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k-太さんのいれかわ お姉ちゃん、ぼくの身体でオナニーしちゃうの!?の長文感想

ユーザー
k-太
ゲーム
いれかわ お姉ちゃん、ぼくの身体でオナニーしちゃうの!?
ブランド
シルキーズSAKURA
得点
70
参照数
2436

一言コメント

TSとしては落第ギリギリ、廉価抜きゲーとしては中々に出来物なタイトル。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

TSの中でも更に幾つか、女体化や男体化、転生や並行世界などパターンはありますが、
本作は姉弟入れ替わりモノです。まぁタイトルから判る通りですね。
入れ替わりモノはTSというジャンルの中でも癖が強くなりやすいためか、あまり作品数が多くはなく評価も分かれがち。
その中でも私の中で傑作として不動の地位にあるのが「X Change Alternative2」と「かいわれ」の二本です。
(余談ですが、ココロコネクトが出版されてすぐのまだあまり有名じゃなかった頃、一部TS好きの間では
 コレまんまかいわれのパクリじゃんと物議を醸していたこともあったものです)
その二つに共通するのが、入れ替わりならではの心理描写とキャラ造形の変遷を伴うシナリオ展開の巧さ。
ここが非常に良かった。残念ながら本作はそういった観点からは、見るべき所はあまりないです。

TSみたいなニッチ属性、新作出してもらっただけ上等だろオラァン!とか、
ニッチ属性好きは目だけ肥えて金払い悪いからジャンルとして斜陽を迎えるんだよ!とか言われると何も言えないですが、
一人のTS好きとして、以下の詳細ではTSとしてイマイチなところ、抜きゲーとしては中々良く出来てるところとを
なるべく公平にレビューしようかなと思っております。

○音・声
(個人的には)減点。

まずBGMはフルプライスでもないのでまぁ曲数少ないけどこんなもんかな、と言った所。
OPやEDがそもそも無いので歌もありません。

次に声。これは結構重要なところなんですが、この作品は完全に抜きゲーに寄せた結果、二人とも女性声優で
主人公も女声としか聞こえない感じになってますね。どうしても男声がオカマ口調で喘ぐのを聞くのは萎えますから、
抜きゲーとしてなら正しい。女の出す男っぽい声、という範疇での演技は巧いとも思います。ベテランですし。
ただ…前述したXCA2やかいわれは、男性女性共に声優さんの頑張りがとても良かったんですよ。
入れ替わり相手の口調やキャラを見事に掴んで演じ分けてて、その仕事だけで感動できるレベルで。
そういう意味では、本作は別に女声2人割り当てる意味はあんまりなくて、主人公CVカットで良かったんじゃないかな、といった感じ。
どっちが今喋ってるのかところどころ混乱するところもあったし。

最後にSEなんですが、えらいプアな感じでしたね。
これ違ったら申し訳ないというか風評被害かもわかんないですが…潮吹きの「プシィー・・・ッ」って音。
・・・オッサンが口で言ってません? いや本当違ったら申し訳ないんだけど、そう聞こえてしまった時点でもうちょっと勘弁して
欲しくなっちゃいましてw ピストン音は逆に機械的で短い音が単調に繰り返されるだけなのでこれまた違和感あり。
エロSEを搭載したこと自体はありがたいことなので、クオリティはもうちょい頑張って欲しいところですね。

○システム
やや減点。

システム自体はエルフ・シルキーフレーム流用だと思うんですが、メッセージ速度の設定にバグがあるというか、
最速にしても一瞬では表示されず、メッセージ速度OFFにすると瞬間表示になるものの、再起動すると反映されていない状態に。
私はテキスト表示はデフォで瞬間表示にしとけよというタイプなので、これ地味にイラつきます。
解像度は1024×576。今時分の作品にしてはちょっと小さ目、まぁ廉価タイトルだからしょうがないかな。

選択肢はかなり多く、廉価タイトルながらある程度ゲームとして遊ばせようという気概を感じられて好感。
ただ、既レビューにもあるように全てのエンドがスタッフロールも何もなくタイトル画面に戻るのはちょっと。


○絵
高得点。

絵柄は実にいいです。豊満ながらだらしなく崩れない、ピンと張りのある身体つきは中々のシコリティ。
CG点数も多いし、どれも大きな崩れはなし。ただ、所謂エルフ・シルキー塗りではないですね。
あの狂気めいた写実塗りではなく普通のエロゲのそれなりに高品質な塗りって感じです。


○シナリオ・テキスト
TSとしては・・・しかし抜きゲーとしてなら・・・

本作に於ける入れ替えとは、「性への好奇心と快楽への歯止めをなくす」為の、まさしく抜きゲーであるための舞台装置
以上のものでは無いというのが私見です。だからこそ多様なシチュと、31ものシーン数、1回辺りのシーンの長さなどで
抜き所をしっかり担保している本作は廉価ながら抜きゲーとして良く出来ている、と言い切れる作品に仕上がっています。
ただ、TS好きとしてはそこだけを評価して高得点にする、という訳には行き辛い心情なのは確か。
入れ替え現象が何故起きたか? どういう法則性で起きるか? 暫定的にどう対処したか? 最終的にどう解決したか?
その辺を殆どうっちゃってるのも、本作が入れ替えではなく抜きを本旨としている証左と言えましょう。

残念な点は幾つかありますが、一つは入れ替わり後の性をあっさり受け入れすぎてるところですかね。
相手は男、しかも自分の顔なんてキスをするのもキツくて当然、フェラなんてもっての他なはずなんですが、
どうも相手は「おねえちゃん」だからという割り切りが強く、そこの抵抗感が全く描かれてません。
やっぱTSの基本である、「ココロとカラダの齟齬」を描かないのは勿体ないと思う訳ですよ。
頭では抵抗しても体では受け入れてしまっている、その背徳感なくして何の女体化か。

また、入れ替わり相手であるヒロイン側の心情描写が殆ど全く無かったのもマイナス。これは私的にはかなりのマイナス。
性への好奇心から快楽の虜へ沈み込んでいくという本作の筋立てなら、なおさら女になった男の快楽のみの
描写では片手落ちというものでしょう。
なんなら今あるシーンを半分ほど削り、ED後、回想シーンに男になったヒロイン視点をそれぞれ追加する
というやり方の方が私はよっぽど良かったと思います。
お互いがどう考え、自分がどう見えているのか、その探求こそが入れ替えモノの肝なんじゃないかな、と思いますねぇ。


○キャラ
主人公・瀬川 良樹
一言で言ってしまうと、女の腐ったようなの。
それを女にしてしまうのは、TS作品作りとしては相性のいいやり方とは言えないかな。
ギャップと変遷を楽しめませんからね。
ただ抜きゲーの主人公としては、意見を持たず快楽に流されやすい彼の性格は話が早くていいと思います。
でも彼の一人称視点で話進む中で、顔文字入れてくるの結構イラっとします^^;
CGだと女顔というよりショタ寄りイケメンって感じで、本文中で描写されてる程は女装が似合わなかったような。

ヒロイン・瀬川 絵里子
理不尽わがままお姉さま。
やっぱコッチ側の心理描写が無いから、今まで良樹のどこが好きだったのか、疎遠になってどうだったとか、如何にして
快楽に溺れていったのかとかそういう部分がイマイチ判りづらい。
身体が素直になる段で心も素直になり、そうなると可愛く見えては来るけど、そこに至るまではかなり不快なキャラですね。

・総評
と言う訳で、個人的にTSゲーとして見るとこれは赤点ギリギリ40点、抜きゲーとして見るなら中々優秀80点、
間を取って廉価作品であることを考慮して70点、となりました。
Crowd亡き今、新作でTS作品が出ることはほぼ望み薄ですし、あまり贅沢は言えない状況ではあるんですがね。
男の娘がある程度市民権を得て、「性別の境界があいまいである状態」に萌えを見出す動きが見られる昨今に
TS作品もいつか復権を果たしてくれたらなぁと思う次第であります。あんま本作と関係ない結びで申し訳ない。