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k-pさんの黒と黒と黒の祭壇 〜蠱毒〜の長文感想

ユーザー
k-p
ゲーム
黒と黒と黒の祭壇 〜蠱毒〜
ブランド
C’s ware
得点
75
参照数
845

一言コメント

ユーディット様バンザイ

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 おそらく、プレイをしていない人の殆んどが、パッケージ表(左側)や裏(右側)を見る限りだと、ただの処女陵辱・調教ADVだと判断するだろうと思う。パッケージ裏にもそうやって書かれているし、“そういうゲーム”なんじゃないの? と。
 (エロゲーをやる人達の中の)一般論としてここまではなんら、間違ったことを言っちゃあいない、はず。

 じゃあ、この作品のシナリオライターが朱門優その人だと言えば、どうだろう。
 仮に氏を知っている人なら、プレイ前に想像していたゲーム内容とは違うんでしょと勘付いてくれるだろうし、氏を知らない人であっても、ここまでの語りで大体、そんじょそこいらにある陵辱調教ゲーでないことはもうなんとなく気付いている……よね。


 以下、作品名は『黒黒黒』と表記。


 つーわけで、黒黒黒は単なる処女陵辱調教ゲーかと思いきや、その実、設定に神話的な要素を取り入れた、戦乱の世で主人公が復讐を企てるダークファンタジー、なお話。
 物語の初めは、のっけから意味不明なキャラが出て来て処女陵辱調教シーンがいくつか、また、変化に乏しいイベントも続く。
 主にSM系統が多いけど、各々一回ほど、ゲテモノや放尿やスカトロなどもある。
 けど、それらのシーンはあくまでもライターが話を展開する上での手段に留まっていたし、一つひとつの尺も短く、本格的にそれ専門で作っているゲームに比べれば、正直薄すぎる。
 だから、それ(陵辱や調教)メインでこのゲームをやろうとすると、少々肩透かしをくらうだろうね。

 少々話がずれるけど、パッケージには「いつ処女を奪うか云々」と文句が書いている。が、プレイヤーが処女を奪うタイミングを本当にいつでも、それこそ調教シュミレーションゲームのように指定できるわけではない。
 あくまでも黒黒黒はアドベンチャーゲームだから、勘違いする人は少なさそうだけど、一応断っておく。

 話を戻す。
 その代わり、と言っちゃあなんだけど、話を進めていくと予想外の所から良いパンチが飛んでくる。
 上記で述べた意味不明なキャラと世界と主人公の真実が段々と呈し始め、また、神話的設定が輪郭を現し始めて、話が一気に加速するのだ。
 加えて、舞台が「戦乱の世」という設定も活きて来る。

 初めはそれこそ、「処女を調教する」という名の下でシナリオが進むのだけど、中盤辺りでは調教なんぞ何処吹く風、突如バトルシーンが始まったり、世界の真実を仄めかすキャラクターの応酬があったりと、ファンタジー物の醍醐味が大いに感じられた。
 また、ヒロインを置き去りにしてまで主人公の心情が良く描かれてもしていて、本当に進むべき道を見つけた時の主人公は、在り来たりな言葉だけど格好良いという他ない。ネタバレになるんで詳しくは語らないけど、黒黒黒は、主人公の救済物語でもある、といっても差し支えないんじゃないかな。

 ちなみに、ある程度までお話が進むと、処女陵辱調教シーンは、ぶっちゃけるとヒロインとちゅっちゅいちゃいちゃする程度の扱いにまで成り下がっていた(主にトゥルールートで)。
 エロイッカイダケならぬ、調教トカドウデモヨクナッテルゲーだよこれじゃあ。
 調教ADVと銘打ったにもかかわらず、こんな展開になってしまっていいんだか悪いんだか……といった感じなんだけれども、でも、その頃にはお話が大分面白くなってたから、別段気になるものでもないだろうね。

 そして物語ラスト。綺麗にまとめてはいる。
 でも、微妙にもやもやした物が残るかも。この場合は伏線が致命的に未回収とか、最後の最後でどんでん返しがある(朱門を知っている人はむしろこっちを想像するか?)とかではなくて……。
 と、言葉を濁すようで悪いけど、トゥルールートにおけるとあるキャラの扱いが……いやはや何とも。
 色んな人に愛される主人公を慕うってのは、辛いことなのかもなあ。


 全体的に物語を俯瞰すると、お話に破綻したところは特にないし、そもそもこれほど壮大な(物語の途中から風呂敷の広げ方が尋常ではないのよ)世界観設定であるにもかかわらず、コンパクトにまとまっている。
 朱門が初めてソロでシナリオを務めた作品だということも考慮した上で、ファンタジー物としてよく出来ているんじゃないかな。


 少々補足。
 朱門優といえば、神話や伝説、伝奇をシナリオに絡める手法を得意とするライター、というイメージがあるんだけれども、初ソロ作品から、既にライターの持ち味はしっかりと出ていて、しかもその後の作品も、大体同傾向なジャンルで書いてきている。
 あと、個人的な話。俺は神話や伝説系統のお話は、特別何らかの思い入れがあるほど好きってわけじゃないんだけども、綿密なプロットと分かりやすい起承転結、読みやすいテキスト、意外に萌えな要素もないわけではないキャラクターのおかげで、この作品は中々に楽しめたかな。


 結論。陵辱調教ゲーとしてプレイすると期待には沿えそうにない作品だけど、ダークファンタジーとしては十分よく出来ているんで、そういうのが好きな人にはお勧め出来ると思うよ!