様々な謎を散りばめ興味を惹かせ、思考を求められるゲームシステムによって、物語へ読者を自発的に誘おうとさせるこのスタイルはやっぱり結構好き。
元は99年にANOSシリーズ第1作としてX68000用で出された本作。
「ロストカラーズ 限定再装版」をプレイしてから
自転車創業さんのゲームをポチって、これが2本目になる。
正直言って「ロストカラーズ」(以下ロスカラ)と比較すると、ゲーム部分では劣る。
少し調べてみたところ、もとより本作はANOS第1作目であるからして、
当時はまだANOSシステムが今ほど洗練されておらず、記憶管理などがなかったらしい。
それに最新のANOSシステムを載っけているので、どこかマッチしていないような印象を受ける。
例えば、キーワードがロスカラに比べてかなり少なかったり、
記憶管理を使って先を進める場面がどうも分かりづらかったりと。
ロスカラだと、ここで何らかのキーワードが必要なのだなという部分がだいたい分かったのだが、
本作では、ん?どこで使えばいいんだ???と一番最初なんかは特に迷ってしまった。
それもあって?最後らへんのヴェルのやつは完全に詰まって
唯一攻略サイトを見てしまった。ありゃー全然気づけなかった。
ただ、その分シナリオに関しては「ロスカラ」より凝っている印象だ。
堕天使を倒した後に明かされるどんでん返しな真実。
ループの謎、誰が一体どういう目的で?、そしてそこに絡まる思惑。
どうにもチグハグだったキャラクターたちの態度や会話が理解できるようになる。
とは言っても、全ての謎が事細かに語られるわけではない。
詳しく描写されるのは決戦前夜くらいで、必ずしも説明する必要のないところは削られている。
それより前の過去も、決戦以降の未来も描かれることはない。
必要なヒントは与えたから、考えたければ考えろという何とも自転車創業らしい構成だ。
そして、本作のタイトルである「あの、素晴らしい をもう一度」。
見ればわかるように空白がある。これを『 』としよう。
例によって、『 』が作中で言葉によって明示されることはない。
ただ、本作はつまるところ『 』を追い求め手に入れようとする物語である。
この物語によって描かれた登場人物たちの背景、心情を加味するに、
やはりラストシーンに描かれたものこそが『 』に他ならないだろう。
最後の最後で『 』をもう一度手にできた時点で、この物語は幕を閉じるのであり、
キーワードに「これから」があったとしても、それが描かれることは無いのだ。
不完全燃焼感があると思う人もいるかもしれないが、私は綺麗な締めくくりだと思う。
あとどうでもいいことなんだけど
他の人のレビューを拝見して、リトとライで「リトライ」という洒落に初めて気づいた。
自分が如何に注意力散漫で、言葉を表面的に受け取っているかを思い知った。。。