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k-pさんの12の月のイヴの長文感想

ユーザー
k-p
ゲーム
12の月のイヴ
ブランド
minori
得点
70
参照数
626

一言コメント

この作品はSFではない。センス・オブ・ワンダーが感じられない。そして、「この作品はSFではない」と書くことは裏返すと「この作品はSFである」ということを暗に仄めかしているように見受けられるかもしれないが、仮に「この作品はSFである」という言い方を(その認識が正しいかどうかはさておき)したとしても、この作品の主題は別のところにあり、「この作品はSFである」という言い方をしたところでネタバレでもなんでもないのだ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

一言で言うと、「冗長」に尽きる。
「ウロボロスの環」というネタは好みなんだけど、この話は別に惹かれなかった。
ストーリーはカタルシスが感じられるものではあるんだけど、単純にテキストライティングで難あり。ストレートに書きすぎでしょう。そういうことを狙った作品ではないとはいえ、演出という点では有効だと思うんだけど、どうも画面演出に拘り過ぎているかと。minoriのお家芸と言われればそれまでだけど、いつも同じことをやるのが果たしてminorityなのかなあ……。
因みに「はじまりは、ここにする。」の意味が最後で分かった。なるほどね、と。


(14.03.11追記)
ここの感想を読みあさってようやくしっくりくる表現を思いついたので書き足します。
俺はよくSFというジャンルの小説を読むのだけど、そんな俺が思ったのは、「これは時間SFであっても、SFではない」ということだ。「SFではない」というのは、「SFマインドがない」ということ。
同時に、センス・オブ・ワンダーが感じられないのです。「不思議に驚き、考え、それを知りたいと思う」心理状態にどうしても至らなかった。それはライターが稚拙だということよりも、そもそもライターはSFが書きたくて書いたとは到底思えないということ。あくまでライターはキャラクターたちの心の動きややりとりを描きたかったのであって、SFというのはその装置にすぎないということ。簡単に言い換えると、ガンダムは宇宙が舞台だったり巨大ロボットを動かしたりするけどSFではないでしょ? あくまでSF的設定なだけでしょ? ということ。この作品もまた然りなのだ。
だから、この作品を俺は到底SF(SF作品)とは思えない。