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k1rena34さんの星織ユメミライの長文感想

ユーザー
k1rena34
ゲーム
星織ユメミライ
ブランド
tone work's
得点
72
参照数
897

一言コメント

物語の連続性がなく、感情移入しずらいアフターだった。学生編は〇 アフターはそういう意味でX

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

気になるキャラとして真理花ルートのみプレイ。
学生での恋愛から社会人になって結婚~ を描いていくシナリオで他のゲームにはない要素がふんだんにありますが、シナリオは平凡でちょっと物足りない感じがしました。

また、学生時代と社会人編では、空白の時間がものすごくあくために、感情移入しづらい状態になっています。

これは、普通の作品はエピローグにあたる数年後の世界を、一つのルートとして描いたことによる弊害で、学生の主人公たちに感情移入していたのが突然、入社数年とか経っている状態に移行するため、置いてきぼり感を食らうためです。

学生編は、普通の作品と同じように連続した時間の中で、がっつりと好感度上げから、恋人になるまでを描いているため、普通に感情移入することができますが、社会人編では、いきなり7,8年ほど時間が経過した世界に突然放り込まれるため、かなり空白の時間を意識してしまいます。

問題なのは、学生編では連続した時間で感情移入していたのに、社会人編ではいきなり主人公たちと時間的な距離が空いてしまうことです。
主人公たちが大人や社会人になるにつれての成長や、それぞれの重要なイベントを全く描かずに飛ばしてしまうため、学生編での感情移入していたものが、完全に抜け落ちてしまうんですね。

作品としては、アフターをがっつり書くことがこの作品の趣旨でもあるのでいいのですが、この7~8年の間ののエピソードを何かしら入れないと、やっぱり距離感がすごい開いてしまうわけです。

最低でも、高校卒業、大学時代の日常などを少し、入社などの描写を入れてくれないと、いきなり成長したヒロインを見せられても戸惑うばかりです。

※ちなみに、シナリオ重視の作品でこうして数年後と書かれる場合はよくありますが、あちらは数年後の物語に重要なシナリオが入ってくるため、間のエピソードが抜けてても気になりません。

ですがこういう、あくまでイチャラブ路線でいくなら、主人公たちとの距離感は非常に重要です。
一緒に成長し、一緒にヒロインを愛でていって感情を昂らせていって、それで結婚という流れならとても感動できるでしょう。

でも、感情移入できていない状態で結婚とかやられても、なんか他人の物語を読んでる気分で距離を感じてしまうわけです。


対比として一つ、かの有名なCLANNADという作品を例に出します。

CLANNADでは、アフターは主人公が高校卒業したところから始まります。
高校卒業は個別ルートで卒業したところで終わるので、時間が連続しているのが分かります。

その後、居候させてもらっている彼女のパン屋でしばらく働かせてもらうのですが、自分の力で彼女を養いたいと就職していきます。

そしてアパートを借りたり、彼女の親を説得して彼女との同棲生活を始めます。
同棲生活もきっちり書いており、主人公は就職してから、仕事の厳しさ大変さや、職場の同僚とのやりとり、ヒロイン(まだ学生)の学校生活の悩みとかを聞いたりしながら、ともに絆を育んでいきます。

やがて仕事も順調にいくようになり、彼女も学校を卒業して、どんどん社会人として普通の生活を送るようになります。

そしてとある事件をきっかけにプロポーズ。そして親に娘さんをください! といって結婚をします。

結婚後の妊娠から妊娠の経過までもきっちり書いており、一つの連続した時間のなかで物語が紡がれていくのがよくわかります。


同じアフターでもこうして時間軸が連続していれば、数年単位のスパンで物語が進行しても違和感はありません。

ですが上記の真理花ルートのように、いきなり数年後とか飛ばされると、途端に感情移入できなくなるのです。

次回作の銀色遥かでは、今作よりももっと長いスパン、 中学編、学園編、アフターと三部構成になっているようなので、
今作のようなぶつ切りじゃなく、この物語の連続性を意識して作っていてくれればなと思いました。