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kaglaさんのCANNONBALL ~ねこねこマシン猛レース~の長文感想

ユーザー
kagla
ゲーム
CANNONBALL ~ねこねこマシン猛レース~
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
81
参照数
1616

一言コメント

エロゲでレース物というのもめずらしいが、発売から約10年経った今これを初プレイというわたしも十分めずらしいだろう。極上の熱い物語はもはやほぼ死滅した異端であり、発売直後はバグの嵐、10年経った今は時代遅れという壁が楽しむことすら邪魔をする

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

宇宙を舞台にしたレース物というかなりめずらしいエロゲ
大まかな流れは出会い>レース参加>予選>12の本選とその間に
強制イベント含む5択イベントなどを自由に選ぶ方式
ヒロインが複数いて各ルートが、というわけではないし
レースパート自体は面白くはない
あくまで物語を見るゲーム

大まかに2ルートだが登場人物は主要キャラだけでも30人以上と非常に多く
5択などでそれぞれの物語や主人公とのからみなどが見れるが
短いものばかりなので1つ1つは
ちらっと垣間見える、という感じだろうか
さらにどれを選んでもメインの話は進むので
全員の物語を見るにはかなりの労力を要する

選択イベント以外にも例えば
レースパート中の会話だけでも自分以外の14(実質もっと少ない)チームそれぞれに
とんでもない数がつめ込んであるが
そもそもレースパートは加速をしバトルを行いライバルをぶっつぶして
順位を上げる事を目的としているパートであり
会話を楽しむパートとしては作られていないので
全エンド見たけどレース中会話コマンドなんて一回も使ったことがない
という事も十分にありえる

そんな部分だけでも全部合わせて100前後のやりとりがあり
それも場面と相手によっちゃ
普通のイベントよか長いような会話まである

レース題材だが自機を操作するレースゲームではなく
選択肢で必殺技とかはあれど
基本は選択肢式のオーソドックスなADV
だが全ルート見れば各エピソードまで全部見れる、という作りではない
登場人物の大半に大なり小なり物語があり
それは普通に全2ルート終えても大半は見えないまま終わってしまう

そこから先の回収は
5択のエピソードから見たことのない物を選んだりすることになるが
結局は同じエンドを延々と見させられる作業とも言えるので
決してその作りは評価できない

それでも
「2ルートとエピローグを見るだけで物語は完結してるけど、所々欠けたピースの回収作業の中に
重要な物を見つけた時の楽しみ、それを拾った後に改めて物語を見る楽しみ」
という部分は間違いなく存在する

ただピースをすべて拾っても物語は決して変化しない
大半は面白いかはともかく、サブストーリー的なピースばかりだし
一部の深みのあるピースも物語への関与だけでいえば
途中の展開がほんの一部変わったりするだけで
物語自体は何も変わらない

全エンド見てもCG回想が埋まらないのは当たり前
クリアしてもいろいろ見せない
脳みそフル回転させて何十周しても埋めきれず
全部見るなら何ヶ月もがんばってというエロゲは
個人的に何作もプレイしているが
すべて古い作品ばかりで
かなり昔にほぼ死滅したと思われる
きっと今の時代のニーズには全く合わないのだろう

全エンド見た後にCGや回想が3割も埋まっていない!
それを見て「もういいや」になるか
「よし俺たちの戦いはこれからだ」と思うか
実際にどっちの気分になるかというのは
2012年に今作をプレイし楽しむ上での大きな分かれ目の1つになると思う

実際に埋めるかどうかではなく
あくまで気分の問題だが
(ちなみに発売当初はバグでコンプ不可能だったらしい
 現在はパッチをあててコンプ可能だが
 非常に難易度が高いイベントもあるので
 かなりのファンでもコンプしていない人は多いと思われる)
全エンドを見たらCG回想埋まってて当たり前と思っていると
かなりびっくりするのではないだろうか

その回収作業をする意味がわからんというのも当然であり
面倒だから全部簡単に見せろよ、というのもごもっとも
不親切な作りだし、ご褒美の隠しエンドがあるわけでもない

作業でも何でもとにかく他のピースも見たいんだ、という人は
本編をものすごく楽しんだ延長かもしれないし
各キャラに、この世界に何か惹かれたのかもしれない
たとえピースを埋めてもメインの物語は何も変わらないが
キャラや物語への思い入れのようなものは確かにぐっと強くなる

あらかたCG回想埋めたような人は
A.キャラや話にものすごく引き込まれた
B.隠し要素の回収作業に慣れていて苦にならない、当たり前にするものと思っている
C.苦痛苦行もある意味快感、単なる生粋のどM

これらの全部もしくはどれかに強く当てはまるんじゃないだろうか
どれも当てはまらないなら
レース中の会話を全部見て、さらにCG回想埋めようなんてきっと思えないだろう

悪名高きバグゲーでもあり(今は問題なくプレイ可能)
題材も非常にエロゲぽくもなく(Hシーン自体はまあそこそこある)
作りも非常に不親切で古臭いが
1ヶ月近くかけて遊ばせていただいた自分の中では
(これだけやってたわけでは全然ないが)
間違いなくのめり込んだ素晴らしい作品だったと言える

月並みに文句を言うなら
時代に関係なくいろいろ作りに問題を感じるし
時代を考慮しても
CD-R時代で当時のブランドの資金力、技術力不足も影響したかもしれないが
演出、文章量など見ると
やりたい事に対して少し容量が足りなかったのかなとは感じる
主な登場人物だけで30人を超えるため
もっと深くいろいろ見たかった部分はある

2003年に発売されたキラ星のごとき名作エロゲの数々と比べても
やはり半歩、一歩落ちる

月並みに誉めるのなら
素晴らしい物語だったし
多くの女性キャラと共に、ここまで多くの男性キャラが物語を彩り
ほぼ全員に強烈な存在感と味が出ているエロゲは他に見た事がない



主演女優賞:フォックスバット
助演男優賞:ブッチ・ヘインズ 
助演女優賞:ティコ・fgr  
ベストクラウン:フィリオ・ロッシ(チーム イエロージャケット)
ベストナビゲーター:ヒッグス(チーム バルトアンデルス)
ベストマシン:マルボロ3(チーム ホイットニーヴィル)
ベストレース:ルートⅡ第12戦(ティコフラグ有)
ベスト名セリフは・・・多すぎて選びようがありません