本当に優しさにあふれた物語だった
プレイしたときの精神状態で作品に対する感じ方が変わるような気がした。あー仕事つらいなあって時のメンタルのほうがこの物語を味わえる気がする。
最初にプレイした竜胆愛ルートが衝撃的だった。エロゲでこんな話が味わえるなんて。それ以外のルートもとても良い。竜胆愛ルートと同じくらい好きなのが音川先輩ルート。主人公が最も内向的なルートだったが、そんな主人公が音川先輩を通して少しずつ自分と向き合う話だった。あの撫子先輩が所々で大事な働きをしているのが面白いし、音川先輩側の話には深入りせず描ききった点が作中で一貫した優しい物語の雰囲気を守っていると思う。好きすぎてしばらく経ってから音川先輩のルートをまたプレイしてしまうくらいだ。
ただ1つ違和感を覚えたルートは鈴村ルート。主人公や絵里香の考え方が他のルートと異なる気がした。パッチをあてるべきは絵里香ルートではなく鈴村ルートであって欲しかった。パッチのあたった絵里香ルートは色々と追加された要素があったけれど、2人の千夏に対する考え方の点ではパッチ前のほうが私は好きだった。パッチ後のそれは自分には少しポジティブに思えた。凍結された瑠璃ルートは他のルートでの瑠璃の様子を見せられた後では読んでみたい気持ちはある。WEBサイトに公開されているCGも魅力的だし。でもスタッフブログを読んだ今は万が一今後それが世に出たとしても読むのが少し怖い。そんな気分。
全体としてみれば上で挙げたマイナス要素なんて消し飛ぶくらいシナリオは本当に良かった。主人公の友人役であるジュンもトシが良い奴なんですよねぇ。良いエロゲには主人公の良い友人。
音楽も最高だった。Ducaさんの歌うOP『アイの庭』（作中では1度だけ流れたかな..??）は有名ですがED『夢遥か』もとても良い。原曲で聴いて良し、off vocalで聴いて良し、さらに言えば『夢遥か』のピアノアレンジバージョンがDucaさんのアルバム『12 Stories』の特典CDで聴けて、これも良し。ボーカルソングだけではなく安瀬聖さんのBGMも至高。初めて『星の魔法』を聴いたときは震えた。竜胆愛ルートを最初にプレイしたのでこれを初めて聞いたのが、先生が夜の旧校舎で貴ちゃんのことを主人公に打ち明けるシーンだった。もう鳥肌ものだった。『星の魔法』に限らずどれもお気に入りで、自分のなかではエロゲで最もお気に入りのサントラといっても過言ではない。サントラもOP/EDが入ったシングルも音川先輩がパッケージ（歌詞カード）に描かれているのが嬉しい。
全ルートを終えるまでに普通のエロゲ2作品を越えるくらい時間がかかった気がするが、この長さが苦痛になることもなく最後まで楽しめた。マイナスなことも書いたけれど、全体としてみればプラスの部分が圧倒していて、100点では足りないくらいである。この作品に出会えてよかった。ありがとう。