ErogameScape -エロゲー批評空間-

kabbotさんのAIRの長文感想

ユーザー
kabbot
ゲーム
AIR
ブランド
Key
得点
100
参照数
577

一言コメント

エロゲーではない。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

もはやエロゲーとか、ギャルゲーという域を大きく超えている。

最終√において、主人公は(一見)傍観者にすぎない。
どのような選択肢を通っても、悲劇的ともいえる結末を見ているだけしかできない。
主人公の選択により、ヒロインの運命を左右できるというエロゲーやギャルゲーにおいて、これが許されないAir編のラストは衝撃的である。

1度目のプレイでは衝撃の展開と結末に打ちのめされて終わってしまった。
シナリオを理解できなかった。
しかし、2度目に落ち着いてプレイして、初めて作者の深い意図に気付いた。
ヒロインのけなげさ、そして親子の絆の深さに深く心を打たれた。
途中から涙と嗚咽が止まらず、呼吸困難で死ぬかもしれないと思ったほどである。
理解できなかった人は余りにもったいない。
身近な人の死に出会い、決して死=悲劇ではないということをぜひ経験した上で、再度プレイして欲しい。

なお、主人公は傍観者にすぎないと書いたが、これは表面的な見方であり、AIR編においても、実際に主人公の選択により、より悲劇的な結末を迎えてしまうことになる。
主人公は、どんな情況になっても戦いをあきらめていない。
どんなに結末が悲劇的であっても、抗うことをあきらめることは許されない。
意味の分からないようにも思える選択肢には、このような強固な思想が秘められている。

私にとってAIRを超えるゲームはない。
もはやAIRはゲームではない。