世界観を構築したロミオの手腕が素晴らしい。 評価がこの程度で留まってしまっているのは長すぎるのとKeyだからだろうか。 わかりやすい泣きゲーや奇抜な伏線を求める人より作品に深みを求める人にお勧めできる。
・共通ルート
主人公の瑚太朗が毎晩感じる怪奇現象を霊の仕業と思い、それをオカ研部長の朱音に相談、入部することとなる。
人と本気で向き合えず真の信頼関係を築けないことに悩む瑚太郎は、部活を始めると(あれ、これ青春じゃね?)と思って本格的に活動を開始。
小鳥を始め、ちはや、静流、ルチア、と行動を共にしてオカルトネタを探し、部員が増える一方で、夜に起こる謎の怪奇現象や不自然な森の実態に遭遇していく。
そんな中で特定の人物に瑚太郎が踏み込んで向き合っていくことで個別ルートへ。
・小鳥ルート
森の変色した川の調査に行き、新聞部の井上の行方が途絶えたことで、オカ研に学校側から圧力がかかる。
あっけなく解散し無くなろうとしている自分の居場所を守るため、井上を探索し手柄を立てることで部を存続させようとする。
しかし、入り込んだ夜の森で非日常の世界に紛れ込みそれまでの日常は崩壊。
他のメンバーは目の前からいなくなり瑚太郎は1人きりとなる。
仲間が消えた寂しさを胸に秘め、目覚めた特異な能力の使い道を考えていると数日後に小鳥が戻ってくる。
感極まって告白するも、非日常に瑚太郎を巻き込みたくない小鳥は距離を縮めない。
オカルトにはこれ以上関わらないと約束し、二兎は追わず小鳥を大切にしようと決めるも、井上が体内に飲み込んでまで守りぬいたメモリーチップを手渡され、その体験記を読んで好奇心を刺激される。
小鳥と会うことで決意を固めようとするも叶わず、ローブの男との遭遇でまたも異世界へ。
小鳥は瑚太郎を守ることで日常から姿を消してしまい、瑚太郎は脳に傷を負ったことで記憶に混濁があるも、吉野のアツい叱咤を受けて記憶を思い出して小鳥を連れ戻しにいく。
このルートでは小鳥視点で<鍵>はガイアの使者となっていて、小鳥はそれを守るドルイドという独立した魔物使い。
瑚太郎の能力は上書き能力含め、怪我の治療の際に小鳥が<鍵>のリボンを使用したためとなっている。(<鍵>が瑚太郎の部屋に行っていたのもそのため)
多くの秘密と小鳥の境遇を知った瑚太郎は、小鳥を傍で支えるために力を有効的に使う手段を身につけ、激化する森の闘争で結界が壊れ<鍵>が外に出ると、悲観する小鳥を前に指示を求めて回収に向かった。
<鍵>を連れ戻すも身を挺したペロが死んでしまい、状況は悪くなる一方で小鳥の精神も不安定に。
その後、結界は完全に意味をなくし瑚太郎は小鳥を連れて逃亡。
心が折れた小鳥に瑚太郎が魔物じゃなくて本人だと言い張った場面で
「ならどうして…
どうして、性格が正反対になってるんだよぉ!」
で私の涙腺崩壊。
<鍵>の救済が始まると現れた静流が<鍵>をライフルで撃ち抜き、供給路が途絶えたことで瑚太郎が小鳥の命を吸い上げる形に。
瑚太郎は小鳥に解除させて瀕死の人間へと戻り、それを背負って小鳥が泣きながら医者まで抱えていくシーンは胸が締め付けられる思いだった。
奇跡的に生還を果たした瑚太郎はリハビリを続け、いつまでも見舞いに来ない小鳥に会いに向かいEND。
・ルチアルート
生物を腐らせてしまう手を持つため生物に頑なに触れないルチアと、それを一般的な幼少期の心の傷と捉える周りの人間のすれ違い(主にちはや)により衝突が起こる。
解決するとアサヒハルカの怪談の話へ。
瑚太郎は怪談に怯える人を救う名目で解決を目指していたが、ルチアのジレンマと同じ種類のものだと気づき、アサヒハルカの汚名を返上することで間接的にルチアを救えると目的を改める。
ルチアも協力し探りを入れるも、アサヒハルカと接触し、その存在が自分と類似していることに怯えてしまう。
瑚太郎はアサヒハルカに対し、呪いではないと言い張って救うと断言するが、その認識の違いは覆りようがなくルチアは以前のように心の殻に閉じこもってしまう。
その後、瑚太郎によってアサヒハルカ=此花ルチアと暴かれる訳だが全く納得がいかない。
二面性があるならともかく、それまでのルチアの行動は全て演技だったということになるわけだが、会話が偽りなだけではなく、誰に会話しているわけでもないテキストも全て偽りだったことになる。
こんなのはトリックでもなんでもない。
それまでの話がプレイヤーを騙すための茶番でしかない。
さらに言うならルチアが多くの怪奇現象を起こした上で出る不自然さにはノータッチ。
お粗末過ぎる…。
瑚太郎は上書き能力でルチアの毒に耐性を付けたことで付けられた痣を消し、ルチアをもう一人にはしないと約束。
ルチア・西九条先生・静流がガーディアンに所属していること。
ガーディアンは、<鍵>の力で生命が滅ぼそうとしているガイアと敵対していること。
ルチアは地球という生命が死に、毒と錆の砂漠と化した千年後の世界へ送られるために行われた人体実験の生き残りであること。
ルチアの毒と超振動はその実験に適応した結果身に付いたものであること、などが分かる。
瑚太郎とルチアがデートで生涯を誓う幸せな時間を過ごす中、ルチアの毒が慢性的に悪影響を及ぼしたことで静流が倒れる。
ガイアが動き出しガーディアンが強襲を受ける一方で、国外のガーディアン最上層部は次世代人類プロジェクトの残党ブレンダを使ってルチアを連れ去り、<鍵>とパワースポット、そしてガイアをまとめて消滅させる瘴気兵器へと変え、核爆弾によって風祭市を犠牲に瘴気とともに全てを消し去る計画を企てた。
何度もルチアを生涯孤独にしないと誓い、好きだと言ってくれた瑚太郎の存在。
それはルチアがずっと望んできた存在でやっと手にした幸福だったはずなのに、瑚太郎がルチアを必要としている想いを信じ切れず、それが生きる意味に繋がらないほど心がすでにぼろぼろだったというのは悲しいですね。
正直、ルチアはほんとに気の毒だと思うしこうなってもしょうがないとも感じるけど、シナリオとしては解決方法が分かりきってたことを繰り返しただけというのは微妙でした。
デートの夜の告白はなんだったのか…。
陰謀を企てた悪は西九条先生らガーディアンにより政治的に粛清され、ルチアは瑚太郎と共に世界の核シェルターを転々とし、抑制剤の開発を待ちながらも幸せな生活を送るEND。
・ちはやルート
学校で迷いこんだ異世界でゴミから生まれたという「ぱに」と「ぎる」に出会っている。
ちはやの家のガーデニングでは咲夜のちはやへの忠臣を感じ、ちはやの素直な物言いで気にしていた人間関係の努力を認められた瑚太郎はちはやへ好意を持ち、この楽しい日常を大切にしていこうと強く思う。
しかし咲夜に警告されるも活動を続けた瑚太郎は、オカ研を連れて森へ行って異世界に紛れ、互いの立場を知って離れ離れに。
瑚太郎は保護対象としてちはやの家で暮らすことになり、元の日常を取り戻すこととちはやを守ることを目的に深入りしていく。
ガイア強硬派の魔物使いテンマは、瑚太郎を追い込むも助けに来た咲夜に魔物を両断され、強硬派自体も穏便派の朱音の摘発により瓦解。
組織を抜けて破壊活動を行うミドウは瑚太郎とちはやが制し、キリマンジャロを連れたテンジンは咲夜が倒してガイアに引き渡した。
朱音によりその後<鍵>が見つけられるが、朱音は<鍵>との接触で不安定に。
<鍵>を預かった瑚太郎にガーディアンから通告がきて交戦になるが、暴走した瑚太郎をちはやの力を一時的に戻した咲夜が止めてガーディアンを守ったことで休戦状態に。
この時に咲夜の記憶を共有し、元は上書き能力を持った人間という今の瑚太郎と同じ存在だったことも明かされる。
朱音を無力化して保護し、魔物化して出現した咲夜を瑚太郎がミドウの力を宿す超展開も含めて叩き起こし、問題解決。
咲夜は消えてしまうが、ちはやとの繋がりは残ったまま。
無事日常を取り戻してEND.
ルチアルートでも思いましたが、ちはやもルチア同様不器用なだけで普通にしてればかわいいですね。
ルチアは呪いのトラウマで人を遠ざけたことから、ちはやは親を失ったことによる無知から、全然経過は違いますが2人とも心は少女のままって感じがよくでていました。
・静流ルート
静流の実家に連れて行かれ、幼い頃に父と母の喧嘩を止めようとして静流の秘められた能力が発動してしまい、静流に関する記憶を忘れさせてしまった事情を聞いている。
森でのオカ研メンバーの立場の露見からの1ヶ月間の記憶がない瑚太郎は、江坂を訪ねて静流の元に行くも意識を失って寝たきりとなった静流と再開する。
その間、瑚太郎はガーディアンに非戦闘員として所属し、静流と共に生活をしていた。
静流が組織の戦闘員として別行動している中、森の方へ向かう小鳥を発見し、心配するあまり1人で深追いしてしまい魔物に襲われて瀕死の傷を負う。
静流が駆けつけるも能力は効かず、瑚太郎と魔物の契約を交わして命を共有したことで昏睡状態に。
その際に瑚太郎の記憶を奪っている。
静流に好意を持ちながらも自分の為に危険に首を突っ込んでしまう瑚太郎を見て小鳥は身を引くことを決意。
ここは曖昧だがこの先小鳥が出てこないことからも自らを犠牲に生命力を送ったことで繋がりが途絶えたと考えられ、その力で瑚太郎と契約で繋がる静流は異常が残りつつも目を覚ましたと思われる。
ガイアとガーディアンの抗争が始まり、ちはやは仲間との争いを嫌って咲夜と共にガイアを抜けるも、<鍵>はすでに世界に判決を下していて世界は崩壊を始めてしまう。
自分がすでに人ではない事を理解した瑚太郎は静流に力を戻して非難船に乗せ、上書き能力で姿が変わってでも世界の改変後に再び出会う可能性にかける。
船に乗らなかったのは、咲夜に聞いた話だけでは未知数で、自分を見失って暴走するなどの不安要素があったなどの理由だろうか。
ベタだけど避難生活中の静流の日記はじわっときた。
戻ってきた静流は一本の樹に瑚太郎を感じ取り、寄りかかる姿でEND。
・朱音ルート
オカ研メンバーがばらばらになった後、朱音がマーテル教会と繋がりがあることを知った瑚太郎は探っているうちに黒服にマークされ、連絡を受けて見かねた朱音に保護される。
自分の上書き能力や謎の少女が見える事情を話し、朱音の側近として傍に仕えることに。
<鍵>が瑚太郎に姿を現していることから執着を感じ取った朱音は、動けない自分の代わりに瑚太郎に<鍵>の捜索を依頼し確保しようとする。
しかし、ようやく<鍵>の捕獲に成功するも動きを察知したガイアの強硬派やガーディアンと三つ巴となった末に<鍵>は消滅。
星の救いであり、朱音にとっての救いでもあった<鍵>がなくなったことで朱音は目的を失うが、その後マーテルの聖女がなくなってその座を継いだ朱音は活動に奮起する。
対立した強硬派がマーテル教会から完全に分裂すると、政治的圧力がかけられ立場はどんどん悪化。
そんな中、聖女とは脳を魔物化することで継承する魔物使いのであること、朱音に代々の聖女の記憶が受け継がれていること、その執念によって自分が変わっていく不安を打ち明けられる。
朱音は聖女の使命を果たすために瑚太郎の下を去ってしまい、世界各地で天変地異が起こり始める。
瑚太郎は強硬派の真実(<鍵>を確保して抑止力として魔物の産業化を進め、個々の判断で生活の利便性を兼ねた上で、老後の平均寿命を減らすことで星を改善しようとしていた)を知り、協力関係となって救済からの避難に助力しながら朱音を探す。
探し出した先で瑚太郎は魔物に苦戦するも<鍵>を葬り、先に魔物使いの生命が限界を迎えたことで瑚太郎も助かった。
朱音は星と共に死ぬことを望んだが、彼女に生きていて欲しいと願う瑚太郎は、生きて人の中で罪を償うように訴える。
石の世界で罪の意識に怯えきった朱音を見て回復を望めないと感じた瑚太郎は、死刑制度に反対だと言う刑事と工作して朱音と共に永久追放の罪を受ける選択をする。
英雄であり反逆者である自らの立場を利用して追放という落としどころをつけ、事態を収拾させることで残された住民がこれから長く協力し合って生きていくこと、世界の境界に近づく未知の場所で情報を集めて人類の役に立つことで罪を贖うことを望んだ。
誰もいない社会のない世界へ2人、希望を探して歩き出すEND。
・Moon
篝を理解するために脳の理解を上書きしていく。
人である瑚太郎には限界があったが、篝という存在を理解し、篝の理論が命の理論であることを知る。
それは進化の歴史であり、篝は星が生存し続けるために可能性を模索する現象の形。
資源が尽きる前に滅びをもって再進化の機会を作る<鍵>というシステムの延長線上に生み出された星の生存欲求。
聖女の加島桜は人類の滅びへの執念から、篝という可能性を排除するために枝分かれする現世から干渉して魔物を放っていた。
この夜の世界の瑚太郎は、枝分かれする現世においてことごとく篝を犠牲にして未来を手にしたことから篝という存在への反作用として生まれた存在だったが、加島桜の干渉があったことで元の意識を維持できた。
加島桜が送る魔物に対抗するため、篝に許可をとって命の残滓からオカ研メンバーを復活させて篝が理論を完成させるのを待つ。
理論を形にしたものの可能性0から不確定にするのが精一杯で俯く篝に、軽い気持ちで瑚太郎がメッセージを送り上書きしたことで篝は命の理論を完成させるが、突如数え切れない数の魔物の侵攻が襲う。
咲夜も駆けつけ、全員魔物に殺されてしまうが救済による改変が終わるまで侵攻を防ぐことに成功し舞台はTerraへ。
最後に篝という存在が地球と月で別に存在していたことわかり、これまでの物語が月で起こっていたこと、篝が月を前提に理論を完成させようとしていたことがわかる。
瑚太郎のメッセージから自らの利己的な考えを改め、再び孤独になることを受け入れて地球を前提として理論を組み直すことで命の理論を完成させた。
月に生まれてしまった篝は、生命の生まれることのない星を進化に導くために地球から生命を奪ったのだろう。
そのシステムとしての使命を曲げる行為は、篝に自我が芽生えたことに他ならない。
だからこそ、そんな篝が生命のいなくなった月から地球に帰っていくアウロラを見送る姿は見ていて辛く感じた…。
・Terra
篝火に導かれた瑚太郎によって生命の未来を手にした世界の改変エピソード。
小鳥ルートで言っていたように、幼い頃の瑚太郎は本当に全然性格が違ったし、小鳥も幼いながら頭が良いゆえに周りを客観的に見てしまう冷めたきらいがあった。
UMAハンターとして森で魔物狩りをしていた瑚太郎の江坂らとの出会い、親に連れられて通うマーテル教会での朱音との出会い、小鳥との出会いとペロのエピソード、そして加島桜との接触と過去の出来事が明らかになる。
小鳥に感銘を受けて江坂の誘いに応じ、マーテル教会を抜けてガーディアンの一員になる道を選んだ瑚太郎は訓練を受けて経験を積む(この際に今宮と西九条と同期で知り合っている)
上書き能力の代償に不安を感じた瑚太郎は能力の使用を控え、落ちこぼれ扱いで初の鍵捜索作戦では見張りを担当するも今宮・西九条につられて持ち場を離れ、独断で朱音を助けるために動き、鍵に遭遇する。
ここで見つけた鍵を匿うことで不可避だった空白を回避する未来へ繋がる。
組織への報告を偽ったことでの居づらさと、そんな自分へ嫌気がさしたことから、瑚太郎は外国の傭兵部隊へ志願し日本を離れる。
罪のない子供を魔物使いという理由で射殺する現場を見てガーディアンを裏切り、ルイスの犠牲と上書き能力の行使で3人の子供を救うことに成功した瑚太郎は、意志を行動に移すことのできなかったこれまでの停滞を打破することを決意。
江坂の元に戻った瑚太郎は再び篝と接触し、世界の救済を回避するための手伝いとしてガイアとガーディアンの抗争に終止符を打つための行動を開始する。
慎重に動いていた瑚太郎だが、朱音と長居を見捨てられずに手を回したことが加島桜にばれてしまったことで、痺れを切らした篝は大きく落胆し瑚太郎へ頼ることを止めてしまう。
瑚太郎は使命を果たすため、勝手に動く篝を囮にして両組織に篝が見つからないように目を潰していき、連鎖的に発生していく戦いを、上書きを重ねることで打開していく。
最終的に篝に良い記憶(生命の力/種としての生き残る力、と私は解釈しました)を見せることができたものの間に合わず、瑚太郎は篝に剣を突き刺し、篝はそれを受け入れた。
上書き能力を行使しすぎた瑚太郎は大樹となって眠り、滅びを免れた風祭市では西九条の元に静流、小鳥、ちはや、ルチア、朱音の5人が集まった。
瑚太郎の指示によってヤスミンがインターネットに公表した、ガイア・ガーディアンの秘儀(命をエネルギーとして使う新技術)によって人類は再進化を遂げ、オカ研メンバーとその技術によって瑚太郎は魔物として再び誕生。
最強の魔物である瑚太郎が、オカ研の5人を連れて月へ飛んでEND。
篝の笑顔が眩しい。
瑚太郎がさらっと「万単位の力で、星を出るのがビッグな仕事」と言っていたことから、いずれ資源が枯渇する星から生命が生き残る力があることがわかる。
篝が重要視していたのは星の命ではなく生命が生き続けることであり、それを瑚太郎が実現したと思っていいだろう。
ふと疑問に感じたのは、篝火に導かれることで瑚太郎の行動が変化し未来が変わったのであれば、月ではなく地球でなければ命の理論が完成できなかった理由はなんなのか?
Terraでの分岐点を見る限りだと月でも同じことはできるように思ったが、地球の方が月に比べて星の力が強いという解釈でいいのだろうか。