は現代のあやめの手元に。
第四章 銀色
・現代編
引っ越し先で道に迷って喫茶店に入った真也と、そこで出会った喋れない女の子の店員あやめの話。
喫茶店に通うようになった真也は仲を深め、休日にあやめのお気に入りの場所だという公園に。
花を咲かせていないあやめの青草が茂っている共通点から、舞台が過去編の未来であると想像される。
真也はあやめのために内緒で手話を勉強し始める。
幼い頃に公園で見付け、取られても捨ててもいつの間にかあやめの元に戻ってきた銀糸。
嬉しくて告げたその事実を母は信用せずに怒るばかりで、一時の感情からその存在を否定したことで当然母は倒れて死んでしまう。
その後、大人達に執拗に事情を聴かれたあやめは話したくないと願い、言葉を喋れなくなった。
何でも願いが叶うという御伽噺を父に聞いたのは後の話。
カウンセラーに人に頼る自分を否定されたあやめは思い詰めて真也を避けるようになる。
1人で暇を持て余した真也が、その夜に帰り道の公園で茂みの人影を無視すると襲われているあやめ助けることができず、その事実を知らぬまま出会う機会は失われる(BAD END)。
様子を見に行くと襲われるあやめを助けることができる。
その後、あやめが望むならば今のままでもいいと線を引かずに受け入れた後に、大切な友達だと告げるとあやめは別れを決意して離れていく(BAD END)。
好きだと告げるとあやめは声を取り戻す理由を真也に見い出し、そのままの日々が続いていく(HAPPY END)。
・過去編
領主である久世の苦肉の決断により、秘伝(銀糸の力)を頼りに里の旱魃問題の解決を頼まれた大井跡。
幼い頃から思い悩んだ時に景色を眺めに訪れていた人気のない水辺で、同じ理由からそこに来ていたあやめという娘に出会う。
里の民にも頼られ、使命感から本腰を入れて銀糸の制作に取り掛かり始めた大井跡は、水辺で再び出会ったあやめに手伝いを申し込まれる。
頼るばかりで腰の低い周りとは違い、自らの意思で接してくるあやめに好感を持った大井跡はそれを受けることに。
銀糸を作るためには最終的に自らの命を代価として失うことになる。
その事実を知っても大井跡の妻になりたいと口にしたあやめ。
お互いの気持ちを知り、2人で逃げようかとも考えるが結局役目を放棄することはできず、数日ばかりを夫婦として過ごして大井跡はその命を落とす。
第五章 錆
4章のその後(過去編)
旱魃に苦しむ里のとある一家で両親が自殺し、妹のこずえを連れて里を離れていた姉。
そこに一歩遅れて銀糸の力で雨が降りだす。
幼い妹を守る為、峠で男に身体を差し出して食料を賄い続ける姉。
妊娠して倒れてしまうが、この時、銀糸の存在を今後どう処置しようかと悩んでいた久世が通りかかったことで助けられ、元気な赤子を産んでいる。
妹と共に赤子をあやめと名付け、その後も姉は妹と赤子の為に奮闘するが、疫に感染してそれもできなくなり2人の元を去ってしまう。
食べ物が尽きたこずえは、意味も分からず姉の真似をして握り飯を得る。
助けを求めて村に降りたこずえはそこで息絶え、赤子は名前が伝えられぬまま男たちに囚われる(第一章に繋がる)。
4章で大井跡が死に至るまでの話
死ぬ前に水辺の様子を見に行く約束をした2人。
あやめは誰にも見せたことのない手作りの着物を着て大井跡を隠れて待つがすれ違い、小屋の銀糸を前にして大井跡の代わりに自らの命を捧げる(あやめの血にとって銀糸が朱色に染まる)。
遂に一輪だけ咲いたあやめの花を2人で見ることは叶わず、戻った大井跡は銀糸を完成させる為、身を捧げてあやめの傍で命を落とす。
4章のその後(現代編)
あやめはカウンセラーの先生の会話を立ち聞きし、自分の治療が諦められていることを知る。
消えかけていた周りとの線を再び感じるようになってしまうが、銀糸にそれを消して欲しいと願ったことで、それまでに銀糸に込められてきた人達の想いがあやめと真也に浮かび上がる。
あやめは水辺で待っていた真也の元に移り、その視線の先には咲いていなかったはずのあやめが一斉に花を咲かせた光景が。
失われていた声も戻り、銀糸はその役目を終えたように消えてなくなる。
時系列は4章(過去編)、5章(過去編)を初めにほぼ順番通り。
銀糸が全てのルートの記憶を有していたことから、全て同じ銀糸に関わる話。