「一昔前のラノベ」
発売直後(Switch 版 2019 年)くらいにプレイ。ギャルゲーマーの間でも全く話題を聞かない。そんなマイナーゲーム。プレイ当時は秋葉原の展示会(https://news.toranoana.jp/95369)にも足を運ぶくらいには好きだった。もう虎の穴も残っていなのだと思うと感慨深い。
ゲームシステム的には普通のノベルゲーム。読む以外の機能をバッサリカットしている。コンシューマのタイトルとしてはもう絶滅危惧種なんじゃないかなという印象。その手のゲームはもう Steam に移行しきった感がある。ディレクターのブログを読んでも「企画が通らない」って書いてあったし、コンシューマ機のほとんど最後のタイトルになるのかもしれない。フルプライスでは特に。
個人的には男性キャラのルートがあるのが印象に残っている。ギャルゲーの男性キャラルートは、それがあるというだけで評価が上がる。ロボノ Dash の昴√もそうだった。乙女ゲーの女の子が可愛く見えるのと同じ現象なのかもしれない。
そんなわけで、このタイトルもシナリオに評価が依存することになる。そのシナリオについては、一言で言えば「ゼロ年代~10 年代初頭にあったタイプのラノベ」が近い。何かにつけて手を挙げる貧乳ヒロイン、ロリ金髪天才少女、中二病から助平の男キャラまで、とにかくテンプレートなキャラクターが揃っている。そんなテンプレキャラクターが繰り広げる「高校生~大学生の青春譚」になるのだと思う。
ドタバタコメディがあって、ちょっと SF があって、下ネタがあって、最後に泣きゲーっぽく締める。これだけ見てもテンプレートな展開。かつてのラノベの平均値を取ったようなストーリー。読んだことが無ければ新鮮に感じるかも。しかし、盛り上がりはちゃんとある。シリアスとコメディのバランスも良い(かなりコメディに寄っているが)。雰囲気は古いものの、作りが雑というわけではない。
テンポが良いので量の割にはサクサク読める。シナリオのシーケンスが(メンバーの一人が取り上げられる → 異世界でその人の内面を見る → 問題を解決して異世界からの脱出劇)x 6 なので、展開の予想もつけやすい。「この天丼いつまで続くんや……」とダレることもない。
ただし、繰り返すが、良くも悪くもストーリーは一時代前。それに起因する注意点はいろいろある。例えば、セクハラ男キャラが暴力系ヒロインに折檻されるシーン。これは作中で何度も繰り返される。そういうシーンは現在(2023年)のモラル的に受け入れられるのか。他にも、テンプレートなキャラクターがテンプレートなコメディを演じるので、展開に白々しさを覚えるかもしれない。全体的に現代の時代性に合っているかと聞かれれば、首をかしげざるを得ない。「ラノベ男」のメタネタもきついひとにはきつい。キミはゲームの登場人物じゃないんかと。
総評
プラスとマイナスが半々といった印象。個人的にマイナスはあまり気にならなかったので割と楽しめた。ただ合わない人が確実にいるであろうことも理解できる。楽しめるかどうかは、このノリを受け入れられるかどうかにかかっている。でも受け入れられる人って既にラノベを大量に読んでいる人の可能性が高いわけで、そうでない人が本作に手を伸ばすとは思えないし、一番刺さる層は「古いノリを受け入れられる人で、かつ、平成のラノベを読んだことのない人」ということになる。果たしてそんな層がどれだけいるだろうか。刺さる層はいなくはないだろうけど、仮にいたとして、その層にどうやってリーチするんだろう……と思った。