ErogameScape -エロゲー批評空間-

kaza-hanaさんのairy[F]airy ~Easter of Sant’Ariccia~の長文感想

ユーザー
kaza-hana
ゲーム
airy[F]airy ~Easter of Sant’Ariccia~
ブランド
RococoWorks
得点
70
参照数
173

一言コメント

伏線が伏線にならないまま終わる。不思議な世界観とキャラたちの雰囲気を楽しむゲーム。いちばん可愛かったのはモニカ、ゲームの印象としても残る強いキャラ性が評価できるのはヘレン。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

世界メモ

・各曜日に墓守が存在し、夜に妖精と曜日を賭けたゲームが行われている。
・最終的な勝敗で、墓守は戦績に応じて門の開閉率を調節できる(自身が通れる隙間を空ければ相手の世界へ行くこともできる)。
・門を通過する存在の大きさにより、開いた門は再び閉じていく。
・本編の世界は過去に土曜日が奪われている。
・Ariccia(アリキア)からcが奪われてAricia(アリシア)になっている。
アリシアの森の神木は聖アリキア(サンタリキア)と呼ばれるようになり、年に一度のサンタリキアの復活祭では聖霊(妖精)が集まる。


エレモ

アルマンドの養子。
失踪したアルマンドの代わりに火曜日の墓守を引き継いだ。
夜にカードで妖精界の住人と戦う門番。


ヘレン

湖に裸で倒れていた少女。
村長ガスパーレの親戚筋で、フォルトの娘。
人間と妖精の子で半妖精の状態。
正体はランタンの精。
目覚めてから火曜日の墓守でエレモのパートナーを務める。
その後、エレモが気になって実体化した。
近々、人間になるか完全な妖精になるかを選ばなければならない。
人間になる場合はエレモの傍を離れて故郷へ戻ることに、完全な妖精になった場合は自分自身が変わってしまう。
お互いの好意を確認し、人間としてエレモの傍にいられる道を探した。

アリシアの森は妖精に対しての力が強く働く場所。
仮に人間になる選択をしても影響が及んでしまう。
そのため、両親はフェレンティーノへと引っ越している。
その事実を知ったヘレンは自ら妖精になることを選択。
エルモは妖精になったヘレンを変わらずに愛し、これから訪れるであろう苦労から守り続けることをサンタリキアに誓った。


コレット

エレモの幼馴染。
ブランディーヌを姉に持ち、家には7年前に姉がアリシアの森で行方不明になった際に連れてきた妖精のハラペーニョとタベルノが住み着いている。
エレモに好意を抱いているのがばればれなツンデレ系。
性格は優しくて頑張り屋だが、頑固で意地っぱり。
普段は車椅子で生活しているが、エルモの影響で早く1人で歩けるようになりたいと思うようになる。
コンプレックスを自分の力で克服したいと空回りし、姉にも嫉妬してしまうコレット。
しかし、温かく見守るブランディーヌの優しさと、サラの助言もあってエレモの方からコレットに頼る姿勢を取ったことで考えを改める。
復活祭では行き違いから司祭の役目を代行の2人組に譲ることになるが、無事に恋人として儀式の時を迎える。
ハラペーニョとタベルノの為を想ってコレットは妖精の国への行き方に興味を示すが、突然音沙汰もなくいなくなった2匹。
不安が募る中、帰る家はここだと他の妖精たちを連れてコレットの元に帰ってきた。


モニカ

ハムとチェリーを連れた旅芸人。
訳あって交渉人に追われる立場であり、アルマンドを探している事情通な少女。
チェリーと共に妖精の国に帰ることを目的としている。
正体は火曜の夜にエレモと戦っている火曜の妖精。
妖精の世界では火曜以外の全ての曜日が奪われている。
現状をどうにかしたいと思っていたモニカは、過去にアルマンドの提案を呑んでチェリーに協力し、大差で勝利。
それによって門には大きな隙間ができ、それを閉ざすためにモニカはチェリーを追って人間の世界へ、アルマンドも妖精の世界へと門を通過した。
1対2という不利な戦いをあえて申し出たアルマンドは、全ての曜日を巡ることで世界を自由にしている七曜の王に挑もうとしたと推測されている。

過去の事実を思い出し、帰る術がないという現実を知ったモニカは、復活祭が終わると次の町へ旅立とうとする。
引き止める言葉がでないエレモだったが、妖精の発作にかかったモニカを看病して想いを伝える。
ランタンであるヘレンは身を引いてモニカは戦いのパートナーに。
モニカは負けることで元いた火曜の妖精界に帰れることに気づくが、エレモの傍に居続けることを選択する。


サラ

10年前にエレモが倒れていたところを拾ってくれた少女。
屋敷に運び、身寄りがなく施設に運ばれることを知って仲良くしたことで、領主の母にエレモが嫌われてしまったことを気にしている。
母が厳しく、あまり自由がない上にエレモとは必要以上に関わることができない。
現状を諦めているサラと、サラの立場を気にして動けないエレモ。
その関係をどうにか改善したいと考えていたコレットは、エレモにどうしたいかという気持ちが大切だとアドバイスする。
お見合いの話を知ったエレモは一歩踏み込んでサラに手紙を、サラも自らの気持ちを知って欲しいと手紙を書き、交換する形に。
その後、エレモはサラが夢と間違えて口にしたリッカルドを想い人と勘違いしてしまう。
リッカルドは、エレモが屋敷を去った時にサラにあげた人形に付けられた名前。
サラがお見合いを断っても好意を伝えられないエレモだったが、今日中に告白することを条件に、コレットからその事実を教えられる。
エレモの気持ちは受け止められるが、家の方針に逆らえないサラは断ってしまう。

モナ・ヴァネッサが過去にエレモを屋敷から追い出したのは、当時の権力者だった両親の意向。
反対を押し切って結婚した夫である当時の火曜の墓守が突然消えたことで、両親はよそ者に対してさらに厳しくなっていた。
両親が亡くなっても急に態度を変えることができずに振舞っていたが、思い直して全てを告白する。
復活祭の夜、家の離れで塞ぎ込んでいるサラを訪れたエルモはそこで不思議な光に遭遇。
周囲ではいつの間にか1日経過しており、サラは水曜の番人に選ばれていた。
ヘレン・モニカの協力とコレットの支えもあり、実力を付けたサラは見事に初戦を勝利。
エルモとの関係も進展する。


総評

伏線なげっぱなし雰囲気ゲー。
いくらでも話を広げる要素があるけど未回収のまま物語が終わっている。
キャラに関してはヘレンの底抜けの明るさとモニカの可愛さが目立った。
最低限の設定だけで具体的なことが語られていないが、世界観の雰囲気とキャラは良かったのかなと思う。
ただ、サラルートでのモナ・ヴァネッサにしてもそうだしコレットにしてもそうだけど、本編での行動を取る切っ掛けとなった葛藤が描かれておらず、心情描写が足りないのがもったいなかったかなと思う。