愛・友情・絆・ゲス・人間賛歌
プレイし終わってこれだけは断言できる。面白い。
序盤からぐいぐい引き込まれる展開と文章、全てはグランドルートのための布石と言うシナリオ構造、そして何より一癖も二癖もあって超人だがどこか人間臭い敵キャラたちの魅力と、全体を通してみれば大体いつもの正田ゲーだが戦神館ではよりシナリオ構成が洗練された印象を受けた。
特に、実質的なグランド√である水希√では、今までの伏線がすべて回収されていき、ラスボスを打倒するという一つの帰結に収束していくカタルシスは素晴らしい。
また、今回は敵キャラだけでなく仲間たちにもしっかりスポットが当てられているのもよかった。ヒロイン勢だけでなく、鳴滝や栄光といった脇役たちにも見せ場がちゃんと与えられている。主人公の四四八も好感が持てるやつだし、そんな彼らが愛や友情を糧として苦難を切り抜け、自分の壁を乗り越えて成長していく姿はどこか少年漫画チックで好ましかった。
もちろん敵の魅力も健在だ。主人公の仇敵である聖十郎を始めとして、キーラや神野、狩摩など作中に登場する敵キャラたちはどこか歪んで捻くれており、一癖も二癖もある連中ばかり。作中でも言及があるが、言ってしまえば全員小物なのだ。だが、小物だからこそ、妙に人間臭い。敵味方共に超人ばかりだったDiesや神咒などとは異なり、ここが戦神館の魅力の一つであると言えると思う。一方で、敵キャラの中では唯一大物である甘粕は、今までの正田ゲーのボスたちとは趣が異なるキャラクター性を持った人物であり、ある意味で正田が掲げる人間賛美を体現したキャラなんだろうなという印象を受けた。
シナリオだけでなく、CGや音楽も相変わらず素晴らしい。CG数自体は若干少ないように感じるかもしれないが、E-moteを導入したおかげで演出面に磨きがかかっており、立ち絵や一枚絵の一部を巧みに使っているため特にCG数が不足しているようには感じなかった。
ここまで褒め殺してきたが不満ももちろんある。例えば、全体的な戦闘シーンがそれほど多くないため仲間対敵の構図がほぼ決まってしまっていることだ。そのため、仲間たちの能力が一人の敵キャラにしかピンポイントで刺さらないようになっており、ご都合主義的な印象を受ける。
また、正田の思想がより一層ゲームの中に反映されていることも欠点の一つだ。男や女の在り方、人間賛歌などは過去の作品でも主張されてきたことだが、今回は作中にそれがより色濃く反映されている。特に、ジェンダーについてはそれこそ耳がタコになるほど繰り返される。自分はそこまで気にならなかったが、それが鼻につく人も少なくないだろう。
総評:Diesという最大の壁があるため巷の評価は分かれるだろうが、自分にとっては正田のゲームの中で一番面白かったし気に入った。バトル物エロゲが好きな人、厨二に抵抗のない人には胸を張ってオススメしたい。