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k-qさんの神様のゲーム -監禁された6人の男女-の長文感想

ユーザー
k-q
ゲーム
神様のゲーム -監禁された6人の男女-
ブランド
XUSE
得点
82
参照数
714

一言コメント

欠点は多いもののデスゲームものとしては質が高い。 (前半はネタバレ無し雑感、後半はネタバレ感想)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

□ネタバレ無しの雑感

 膣内射精で3Pだの口内射精で2Pだのばかばかしいエロ小説ルールが並ぶ今作。
 それがここまでシリアスにデスゲームをやってくれるとは思ってもみなかった。

 くだらないルールを登場人物達がしっかりと考察し、生き残るために必死に知恵を絞る。
 心理描写も丁寧で登場人物一人一人に魅力があり、二転三転する先の読めないシナリオについついのめりこんでしまった。


 一方で残念な点もある。
 
 まずはグラフィック品質。
 立ち絵の基本絵は綺麗だが表情パターンが顔芸レベルに苛烈でかつパターンが少ない。
 シーンに合わない表情をしているなと思うことは十や二十では済まされない。
 
 また一枚絵も低品質。
 ヒロイン達の顔も体型も安定しないため誰だこいつと思うことがしばしば。
 設定が典型的エロ小説だけにデスゲームものとは思えないほどシーンが多いが、実用性は非常に低いと言わざるを得ない。

 
 そしてもう一つ残念な点として後半の展開。
 これに関してはネタバレにあたるので後述するが、色々と納得できない展開が多かった。


 総じて、残念な点はあるもののデスゲームものとしては高いレベルに仕上がっている。
 誰が何をするか次の展開が読めない点は非常に秀逸であり中盤までであれば文句なしにオススメできる。
 心理戦やデスゲームの雰囲気を味わいたい人はぜひ。
 
 

 
 







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━━━これ以降は重大なネタバレ感想です━━━ 

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□後半の展開について

色々不満点があるのだが、まず後半の心と琴子の行動が納得いかない。
好きな人間を活かすためにどんな悪事にでも手を染めることまでは理解できる。
けれど自分の体を汚したくないからもう一人の男を殺そうってそりゃないだろう。
結婚して夫がいる女性も婚約者が決まってる女性も好きな相手以外に抱かれている。
にもかかわらず自分たちは好きな男にしか抱かれたくないとは我侭にも程がある。

男キャラを追加して普通の男ならどうなるかを書きたい。
しかし寝取られは書きたくない。
そんな作者心理によって都合よくキャラが動かされた結果としか思えなかった。

次の不満点は上記不満と同時期に起こる突然の主人公の豹変。
伏線と呼べなくもないものも一応あるにはあるのだが、この段階では豹変としか言いようが無い。
頭の中が疑問符で埋まる。
感情移入していた既存メンバーがごっそりと退場し、場に残ったのはキャラクター性もまだ掴みきれてない新規メンバーと利己的でなんだか醜く思えてきたヒロイン二人と、突拍子もなく豹変した主人公。

ここから陰惨な結末へと向かってくわけだが展開のきつさどうこうより物語に冷めてしまったせいで読み進めるのが辛かった。


三点目として物語の終了後に明かされる主人公が豹変した理由。
『託す』と言えば聞こえはいいが自分の失敗によってできた負債を弟に背負わせたとしか思えなかった。

死んでいった人達を救いたいのは分かるし、アーニャを失ったのが決定的な失敗だったという説明も分からなくもない。
とはいえ彼女たちを取り戻すために自分の命はおろか周りの人間の命までチップにして、弟が賭けに勝つことを願うなど正気の判断とは思えない。

弟も弟だ。
主人公と心の関係や琴子と主人公の関係、美月とアーニャの関係のように今作の中で愛による結びつきの強さを様々な形で見せているが、一方で弟とその婚約者の関係はどうか。
酷い仕打ちを受けた彼女の絶望は『皆を助けるため』という大義名分だけで割り切れるとは思えないし、彼女を愛していたはずの弟だって同じはずだ。
いくら兄の頼みとはいえ他人を救うために助けられるはずの自分の婚約者の命と尊厳をチップにするなどどうかしている。
弟は一度は激昂したものの引き際はあっさりしたもので『本当に婚約者のことを愛していたのか?』と勘ぐってしまいたくなる展開だった。

また、仮に生き返ることができたとして彼女は主人公の弟を許せるのだろうか。
理屈では理解できても自分を最も大事にしてくれるはずの婚約者が自分の命をチップにすることを認めたなどと知って不信感を抱かないものだろうか。
それも凄惨なやり方で殺すという条件付の殺しを、である。
これを許して幸せな家庭を築けるのであれば度が過ぎた善人だ。
(もっとも善人だらけのデスゲームを謳う以上やはり彼女もその度が過ぎた善人なのだろうが)



このゲームを好評価しているのは間違いないが続編をプレイしたいとは思えないなんとも後味の悪い結末だった。
ノクターンノベルで分岐ルートを掲載しているようなのでそちらの展開に期待したい。