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isumiさんのシウテクトリの長文感想

ユーザー
isumi
ゲーム
シウテクトリ
ブランド
ふぉらん
得点
60
参照数
243

一言コメント

大切な人を救うために、支払ったその代償は

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

地下研究施設『シウテクトリ』――。

そこでは数多くの権力者たちの出資・協力により、秘密裏での生命の蘇生医療が研究されていた。若くしてこの研究施設に配属された『進藤 明』は、心臓病で命を失った恋人、 『天野梨奈』を蘇生させる為に自分の持てる時間の全てを注いで研究に没頭した。

そして、彼女の死から3年の月日が経った頃。
明は類稀なる自然治癒能力を持ったウィルス、『ヴァンパイア・ウィルス』の開発に成功する。


そして、明の希望通り

第一被験者には天野梨奈が選ばれた――。

(以上、作品紹介ページより抜粋)

ざくっと纏めると亡くなった恋人を蘇らすために自然の摂理に背いた主人公、しかし生き返らせた代償に……と言った感じのシナリオ。
序盤は梨奈を助けるために明がいかに努力をしてきたかというエピソード、中盤は生き返った梨奈との幸せな日々とその崩壊……ここまでは期待できたのですが。
予想はしていましたが、終盤は怒涛のご都合主義展開。
元々自己犠牲が好きではないというのもありますが、終盤の明の行動はそれでいいのかと思いたくなるし、ラストのあっさりとした解決にも拍子抜けしました。
そこに行きつくまでの積み重ねがあればご都合主義でも何でもしてくれてかまわないのですが、これはちょっと……。
序盤の明のように、その後の梨奈も努力をしていたというエピソードがあれば評価も変わっていたと思います。
それがすっ飛ばされているのでご都合主義であるとしか思えませんでした。
また、個人的にヒロインの梨奈にそこまで思い入れができなかったのも楽しめなかった原因でしょう。
可愛いとは思うのですがそれだけで主人公との乖離が起こってしまいました。
この手のヒロインが一人と言う作品には良くあることですが、そのヒロインに魅力が抱けないとどうしても点数が低くなってしまうんですよね。
主人公がヒロインのために嘆き悲しんでいても、画面の前のプレイヤーは冷めた目線でみてしまいます。

そして本編クリアー後に梨奈と奈緒海との出会いの話が追加されるのですが……。
梨奈編は本編の焼き直しで重複する部分が多く、そこまでってほどではありません。
しかしですよ!
奈緒海編はありきたりな展開ながらも、自分の感情を殺してまで主人公に協力する健気さが切なかったです。
こういう選ばれなかった側(と言うと語弊がありますが)のストーリーって大好きですね~。
プレイ後には彼女の評価が上がってしまいました。

あと本作は主人公を含めてフルボイスなのですが、セリフ一つ一つに対する感情の込め方がうまかったです。
梨奈の声も可愛らしかったので、これでもう少しプレイヤーに魅力を抱かせるシーンがあれば良かったのですが。