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k1rena34さんのはるまで、くるる。の長文感想

ユーザー
k1rena34
ゲーム
はるまで、くるる。
ブランド
すみっこソフト
得点
80
参照数
665

一言コメント

個人的にはもうちょっとに詰めてほしかったが、良いストーリーだったとは思う。もう少しSF要素に尺を割いてもよかったようにも思うけど。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

最初ハーレム、その後前半、中盤は一般的なギャルゲ展開、後半SF展開な典型的王道作品。
細かい部分王道過ぎて物足りなかったり、先の展開が予想でき過ぎてしまったり、色々物足りなと感じる部分もあるが、終盤の締め方や、それぞれのキャラクターの関係性などは非常によくて、この世界に十分浸ることができました。

エッチシーンについても、そこまで抜けるようなものではありませんでしたが、個別エッチよりもハーレムのほうがよかったと思えるゲームは自分ではなかなかなかったのですが、このゲームは本当にハーレムでよかったと思えるようなシナリオでよかったです。

個人的には、最初ハーレム、そして個別シナリオのエッチになっていくのですが、ハーレムは最後に持ってきてもよかったかなと思うのです。

やはりいろいろな情報が整理されてからのハーレムのほうが、シーンに熱が入るので、そこだけは残念でした。




以下ネタバレ感想になります。









まず、前情報で一応知ってはいたものの、SF作品であるのは序盤からすでにわかります。
まず異様な長さの煙突の描写、釣りシーンでの海に関する描写、学校の異様な電子ロック扉などのシーンで普通の学園ものではないことが分かりますし、シーンの至る所でループしてることはわかります。

なので最初は仮想世界ものとか軌道エレベーターなどがある人工島の話をもとにしたループものを想像していました。
また地上の人類が滅びてるゼーガペイン的なものを想像していたので、そういう意味では終盤の展開は大体予想通りでしたね。

このゲームで何が感動したかというと、しっかり現実の知識を含めて論理立てて説明してくれているところです。
もちろんSFですから超過額とか、科学検証されていないものもたくさんあって、ハードSFかというとそうではないのですが、それでもしっかりSF心をくすぐるような様々な用語のオンパレードに大変興奮したものです。

例えば、ハーレムシナリオ後から、本格的に世界観の分析から話が進んでいくのですが、今が西暦何年くらいかを検証する場面とか、煙突を軌道エレベーターとしてみたときの整合性の話とか(煙突の太さや静止軌道衛星の有無など)の話が展開されていくさまは、本当に見てて面白かったです。
(ちなみに静止軌道衛星は高度3万6千キロにあるので、肉眼では見えないのでは?とは思ってしまったりはしたんですが。ちなみに高度400kmを周回するISSなどは夜に肉眼で見えますよ)

また、ループものの説明にベニクラゲの幼化を取り入れてるのも新鮮でした。
ヒモ理論なども出てきますが、自分はヒモ理論について詳しくないので、すべての物質を巻き戻すという現象についての科学的な考察はできないのですが、このあたりの設定も読んでてとても楽しめました。
また、太陽活動の低下による全休凍結や、微生物や深海生物が太陽光がなくても生きていけるところなどは、昔見たNHKスペシャルのドキュメンタリーなどで見た知識そのままの事が物語に描かれていたのにもひどく感動しました。

ちなみに、後半の地球ごと他の恒星に移動させるって話も、超科学すぎて強引だと思うかもしれませんが、地球ごと動かせるならそれが一番安全な宇宙船になるというのは理に適ってます。(問題はそれだけの推力を得られるロケットエンジンが開発できるって部分がすごく超展開ではあるんですが)

しっかり軌道投入など、科学的な統合性をとろうという文章の試みはすごくワクワクさせる部分がありました。


ですから個人的には後半のSF描写にはほとんど不満はありません。

またキャラクターの絆の深さも、1万年以上も一緒に過ごす仲間なのですから、みんな大好き、皆でハーレムというのもすごく納得がいく感じです。
そういう物語の大筋の話は本当によくできててよかったんですが、こと個別シナリオとなると評価がググッと下がってしまうのが難点。

まず、個別シナリオはハーレム要素排除で、それぞれのキャラ設定に基づいてシナリオが展開されるのですが、やはりシナリオの大部分がダレてしまうのです。

そりゃ、いろんな秘密が明かされていくという過程はオモシロかったりするのですが、皆癖の強いキャラクターなので、好みのキャラはいいのですが、好みでないキャラのシナリオまで、普通の恋愛ゲーのように 出会い>好きになる>恋愛とエッチ の過程を踏んでいくので、それが繰り返されるのは少々苦痛でした。
もちろんループもの特有の同じ世界を繰り返すデジャヴ感は、毎回文章が変化したり、キャラが増えたりすることで分散されるのですが、ハーレムシナリオ時にやったエッチを繰り返してるような錯覚もあってやっぱり若干の退屈感はありました。

まあ、ダレるのは新情報のない部分だけで、どのシナリオでも新情報がどんどん明かされていくので、そういう部分ではとても楽しめます。


個人的に好きなシナリオとキャラは、やはり冬音と真冬ですね。
冬音は主人公とバトンタッチするまでは、唯一記憶の継承をしてるキャラなんですけど、冬音が死ぬ決断をした最後のカーネーション時の冬音の甘えっぷりと、一度真冬を殺したことに公開してからの真冬との仲良し姉妹をしている姿は冬音の心が垣間見れてすごく切ない気持ちになりました。冬音がそれまでの二つのシナリオで、ちょっと不穏なキャラを装っていただけに、冬音の本音が分かったときは思わず涙しました。

そして冬音が死んだ後のカーネーションで冬音の時間軸が狂ったときは、すごく悲しい気持ちになりました。(最後にはちゃんと回復するのでそれは本当によかったと思いました)

はるまで くるる のタイトルも、ループに気づいたらすぐわかりましたが、恒星間移動を果たし、バーナード星の衛星となり、全休凍結が終わって春が来るっていうことを意味していたのには、かなりグッとくるところがありました。

そしてそこに至るまでの膨大な時間をちゃんと書ききったのは本当に凄まじいと言えます。

はるまで くるるの次回作もあるようなので、また時間があるときにそっちもやりたいと思います。

今回はこの作品に出合えて本当によかったです。
感動とはちょっと違いましたが、SF作品としては良作に当たると思います。

ただ、ちょっと冗長な描写も多く、革新部分の尺が短かった残念要素もあったため、残念ながら80点でとどまらせてもらいます。

もうちょっと世界観について、色々描写があればよかったのにと少し残念でしたね。