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kasumi.sさんのフォークソングの長文感想

ユーザー
kasumi.s
ゲーム
フォークソング
ブランド
REWNOSS
得点
90
参照数
2132

一言コメント

このゲームが誕生した経緯を知らない人もいると思います。

長文感想

1999年当時、札幌市内のアダルトゲームメーカーは相互に仲が良く、北海道えろげー組合(きたえろ)として合同イベントを行ったりしていました。
ある飲み会の席で、
八雲意宇(CROWD)「小池定路さんの絵でゲームを作りたい!」
小池定路(アボガドパワーズ)「八雲意宇さんの脚本でゲームを作りたい!」
と意気投合。
話は膨らみ、メーカーの枠を超えてスタッフが集まり、本作「フォークソング」を作るためにリューノスというブランド(合同製作ユニット)が作られました。
販売やサポートなどブランドのマネージメントはアーカムプロダクツの小戸田雄一氏が引き受けました。
(なので、正確にはリューノスはアーカムプロダクツ傘下のブランドではありません。)
人気があった八雲氏と小池氏が組むということで発売前から注目され、期待にたがわない良作として特に女性から高く評価されました。

「フォークソング」のプログラムを担当した浦和雄氏と、原画を担当した小池定路氏のインタビュー記事です。http://chibarei.blog.jp/ より転載。

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浦和雄(アボガドパワーズ代表取締役社長・プログラマー)

 うーん。正直な話をすると「えっ?」って感じでした。でも、小池が「やりたい」って言うんで、「じゃあ、いいんじゃない」って感じで。いや、やりたいって言うんだからしょうがないじゃないですか(笑)。会社的には、営業面で考えたら難しかったところもありますよ。ここまで来るのに色々ありましたし、「自分とこでやってもらう方がいいじゃん」という気持ちになるじゃないですか。ただ、本人の意志と、すぐに描ける状況の企画だったので「じゃあ今回はいいよ」と。

 まぁ「終末の過ごし方」の時に小池にちょっと無理して頑張ってもらったんで、お詫びという意味もあると。「終末の過ごし方」は、おかげさまで外部の評判は良いんですが、内部的には正直かなり酷かったんですよ。最後に「もうこんな酷いやり方はやめようね」って感じでした(笑)。まあ、ただそういう中で頑張ってもらったわけで、ウチの会社は頑張ってもらった分をお金で返そうと思っても返せないですから(笑)。誠心誠意を込めて、せめて「やりたいことをやらせてあげたい」と。アボガドを立ち上げたきっかけも、その「自分達のやりたいことをやろう」でしたし。それで、お話をお受けしました。

 北海道のメーカー同士仲がいいというのは、なんて言うんでしょうね。各メーカーに同じ事を聞いても、それぞれ答えが違うと思うんですけど、まず「どこかを叩き落として自分のところが生き残ろう」と思っているメーカーが無いということが1つでしょうね。「お互いに切瑳琢磨して良いものを創っていこう」という部分がどの会社にも根底にあると思うんで、だからケンカしないでやっていけるんでしょう。
 まぁそういった意味では、スタッフの引き抜きあいとかはないですね。ただ、「親しい仲にも礼儀あり」というか、「なあなあな関係」にはならないように各メーカーさんは気を遣ってるんじゃないでしょうか。

 MMX部分に関しては、今回のエンジンに組み込んでいますので、「フォークソング」でもそのまま利用するつもりです。「終末の過ごし方」でもちょこっとやってたんですけど、「BGMを鳴らしながら複数のSEを演奏する」というやつをもう少しグレードアップさせてみようかなと考えてました。虫の鳴き声とか、BGM以外の音をうまく使っていきたいという話もあって、そのおかげで今回泣かされてるんですけど、まぁ、なんとかしました。

小池定路(アボガドパワーズ所属・原画担当)

 最初に八雲意宇さんからお話がきたとき、企画を拝見させて頂いたんです。それで、その時点で「メインの女の子が3人いて、それぞれに相手がいる」ということが決まっていたんですよ。そういう設定って、あまりユーザーさんに受けないじゃないですか。敢えてそれをやる企画だったので、「あ、それは面白いかも」と。しかも美少女ゲームのはずなのに、「男性キャラも重視します!」という、その、なんというか度胸の良さが面白いと感じました(笑)。

 お話が来たのは「終末の過ごし方」の開発中です。実は「終末の過ごし方」では個人的に不満や、やり足りない部分が色々と出てきたんで、シナリオと自分のやりたいことのギャップがあったんですよ。自分のキャラで表現したかったのは、もう少し日常的な会話とか、もっとささやかな話とかだったんです。そういう意味では、自分のやりたかったこととはちょっと違うかなと。それで、今回の企画が「こういうのやりたかったんだよなぁ」というものだったので、会社にわがままを言わせて頂いて、お話をお受けしました。

 八雲さん本人に、「なんで自分を指名したんですか?」と聞いたんですよ。そのときに「小池さんの描くキャラクターの表情が凄く良かったから」と言ってくださったんです。表面的な絵柄だけじゃなくて、もっと別のところを見てくれているというのが自分にとってはありがたかったです。逆に、単に「絵柄が可愛い」とか、そういう理由だったら断ってたかも(笑)。

 初めに八雲さんが設定を凄く細かく丁寧に作ってくれて、それのおかげでとてもイメージが浮かびやすかったです。こちらが出したリクエストにもきちんと応えてくれたので、制作はスムーズに進みました。上がってきた歩のシナリオを読んだら、イメージした通りの喋り方をしてるんでびっくりしました。「うわあ、本当に歩が喋ってるよ!」って(笑)。

 今回の『フォークソング』も原画から彩色まで私一人でやっているのですが、ウチの会社で自分のような「塗り」を出来る人が他にいないんですよ。自分の絵ってアニメ塗りとかが似合う絵ではないんで。アニメ塗りに関しては「出来た方が便利だ」とは思うんで、今ちょっと取り入れようと試みてはいるんですが。影指定とかやる必要ないんで、その分時間が短縮できるというメリットもありますよ(笑)。まあ、たまにバストアップ用の背景あたりは「誰か描いてくれないかしら?」とか思ったりはしますが。