舞い散る粉雪。恋のはじまり。
あらすじ(要約)
それは、ある冬の日に始まった、淡い青春の物語――。
主人公は、街の学園に通う普通の男の子。
小説家の父親と看護婦の母親に育てられ、取り立てて道を踏み外すこともなく、用意されていたレールの上を走り続ける毎日だった。
多少は不満を感じないでもなかったが、友達と過ごす毎日は、それなりに楽しいと感じられるものだった。
だが、その日から、彼の生活はほんの少しだけいつもとは違うものになっていく。
きっかけは、父親が一人の孤児を自宅に引き取ってきたこと。
可愛いらしい女の子であった。
曰く、身よりのない彼女の里親になることにしたのだという。
突然「家族が増えました」などと言われても、主人公は戸惑うことしか出来ない。
それは引き取られてきた少女も同じの様子。
だから、二人は友達になることにする。
そして一緒に暮らしているとはいえ、友達が増えるだけなら問題はないと思い始める。
主人公は自分の友達にも彼女を紹介し、仲間に加えていこうとする。
一つの変化を除き、何も変わらない日常。
・・・でも、一つの変化が何かを変えつつあることを、
誰もがひっそりと感じている――。
---------- キリトリ -----------
ブランド:light(2004年発売)
シナリオ:NYAON、正田崇
原画キャラデザ:くすくす
音楽:樋口秀樹
ボーカル:white-lips
http://www.light.gr.jp/light/products/dearmy/index.htm
はい、しばらくぶりのレビューです。
以下DMFと略していきます。
現在は『ぱれっと』で活動中のNYAONくすくすコンビが一躍有名になった作品、それがDMFです。
珍しく副題がありまして、”more than friend and under sweethearts”(友達以上恋人未満)となっています。
この言葉、結構重要です。
・音楽
まずは主題歌。
最高。もう曲だけで泣ける。
white-lipsさんのライブあったら絶対行きます。
劇中BGMは全体的にいいですが特に主題歌のアレンジがよかったです。
・絵
この後のくすくす絵(もしらばやさくらシュトラッセ)ではかなり画力が上がっているんですよね。
原画水準は業界でも屈指なレベル。
しかし、満遍なく綺麗過ぎるのがタマにキズかもしれません。
・シナリオ
思春期の初心で遠回りな恋模様に共感したり、初々しさにニヤニヤできるエロゲです。
甘酸っぱい青春。
そんな、子供でも大人でもない時期のお話です。
DMFには飾り気や意外性がなく捻りも全くといっていい程存在しません。
決してすごい設定とか結末のゲームでもありません。
内容的に新しさもないし在り来たりだと思いますが、それでもここまで見せられればそれはすなわち王道。
パルフェでも思ったけど、DMFも王道エロゲの一つの完成形です。
それ故に安定した出来になっていると思えるし、絵と音楽の良さも相まって雰囲気のいい作品に仕上がっています。
生ぬるく感じる人もいると思いますが、これは胸を張って”純愛物語”と言えます。
キャラ立ては萌え要素を用いていることが多いですが、必ずしも萌えに依拠せずに各々の性格をそれなりに丁寧に描いているのはプラスです。
珍しく嫌いなヒロインがいませんでした。
声優陣も豪華です。
特にかわしまりのさんと西田こむぎさんの演技が光る!
また、キャラによってはシナリオに変化球を見せているところはユーザーに良い意味で迎合しているところでしょう(主に月夜ルート)。
テキストはまぁまぁですが、構成は凡作です。
少し練り不足が感じられ、人によっては物足りないとも思うでしょうが、これも王道故なのかなあ。
そして、俺がDMFで特筆すべきは主人公。
主人公は、好意や恋愛に臆病だったり恥ずかしい気持ちがあります。
自分に自信を持てないから、好かれていると気付いても鈍感なふりしてみたり、クールを気取ってみたり。
思春期独特の心理描写がうまく描かれていると思います。
主題歌の歌詞をよく聴けばいいと思うよ!
これをヘタレと受け取りイライラしながら読むのか、はたまた思春期の悩みと受け取るかはプレイヤー次第。
大体思春期真っ只中の高校生(登場人物はみな18歳以上なんて建前は置いておいて)の男子がそんなにうまく振舞えるわけが無いと思います。
言ってみれば初恋で、初めて女性と付き合うわけで、そこでうまく振舞えたと胸張って言える人がどれだけいるというのか(ちなみに俺の初恋はゲフンゲフン)。
話はそれますが、エロゲの主人公をヘタレへタレと言う人はよっぽど自分の恋愛経験に自信があるんでしょうね(それでも『○○のゲームの主人公はヘタレだ!どうにかならないの!?』と言ってしまいたくなるのはエロゲーマーの性なのか・・・)。
時には人に八つ当たり突っ張るけど芯は優しく必死に自立しようと頑張っている主人公と、互い関係の悪化への恐れなどで友情と愛情の間を右往左往するヒロイン。
冬にプレイすれば尚雰囲気が出るし、夏にプレイしてもそれはさわやかな一服の清涼剤。
そんな心温まる作品、”Dear My Friend”でした。