選ばれた題材が作品を通したメッセージ性にどうつながってるのかわからなかった
作品を通した「人工知能、AI」という題材と、「試してみるんだ、もう一度」を始めとした一度絶望した場所から復帰への第一歩を踏み出す という私が感じ取ったテーマとの結び合いをうまく感じ取れなかった。それ故人工知能を始めとしたSFに無理やりテーマを被せているだけのように感じてしまった点がいまいちだったと感じた大きなポイントだった。
また一貫したSF作品ととらえるならテーマとの調和もさしたる問題ではないが、SF作品として見たときにも少し粗が目立ったように感じる。特に自分がわからなかった、理解できなかった点は
1.アイの存在理由、役割
2.紗希に関する詳細
また2に付随して
日向子ルートと流花ルート、及び最終ルートでの島脱出後の主人公の状態の違い
この3点。
まず一番スッキリしなかった1のアイについて。
主人公はユウではなくアイと結ばれる道を選ぶが、「アイという存在をなぜユウが生み出したか」。これがはっきり書かれていないせいで主人公がアイを選んだことが全く受け入れられなかった。むしろユウに対して主人公は不誠実ではないか とまで感じてしまった自分もいた。アイのキャラクターは好きだが、存在意義がよくわからなかったのがもったいないと思った。
次に2,3に関して
SF作品であるなら起承転結の転結に関してはロジックが必要だと思う。その前提の元だが、紗希に関して多く語られていなかったせいで、「主人公が問題解決後にどういう状態になるか」の部分の論理がわからなかった。
日向子ルートでは仮面を被った主人公と紗希が協力した→主人公は寝たきりではなくなる
流花ルートでは仮面を被った主人公一人で問題解決→主人公は寝たきり
最終ルートでは仮面を捨て、不安を持ちながらも一歩を踏み出した→主人公は寝たきりじゃない
この3条件だけでは主人公がどうなったら助かるかがはっきりわからない。紗希に関して詳しく語られてもいないから最終ルートでなぜ助かったかもロジックとしてはいまいち納得いく自己回答が得られなかった。
またそれ故にテーマ性重視の作品として見ても、としてもSF重視として見ても、個人的にはどっちつかずのまま消化しきれなかったと感じてしまった。
少々冗長にネガティブなポイントを述べたが、絵、音楽、演出に関してはとてもハイクオリティで満足いく出来でした。だがそれゆえに雰囲気、演出でシナリオを誤魔化したのではないか?と思ってしまった。
SFであるならあえてすべて語らずブラックボックスに入れる魅力というのも確かにあるが、R18ゲームであり、恋愛要素があるゲームと捉えたならば、アイと結ばれるに至った動機くらいはしっかり作中に書いて欲しかった。