テーマと序盤の展開は素晴らしいのに途中から変なファンタジー要素が介入してすべてを台無しにした感じ。しかし佳苗ルートだけは本当によかった。
I'veのアルバムでKOTOKOの「Imaginary affair」と健速さんの「そして明日の世界より」が大好きだったので、評価の高い過去作ということで、今回この作品に手を出しました。
が、予想を超える展開に、正直萎えきってしまいました。
クリスの存在を受け入れられるかどうかが、この作品の評価のわかれるすべてだと思います。
少なくても、死生観をテーマにした作品としてはかなりお粗末な結末をむかえる、ファンタジーなストーリーです。
よかったのは序盤まで、その後クリスを加わってから、全てが退屈になりました。
物語の本筋としては、佳苗たちや、主人公自身が自分の死と向き合う作品だと思ってました。序盤は。
そこからクリスが介入して、変な方向に話が進むことになります。
トゥルーエンドを見たら、クリスがなぜ仮方の前に現れたかがわかりますが、そもそもこれはファンタジーだから成立する話であり、仮方の苦悩や苦痛などと向き合っていたことがひどく安っぽく感じることとなってしまいます。
仮方があれだけ大きな決意をし、自分を鬼にしてまでやってきたことの深みをすべてのファンタジー要素がことごとく薄っぺらくしてしまうことで、シナリオの質を大きく落としてしまったと感じました。
正直佳苗メインでシナリオを構成してれば、ものすごい名作になったのではないか、そんな気がしてなりません。
確かにクリスの存在が、佳苗との問題に直面する仮方にとっては救いや癒しになったでしょう。
でもやはり、なかなか展開的には仮方の病気の描写をあまりにも蔑ろにする描写ばかりになってしまい、ぶっちゃけ興ざめでした。
健速さんの後の作品である「そして明日の世界より」は割とリアルに描かれており、主人公がきちっと自分で悩んで周りの人ときっちり向き合うことで答えをみつけてきました。
正直あっちが上手くまとまっていたから、こっちも素晴らしい作品なのかなと思ってプレイしたらとんだ拍子ぬけでした。
そして佳苗の気持ちを考えるとなんともやるせない。
クリスみたいなキャラがいても全然いいけど、少なくてもファンタジーを絡める意味は見いだせなかった。
トゥルーがハッピーエンドかというと、そんな気もするししない気もする。
いずれにせよ、クリスとの時間を楽しめられなければこの作品の価値はかなり薄いと思う。
自分は佳苗との関係がずっと気になってたので、正直この構成はかなり微妙に感じました。
少なくても思い入れの強さ的には、「かなたxクリス」より「かなたx佳苗」のほうが全然強かったと感じますし。
そう考えると、「そして明日のせかいより」の夕陽シナリオは、今回の佳苗との関係の描き方のある意味リベンジ的なシナリオなんだと思いました。
ヒロイン的には佳苗の方が好きですが、シナリオ的には夕陽の方がすきです。
死生観を語るには、この作品はどこかチープすぎます。佳苗がメインヒロインになる物語が出たら、すごくやりたいですが、もう10年以上前の作品なので無理でしょう。
同じような佳苗のような幼馴染ヒロインが居てシナリオの深い作品がやりたいです。
そんな気持ちになる作品でした。