Strawberry Nauts2を狙ったけれど盛大に滑った感で色々と噛み合ってないです。比較するとどうしても低い評価をせざるを得ないですね。あくまで平坦で平凡な。そんないわゆる眠ゲーと言われるHOOKを愛するものとしてわがままに書かせていただきます。
PIT(Personal Identification Terminal)を搭載、主人公は頼られるハーレム仕様ということで同ブランドのStrawberry Nauts(以下ストノ)を意識しており、おそらくはそちらを気に入って今作を買った人が多いと思われる。
申し訳ないがあちらと比較しながら、そして関連ブランドの作品を挙げながら書くことをご容赦願いたい。
まずシステムに関してですが、この作品の肝となるPIT。ストノが流行ったのは紛れもなくこれのおかげなので、またあのノリで楽しめるとワクワクしたものです。
ところがぎっちょん
このPIT ver.2.0ときたら、画面上の進行とは全く関係のない雑談をやっているだけなので見る必要を感じないのです。
ストノにおいてはひたすらにぽっぽ爆発Q子軍神女神とか主人公とその周りを持ち上げて、しかもそれが画面とリンクしていたのであくまでぽっぽ達を中心としつつもPITが機能していた。ライター・雪仁さんの力がもちろんあるでしょうが、PITというシステムとの一体感は抜群でしたね。Q子ルートのラストなんかはPITが背中を押してくれてすごく熱かったです。
そういった成功があっただけに、今作のどうでもいい雑談が余計に目にするのが辛かったです。後からPITをくっ付けた感もあってペガサスやつぎゅ姫とかそういった愛称もいまいちしっくりこず作為的というかぎこちなかったですね。
それと更新頻度が早すぎて全てに目を通すのが無理でした。
こういったADVは、そもそもが通常のメッセージ・キャラ立ち絵・音楽と情報が元々多いのですがさらにPITをチェックするアクションを要求されると私は情報を処理しきれません。PITと場面がリンクしているならまだしも全く別の話題となるとお手上げ。
私にとってのHOOKは、こう言ってはなんですがながらプレイで十分なんです。作風はゆるい日常メインですし、絵柄もキツくないし常にオートモードで自然と耳に入ってくるくらいが丁度いい。なんとなく情報が入ってくれば。
ともすれば眠気を誘うほどのリラックスができる癒し空間こそが、HOOK最大の魅力だと思っています。大作と大作の間にやるとほどよい休息の場になり気力充分にしてくれますよ。『睡眠導入』と揶揄されてしまうこともありますが、それこそ私に最高の時間を与えてくれているのだと。_summerは良ゲーですよえぇ。ぺっぺっぺーだ!
けれども、PITとメッセージが同時に流れるので常に画面に張り付くことを強いられ私には苦痛以外の何物でもありませんでした(こんなこと言ったら真面目にプレイしてないじゃんって言われそうだけど)。で、PITのどうでもよさにげんなりすると。
と、いうわけで開始早々PITは非表示にしてしまい以降たまにしかチェックしていません。
システム面では他にもオート判定の不安定さ、三澄のボイス音量の小ささや回想のサムネのズレなど気になる点がいくつか(この辺りはパッチが出るでしょうが)。
【シナリオについて】
さてシナリオの方ですが、ほぼPIT抜きの状態で進めてしまいましたのでサクサクといえばサクサク。
…なのですが想いの外つっこむところが多かったです。
基本的にはるちーかっけえええええな具合で進むところで、唐突に空気が冷える。
十貴恵先生が教室で三澄を叱る場面や、小糸が学校を訪れた際に春近を怒らせたラグビー部など(一応個別で見せ場がある面々ではありますが)。
ノリで冗談をやるのと、ふざけるそれは違うんじゃないかと。あくまで日常の一部のイベントですが、基本的なゆるさと温度差を感じてテンション下がるんですよね。
これも共通の話なのでほどほどで流すとして。
いざ個別へ。
ここでまず思ったのが、主人公がヒロインを好きになった理由が弱いこと。共通で何かしらのヒロインと親密になる強烈なイベントがなかったのが痛い。ヒロイン→主人公へ好意があることは見て取れるけれども、主人公→ヒロインについて少しでも意識する何かが欲しかったです。
そういったわけで分岐して早々にやや強引にヒロインと接近することになり、周りに諭されてからやっと「今まで考えたことなかったけど俺ってもしかして○○のこと好きなんじゃね?きっとおそらくたぶん」と思い立つパターンが多く、主人公の主体性がない。
そんな中でも、かのこ・汐路は比較的マシでした。かのこは幼なじみポジションのアドバンテージというか。汐路については最も春近と遠いところにいるはずだけども、はっきりと「好きか嫌いかというよりもわからない」と言ってくれて、そこから関係を築く描写が駆け足ではあるけれども一応納得できましたね。
んでもって中~終盤。
ここでの一番の驚きは千里ルートの展開。おそらくこの作品をやった皆が共通の想いを抱くのではないでしょうか。他のルートが霞んでしまう衝撃でした。
はっきり言ってしまえば千里は目に病を患っており、治る見込みもなく、ただただ毎日を二人の心に焼き付けていくだけの流れ。もちろんこう大雑把に書いた中にも、二人が残された時間を大切にして共にこれからを歩んでいく決意が見て取れますし、鬱の一言で片付けたくはない感動の話ではありました。シナリオの重さ、感動の具合は作中随一で千里こそこの作品のメインヒロインかと思いましたよ。
けれども冷静になってみれば共通で千里の目についての描写はありませんし、他のルートを選んだ場合には千里の病など気づくこともないでしょうから選ばれなかった時の千里の心情を思うと心が痛い…。
oku_bswa氏がこの作品のレビューで言われていることですが(許可を頂き引用させていただいています)
>「他ルートを攻略する気にならなくなる」って思わせる個別ルートって複数ヒロイン制で特に攻略制限が設けられていない作品だとどうだろうか?単体として見れば文句は無いが全体を考えると心象はそこまで良くはならない。それが「純愛ゲー」を掲げる作品なら尚更だ。
>千里ルートはある意味呪いのようなルートでもある。
千里ルートはまさに呪いで、最初にこのルートを選んだ私は苦しめられることになりました。
顔を見るたびにだんだん目から光を失うあの顔が浮かんでくるのですよ。
私は選ばれなかったヒロインの未来を想像するのも好きなのですが、どうにもやりきれない。
>失明のような病気ネタってやろうと思えばどの作品、キャラクターでも出来るからだ。それでいて感動を与えられるしある意味反則技のような物である。
>HOOKらしからぬ地続きでない、「非日常」のシナリオだった。
>この「非日常」の演出が汎用性の高い病気ネタでなく、もっと千里というキャラクターに寄り添った問題であれば「HOOKもやれば良いシナリオ書けるじゃん!」と素直に歓迎できたかもしれない。
仰る通りです。病気の発覚から壊れる日常・不安と疑心暗鬼→希望を取り戻し闘病→克服と未来or遺していったもの と、ハッピーや余韻を残すエンドへ方向を変えることが出来るこの「非日常」の演出は反則。
話としてはホロリとくるのですが、別に千里でなくてもいいというのがズバリ言えてしまうのがなんとも。
この千里ルートが一番シナリオが良かった、と言えてしまうのもHOOKとしては違和感。それこそ「いつまでも続いて欲しい日常」を描写してくれていた旧作が気に入っている私には、oku_bswa氏が言ったような「非日常」を持ち出してきたことが残念に思えます。シリアスにしても方向性としては汐路の方がまだしっくりくる。
とにもかくにも作中での千里に関する設定が異質で戸惑いを隠せませんでした。
千里が異質ならば他のルートはどうなのか?と聞かれると、特筆する部分も少なくて答えに困るところ。
もうひとつ、姉妹ブランドのSMEEで行われるシナリオの平均化をなぜ行わないのだろう。予想ではあるのですが木村ころやさんはアクが強いので浮いてしまいます、主人公の性格がぶれてしまっている。
お気に入り
シナリオ・千里
キャラ・千里、汐路、比古咲
【エロについて】
使えるといえばそこそこ使えましたがシナリオとのバランスが悪い。ルートによってシーンとシーンの間隔にバラつきがあり、一部では怒涛の勢いでのシーンラッシュ。
シーンへの入り方も強引なやり方が目立ちます。ヒロインの友人と三人で行った服屋で抜いてもらったり、学園内で戦闘訓練してる最中(この時点でPIT実況付き)にラッキースケベからムスコが暴れ出したので抜いてもらったりと「こいつら見境ないな…」とか。PITによる情報の拡散が作中では多いだけに、ありえないとは思いつつも「淫行バレて退学シナリオくるー?」とか内心ちょっとだけハラハラ。
シーン数は
かのこ 4
三澄・千里・汐路・つばさ 5
流々子 1
本編と独立した「俺の部屋」はヒロインとのアフター風味の日常会話と、本編のCGを用いて声を新規に当てたシーンで本番とフェラの2つを収録。
こういう試みは嬉しいですね。
汐路にフェラして欲しいと拝み倒す主人公とか性格がおかしくなってて笑いますがw
しかしここでもちょっとしたトラウマが。千里の目が見えると見せかけての夢オチは残酷ですよ…。千里に関してはシーンで涙するところもありますから、抜きの対象には思えないんですよね。
【総評】
こんなのHOOKじゃないHOOKに鬱展開は求めていないんだ!というのは勝手に思い込んでの私のわがままなのですが、それにしてもシナリオやシステムがちぐはぐでらしくないというのが率直な感想です。
_summerのようなただひたすらに日常が続くでもなく、ストノのように毎日が楽しい学園生活の連続ということもない。どこかでシリアスや滑るPITの流れなどが邪魔をする。
少し前までの、姉妹ブランドのSMEEやASa-projectに本家が置いていかれているという状況をストノがせっかく盛り返してくれたのに今作でまた落としてしまいましたね。なまじストノをリスペクトした仕様なだけに、高かった期待値が逆転して大きく落胆することとなりました。私も発売前はStrawberry Nauts2くらいの感じで期待していましたし。
人気が高かったからこそ良いところを取り入れようとしたのでしょう、ユーザーの意見はたしかに大事です。商業ゲーである以上は売れる路線でいくのが正解。ストノを踏襲したのも必然と言える。
しかし、結局のところライターの雪仁氏の力が大きかったようで。ブランドは移りましたがラヴレッシブ(SMILE)も学園生活の楽しさを面白おかしくやってくれているんですよね。やっぱり主人公と可愛い女の子だけじゃ物足りないですよ、一緒にバカやれる友人キャラが欲しい。
ただ、そういう思いを持ちつつも千里ルートが良かったのは確かなのでこれからこういったシナリオも扱うのかな?と興味は尽きないわけで。色々と難ありな作品ではありましたが、HOOKというブランドを見つめ直すことができたので私にとっては決してマイナスではありませんでした。
とにもかくにも千里一色。
そもそもがこの作品が掲げたテーマの「くせになりそうなしあわせ」ってなんだろう考えたところで、既に公式で答えは出ているんですよね。
PriministArの製品ページでHOOKSOFTのスタイルを変える必要はないとキッパリと言い切っている。
そうですよ、いつもので良いんです。身構えることなく、思わず「あぁ…」と冬にココアを飲んだ時のようなため息をつかせてくれる。
朝は幼なじみが起こしに来てくれて一緒に朝食を食べ、他愛のない話をしながら学校に着きホームルームでは先生をからかいながら一同で笑い続いて授業を受ける。昼は手作りのお弁当を食べるも良し学食の争奪戦に奮起するも良し。放課後は行きつけの喫茶店で集まったり友人がバイトをしているのを茶化しに行くのもいいでしょう。そんな毎日からふとしたきっかけでほんの少しだけ前進してみる、
そんな、なんでもないことの延長線上にあるものが私にとってはしあわせでした。くせになってます確実に。だからこそ千里のような「非日常」に興味を持ちつつも、いつもの「HOOKらしさ」を消さないで欲しい。変わらない変わらないと言いつつも恋愛授業やラブスマ活動といった変な…挑戦してくれるとこは大いに歓迎ですのでHOOKさんの作品はこれからも買っていきますよ。