彼は『見届ける』、彼女の願いを、彼女が生きた証を
『この世ならざるモノ』の存在を眼にすることができる、特別な力を有した少年“東雲幸多”。
人の世にあって人と異なる存在と交わることの出来る力。
人に気味悪がれ人外に目を付けられる不毛な力。
それゆえ幸多は、いつからか人・人外、共にどちらにも属することのない、ただ《見届ける》だけの存在として自己を確立していった。
幸多は見届ける。生きている者の姿とその喜怒哀楽を。逝き残ってしまった者の存在とその未練妄執を。
幸多は見届け、そして刻んでいく。彼女たちが生きて逝った証を。───自分が、生きて居る証を。
(以上、OHPより抜粋)
このタイトルを見てもう発売されることはないだろう某同人ゲー(※カタカナ表記)を思い浮かべた人は私と握手しましょう。
目に止まったきっかけはそんなものでしたが、ストーリー紹介を見て何となく引き込まれるものがあり、そして連作ものは完結してからじゃないと手を出すのが怖いと言った舌の根も乾かぬ内にとうとう購入してしまったのです。
この世の人ならざる者が視える主人公が幼なじみを(18禁的な意味で)慰めたり暴力的なヒロインと拳で語り合っていたら、ヒロインの目的に気がついて協力していく……なお話。
いかにもエロシーンのために用意しましたな設定にはいはいエロゲエロゲと思ったりしましたが、プレイ後の後味はストーリー紹介を見てピンときた時の期待通り、いや期待以上のものがありました。
若干滑っているもののところどころはクスリとできるギャグ、そしてホロリとくるラスト。
駆け足気味ではあるものの纏まっている良作でした。
個人的に評価したいのはラストはご都合主義かもしれませんが、ちゃんと主人公が起こした「奇跡」だったということ。
そして友達がいないとか斜に構えているとか残念な主人公ではありますが、やることはきちんとやるお人好しの良主人公なのも好感が持てました。
怪異と関わらずあくまで見届けることしかしない主人公がどう変わっていくのかを期待していた身としては途中で彼の『見届ける』というスタンスがぶれていたのが気になりましたが、何もしない・できない主人公よりは比べるまでもなく良主人公でしょう。
ただ全体にわたって散りばめられているギャグシーンは好き嫌いが分かれそうかなと思います。
幼なじみとの下ネタ会話や主人公の一人ツッコミ、自虐ネタとラスト以外ほぼギャグばかりです。
それはエロシーンも例外ではなく。
エロシーンの初々しい雰囲気なぞ微塵も有りません。
そもそもエロシーンがどれも「手段」になり果てているため、愛を確かめ合うようなHに期待すると肩透かしかもです。
好意はあったかもしれませんが恋愛に至る描写もありませんし、そもそも……ですし。
タイトル通り主人公はヒロインの願いの行く末を見届ける役でしかないということを念頭においてプレイしたほうがいいかもしれません。
あと主人公が初対面で襲いかかってきたヒロインを逆にプロレス技でやり込めるのも人によっては嫌悪感があるのではないかなと思います。
一方的に主人公がヒロインにやり込められる展開が嫌いな人間には新鮮でこれは結構笑えるシーンでしたが。
しかしそれを差し引いても魅力のある作品だと言えます。
連作ものですが1話完結型なので尻切れトンボだったりすることはなく、心配していたことは大丈夫でした。
そして出来れば最後までこの物語の行く末を『見届け』たいなと思います。
以下、今後の伏線になりそうなこと
・義理の母親、義理の姉
確か読んでいた限りでは主人公の家族についての言及はされていなかったはず。
次作以降の伏線か?
・主人公が怪異に犯されたという一文
これも今後関わってくるかも