人間誰もが持つ“弱い自分”を非常に丁寧で詩的な筆致で描き上げ、キャラ絵、音楽、背景とともに独特な世界観をつくりだした、まさに傑作でした。
人間誰もが持つ“弱い自分”を非常に丁寧で詩的な筆致で描き上げ、キャラ絵、音楽、背景とともに独特な世界観をつくりだした、まさに傑作でした。
“もう一度、学園生活を送ってみませんか”といういかにも受けねらいのような、ユーザーに媚びるような、そんな触れ込みをしておきながら、体験版の時点で単純な学園もの、リトライものでは終わらせないぞとでも言うかのような絶妙な伏線をちらつかせ、最終的に本編ではパッケージからは想像もできないような物語をつくりあげるやり口には舌を巻きました。
わたしも体験版をプレイする前までは羽休め的な雰囲気ゲーだと思っていました。ただ、背景はとても凝っているし、キャラ絵もしつこめの塗りも好みだったので少し気になる程度でした。それが体験版をやってみて、シナリオに触れ込みにはないなにか重大な秘密を隠しているのではないかと思わされ、本編が非常に気になって発売が待ち遠しくなりました。こうした“誘導”は実に見事だったと思います。
シナリオは4人の名前がクレジットされていますが、通して違いはわかりにくく、ちぐはぐになっているようには見受けられません。最終的に明らかになるネタや設定はある程度読めてしまい、使い古された感もあるのですが、このシナリオの眼目はそこにはなく、御雲島という白昼夢の舞台雰囲気と、弱い自分と向き合おうとする登場人物たちの心の動きを一貫してとても丁寧に描いていた点にあり、その点ライターのうまさが光りました。
ヒロイン3人とトゥルーの全4エンディングのみで、完走まで17時間と尺はあまり長くありません。もっと物語の雰囲気に浸っていたい気分にもさせられますが、冗長と感じる部分はなく、無駄な引き延ばしや余計なイチャラブがない分全体的に引き締まった印象を受けます。各キャラのHシーンは物語中は1回のみとし、おまけとしてもう1回を後で見れるようにしているシステムは、シナリオと雰囲気をなによりも重視した結果なのでしょう。
BGMは終始似たような曲調で、シリアスな場面になっても変わらずゆったりとした曲が流れ続けます。しかし、終わってみるとそれも極端なSFやサスペンスには走らない、この物語の夢のような舞台を引き立てていたのかもしれません。
最後に、「Re:LieF」は雰囲気ゲー好きにはおすすめできます。シナリオゲーかというとそうではなく、詩的、抽象的な表現や、多くを語らない、悪く言えば投げっぱなしの描写が好きでなはい人にはつらいかもしれません。むしろエロゲー的というよりけれん味のない小説的な、派手さはないが心にしみるいぶし銀のシナリオだと思います。個人的にはそのあたりを推したいです。あと、塗りがとても独特なので好みがわかれるかもしれません。