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j7jhonさんの岩倉アリアの長文感想

ユーザー
j7jhon
ゲーム
岩倉アリア
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
80
参照数
315

一言コメント

サスペンス=百合+館モノ?

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

<サマリー>
プレイ本数が少ない人:〇?
サスペンスに興味ある人:△
館モノ好きな人:△
百合に興味ある人:〇?
絵や音に惹かれた人:◎

<詳細>
 絵に惹かれて購入。特に油絵風のキャラ立ち絵が新鮮に映ったので。

 システム面は特にコメントすることもなく。縁の下の力持ちなので「何も問題が起きていない」というのはそれだけで高評価。「物語を読む」に特化しているので本作の評価はそこで決まる。足引っ張ってないのでここはオールオッケー。

 で、肝心の本編。序盤の雰囲気は抜群で、気づいたときには物語に引き込まれるほど。でも、ストーリーを読む原動力が「岩倉家の謎を知りたい」だったので、それが明らかになる3章あたりから失速して、館からの脱出劇に変わる5章は斜め読みになってしまった。どのネタも「どこかで見たことあるな……」と感じてしまったのが大きい。既存の作品でも狂信者ってネタは大量にあるし、なんなら現実のほうが凄惨だったりするので、どうにも陳腐に感じられて気持ちが冷めてしまった。

 主人公の心理描写については、SNSで検索してみると、色々言われているらしい。確かに直情的で考えなしに行動する場面が多く見られた。まあ幼稚なところは否定できないが、10代の女の子だし、まあ設定相応だろうという感じ。この点は特に良くも悪くもなく。岩倉家の内部から変化を起こすのは難しいので、「ストーリーを動かすためにこういう人物像にしたんだろうなあ……」とは思った。複数ライターで人格が支離滅裂になったりしているわけでもないし。

 他にも、当初は油絵風の立ち絵が目当てだったはずなのに、途中から登場人物の目(特に女性キャラ)がやたらと大きく感じられて、魅力を感じられなくなってしまったのもある。その中にあって周の立ち絵は最後まで印象が変わらなくてよかった。周は声優さんの演技も良かった。

 百合ゲーとしてはどうなんだろう? 正直分からなかった。そこは他の人をあたってほしい。

 百合もサスペンスも館モノも昭和ロマン(?)も一通り取り揃えているし、文章表現も水準以上はあるし、ストーリーの破綻もないはず。背景や音のリソースは非常に魅力的であるにもかかわらず、全体的なパワーが今一つという感想になった。何か一つの要素に欠点があるというよりは、一つ一つの要素が物足りなかった、というのが総評になる。

 ここまで否定的な書きぶりになってしまったけど、途中でギブアップしたタイトルに比べればはるかに高水準。百合や館モノといった要素を新鮮に感じられる、暦の浅いプレイヤーならもしかすると刺さるかも。