よくできているが、青臭い物語と見ると過酷で楽しめない。現実を意図すると、リアルじゃない。結果、なんら得るものはなかった。
終始違和感があった。
ハードな内容の割にはリアリティーを感じなかったというあたりがその根源だ。
例えるなら、
自分が荒唐無稽だと思う歴史認識(右翼なら自虐史観、左翼なら自慰史観)を前提に、
教訓となすべきことをとうとうと語られる感触だろう。
もっとも、"リアリティー"なんて人に依存する言葉である以上、
何の説明にもなっていない。
だから、僕にとってのリアルということを丁寧に書いておく。
少なくとも僕の周りにはさまざまな人間がいる。
日本人だけではなく、外国人もいるし、
左翼もいれば、右翼もいる。
同じ思想の人間にはめったに出会わない。
歴史上の戦争についての知識もある。
ナチスの挙国一致体制でさえ、
戦争に反対する抵抗運動したものもいれば、
積極的に賛成した人間もいる。
日本が滅ぶといわれた大東亜戦争でも、
反戦活動があったことを知っている。
日露戦争の時、戦争を知らなかった科学者の存在も知っている。
反戦自衛隊なるものが世の中に存在していることも知っている。
たぶん、どんな状況でも人間はいろいろなことを思うし、
いろいろな考えがある。
その結果、いろいろな態度が出てくるのが普通だろう。
オルタネイティブにリアリティーを感じないというのは、
性格はともかく、ほとんどの登場人物の思想性が一致していて、
戦争に対する態度もまったく同じだという点に尽きると思う。
例えば、お互いの思想をかけた衝突というものはない。
それどころか、先輩からとうとうと人生について語られ、
その先輩を、人生の師と崇める。
このあたりで「うわー」となるわけである。
そのあたりの薄っぺらさは、
人間描写の巧みさや演出でカバーされてはいる。
その面については大絶賛したい。
だが、だからこそ目に付くのである。
そもそも、作者の言いたいことが自分に合わない。
まとめると、
1,人の言うことを鵜呑みにするな。自分で考えろ。
2,危機的状況では、唯一つの価値観が優先される。
3-1,民族性は人間の根本をなす。
3-2,ただ生きているだけではだめだ。
4-1,表に出すべき感情は選べ。
4-2,欠点に対して何らかの対処方を持つべし。
ということなんだろう。
1,と2,はまあいいとして、3,は小林よしのりまんまで許容範囲。
ただ、4,が気にかかる。
4,というのは、チームとして仕事をする人間のあり方を規定したものである。
なるほど、仕事に私情を持ち込む奴は上司としてはうざいし、
欠点がある人間は使い辛い。
(ついでに、チームの価値観がそろっているなら最高だね)
ぶっちゃけ作者の成長観は、チームとして効率よく働ける人間になることである。
しかし、私的な話、チームとして働くことの少ない自分には、
それを成長といわれると、「ハァ?」となるわけだ。
1,2,3も4,の文脈で解釈すると、
作者の意図している人間像がよくわかるはずだ。
SFとしてはよくできていると思っていたが、
いくつかの作品の良いとこ取りみたいなかかれ方をされているのを良く見る。
ま、多世界解釈とノイマン解釈(「唯心論物理学の誕生」あたりを参照しているのか?)を融合させたあたり、
うまいなと思ったりはするが、
同じ因果を使っていても「YU-NO」の設定には勝てなかったなとも思う。
ま、いくつか細かい不満もあるが、それはまあ、見逃すべきところだろう。
(旧来のSFで見たような言葉が多い。
例えば、多世界の説明に量子もつれあい状態とか使ってみたり、
新元素はいくら魔法数を満たしていても放射性でまずいわけだから、
新合金とかメタル@フラーレンとか使って表現を新しくしてもいいんじゃないかなと。
負の質量を持つ元素というのは"エキゾチック物質"のことをいってるんだろうけど、
元素(つまり、原子からなっているもの)はやめて、物質といって欲しかった)
まとめると、
SFとしては目新しいものはある。
自分とは異なる思想を一方的にプロパガンダするが、
リアリティーに欠けているので説得力を感じない。
だが、なんだかんだいって最後までやってしまって、
レビュー書いてもいいと思ったくらいである以上、
相当の魅力があることも確かだと思う。
だから、あえて、65点という点数にする。
補足
考えれば考えるほど、自分には合わない作品であり、
主観的印象を書き込むサイトである以上、
最初の印象(85)よりも点数を20低く下げることにした。
追記
オルタネイティブとは直接関係はないが。
演出についてもちょっと言及しておく。
いや、確かにすごかったが、
全部アニメにするか、
ポリゴンにしたものに対しては勝てないだろう?
演出をこるという方向性の行き着く先は、
結局、FFシリーズのような方向性で、
金がかかるようになるということだと思う。
基本的に、エロゲーは金をかけないで作れるというものだったと思う。
それが、金をかけないと評価されないということになると、
市場が細くなってしまう気がする。
ま、杞憂で終わってくれればいいのだが。