シナリオを深く考えずにキャラ萌えだけで行くならそれなりのゲーム。物語性を求める人にはあまりお勧めはできない。
今作は、初恋1/1、星織ユメミライの反省を生かして、色々改善された部分も多く、作品としては前作よりも楽しめるようになったと思います。
まず、中学時代から社会人までという長いスパンをしっかりと年ごとにシナリオを分散させて、主人公たちとプレイヤーの距離感を守ったことが前作ユメミライでの個人的な不満点をかなり改善していただいた感じで、とてもうれしかったです。
前作の2部構成は、ある一定期間はがっつり入り込めるが、長期の時間の空白にお互いに何があったかは想像するしかなく、その点でプレイヤーと主人公の間で大きな時間的、視点の距離感が出てしまい、物語に入り込めなかった点を今回は見事に解消できていると思います。
まあ、それと同時に、一つ一つのイベントの間に数週間や数か月といった時間経過が頻繁に入り、シナリオのつなぎがとびとびになってしまっている点が、よりダイジェスト感を強めてしまった感はありますが、個人的には、主人公たちと大きな時間的な差を感じずに済んだので今回の形式の方が前回よりはだいぶマシでした。
中学編の共通ルートでは、仲間たちとの絆をきっちり描いており、その後のそれぞれの個別でも長い間仲間たちが絡んでくるので、前作のように主人公とヒロインのみでマンネリ化するのを若干抑えられているように感じて、こういう部分にはかなり工夫がなされていると感じました。
良い所ももちろんいっぱいあるのですが、残念ながら悪いところも色々目立ちました。
シナリオ・・・というか物語性については前作同様、やっぱりあまり面白くないです。平坦で淡々とした物語が続いていくだけで
何か大きな事件とか、葛藤とかそういうものがあまり演出されず、それゆえ盛り上がりも、感動も呼び覚まされるような演出がないんですよね。
細かい、失敗や葛藤などはあるのですがやはり同じパターンの繰り返しだったり、物語全体を通して何か大きな変化があるって話でないのでやはりだんだん飽きてくる感じです・・・。
このメーカー処女作の初恋1/1で、初恋の恋愛と失敗を取り上げ、主人公たちを一旦別れさせたりして、葛藤を描いたのですが、それがユーザー達からかなり反感を買うことになってしまったみたいで、それ以降のユメミライと、今回の銀色遥かでは、そういうマイナス要素を完全に排除した作りになっているのです。
シナリオやコンセプトに冒険がなくなってしまったんですね。そのため物語のつくりも、ワクワクドキドキするような演出がほとんどありません。
物語にはいくつかのセオリーがあって、起承転結や序破急を使って様々に物語を盛り上げたり感動を呼ぶ演出があるのですが、この作品はこういうのを付き合って以降は全然使っていないので、読み進めるうえでこれから楽しくなるかもっていうのが全然感じられないのです。
ユーザーにとって感情を揺さぶるようなイベントが用意できない。そのため感情を揺さぶるようなシナリオも描けない。そんな感じの印象をうけます。
まあ、このメーカーの作品のファンは、変なシリアスを入れるよりは、詰まらなくてもずっとイチャラブしてたほうが良いという考えの人が多いみたいなので、そういう意味ではユーザーフレンドリーなんでしょうが、シナリオの読み応えまで求める人にはやはり物足りない感じがしてしまいます。
なので、このゲームをやる人には、シナリオなんてなくてもいい。好きなヒロインとイチャイチャできればそれでいい、仮想人生を楽しんでみたい、と考えてる人にはいいと思いますが、シナリオに演出や感動などを求める人にはあまりお勧めできないかなっていうのが個人的な評価です。
逆に何の変哲もない平凡なシナリオの合間にエッチシーンが適度に入り、特に大きなシリアスもなく、ただあ平凡にダラダラのんびり長いストーリーを楽しみたい人ならいいゲームだと思います。
というかこのメーカーのゲームやってるとどうしてもクラナドと比べてしまって、評価が落ちてしまう・・・。
クラナドのアフターは描写が丁寧でキッチリ描かれてるし、物語性があるからやっぱり比べる対象としてみてしまうのかもなぁ。