あ~~~もうっ!またプレイ順序間違えたぁぁぁぁぁぁ~~!!
序盤のあの場面で心が折れそうになって、それでも何とか奮い立たせてプレイしてみました。
『隷妃双奏』の時も思いましたが、ここの作品は(関連している作品なら)古い順でプレイするのがベスト。
というのも新しい作品の方がキャラが魅力的、且つかっこよく描かれているから。
プレイ順を間違えれば好きなキャラの魅力が半減してしまうことが多いのです。
隷妃のあの敵キャラとかあの敵キャラとか……。
本作も紅湖→ヴィザルの順でプレイしていればもっと楽しめたかもしれません。
とは言うものの、面白かったのもまた事実。
ヴィザルでは語られなかったリアン達の背景にも触れられていて新たな驚きもありました。(特に終盤でリアンの耳が聞こえなくなった理由は、なるほどと納得すると同時にやるせない気分になりました)
そういうわけで今回は良作一歩手前の69点をつけています。
ちなみに本作はヴィザルの裏ストーリー(発売日を考えると本作が表でヴィザルが裏かな)的な位置づけですが、ヴィザルはおろかコルクも出てこないのでどっちかというとアナザールート考えた方がいいかもしれません。
そして多分ヴィザルの方が正史だと思います。
では前置きが長くなりましたが、項目別に感想を書いていきます~。
・シナリオ
簡単に言うとエロゲー版『母をたずねて3千里』(バトルもちょろっとあるよ)でしょうか。
麓の村・カナで暮らすエルフのリアン。彼は血は繋がっていませんが、「お母さん」のセイルと日々穏やかに楽しく暮らしていました。
その幸せが犠牲に成り立っているとも知らずに。
しかしそんな犠牲の上に成り立つ幸せは、ある日いとも簡単に壊されてしまうのです。
そして彼はお母さんを取り戻すために、謎の少女と一緒に旅をしていきます。その先に待っているものがさらなる絶望だとしても。
というのが序盤の流れ。
今までの作品と違うのは主人公がなんの力も持たない少年であるということ。(最後までプレイするとあながちそうとも言えないのですが、全体的に見るとです)
彼にはエルやコルクのような超人めいた力はありません。
そして、お母さんに守られていた少年が生きていくには世界はあまりにも残酷すぎました。
一緒に旅をする少女・レヴィアルも助けてはくれますが、それはある思惑があるからで純粋な思いからではありません。
弱い彼は少しでも気を抜けばすぐにでも世界に呑まれてしまいます。
だったら、どうするか?
簡単です。呑まれる前に、呑みこめばいい。
そうして真っ白けだった彼は徐々に黒く染まっていくことになるのです。
一方でセイルもまたカナの村にいたころの彼女ではありません。
たび重なる常軌を逸した凌辱によって、彼女は段々と息子の顔が思い出せなくなっていきます。
自分を犠牲にしても守りたかった息子の顔を忘れ、快楽の虜になり快楽のためだけに生きている彼女。
そこにあの村にいたころの「綺麗だけど全てが低スペックの残念なお母さん」の姿はどこにもありません。
変わってしまった息子、変えられてしまった母親。悪によって引き裂かれた親子は、どこまでもすれ違っていきます。
こう書くとすっごい私好みのシナリオでストーリー紹介だけで高得点をつけたくなるのですが、いかんせん色々端折り過ぎています。
まずセイルがサブナックに連れ去られてすぐに1年が経過するのがいただけない。
その間にリアンはダークサイドに堕ちたようですが、そこの描写は全くなし。私はそのダークサイドに堕ちる過程が見たかったのに!
初めて人を殺した彼が胃の中のものを全部ぶちまけるシーンとか、徐々に人を殺すことに抵抗を感じなくなっている自分に戸惑いを覚えるシーンとか、そういう素敵なシーンが見たかったのに!見たかったのに!!!
セイルサイドの方もエロシーンエロシーン、またエロシーンで心理描写がほとんどなく、堕ちていく過程も無かったのが残念。
何時の間にやら堕ちていってしまうので、終盤の再会シーンでのインパクトが足りなかったですね。
せっかくいい材料がそろっているのに生かせていないのがもったいない。
エロシーンを減らしてもいいので2人が堕ちていく過程の方をじっくり・ねちっこく描いて欲しかったです。
ここの作品には欠かせないバトルシーンもありますが、これも端折られているので燃え度は低め。
せっかくの宿敵との対決があんな形で終わってしまうので不完全燃焼感が強いです。
特にフラウの最期はどちらのルートも残念以外の何物でもありませんでした。あれは残念すぎる。アレではただの小物ではないですか。
全体的に悪役の掘り下げが甘かったのも燃え度が低く感じられた原因かもしれません。
サブナックの過去はもう少し描いても良かった気がします。
ではどこが良かったかというと、序盤のほのぼのシーンと鬱シーンとのギャップですね。
このギャップは凄い。
幸せに暮らしていたエルフの親子が引き裂かれるシーンは本当に胸が痛みました。
プレイヤーに悪役に対して憎しみを持たせ、主人公に感情移入させる手段としては素晴らしい。
残念なのは私がヴィザルをプレイ済みだったという1点のみ。……魅力は半減しているとはいえ、あっちの印象が強すぎて複雑。
また、↑とも関連しますが序盤のほのぼのシーンは相変わらず面白い。(今回短めですが)
へっぽこお母さんとしっかり者の息子のやり取りはとてもいい雰囲気で、見ているこっちまで温かな気持ちになれます。
そして爽快感とは程遠い物悲しいラスト、アフターストーリー『悪徒の規律』においてのリアンの悲しい決意など、今までプレイした雨傘日傘作品の作風とは違っていて新鮮でした。
上でも述べましたが材料は一級品。セイルの息子を想う気持ちなどは要所要所は良かったので、味付けを変えればとんでもない作品に仕上がったかもしれません。
・グラフィック
いつもながら通常CGのクオリティは高いです。枚数も相変わらず多い!
特にレヴィアルvsクリノラスはアニメのように動きます。(このCGは確かヴィザルの方でも使われていましたね~)
立ち絵も多く、表情がころころ変わるので見ていて楽しいです。お気に入りはリアンの正面とレヴィアルの横顔。
この2つは特にかわいい。
ただ立ち絵については、サブナックとクリノラスはCGと立ち絵に差があり過ぎて違和感が。
特にクリノラスはCGが素晴らしいだけに、立ち絵とのギャップに戸惑いました。
HCGもいつも通りムチムチで好みではないのですが、表情はここの作品の中で一番好きでした。セイルのうつろな表情がいいですね。
・エロシーン
これも相変わらずとしか言いようがないのですが……えぐいです。
異種姦、浣腸、露出プレイ、妊娠・出産と何でもござれで、見ていてうへぁ~となります。
尿道を犯されるというのが一体どの層に需要があるのかさっぱり分かりません。
序盤の輪姦シーンが普通に見えるくらい。
悲惨さをプレイヤーに伝えるという目的としては、これ以上ないっていうくらい効果的でしたけど。
あと今回サブナックとセイルのエロシーンがあるのですが、何だか不思議な感じ。
そういえばこいつ娼館の館長だったなぁと、そんなことを思いました。
ヴィザルでの愉快なイメージがあるせいか、見てはいけないものを見てしまったような気がします。
それと最後に。ショタエロは好きではありませんが、本作に限って言えば絶望感の演出のために入れても良かったかもと思います。
(そうまでしないと生きていけないとプレイヤーに印象付けるために)
ところで、これも一種の寝取られなんでしょうか?
・キャラ
序盤以降は駆け足で進んでいくので魅力は抱きにくいのですが、リアンもセイルもレヴィアルも序盤だけならとても魅力的。
ヴィザルでのイメージが強すぎて、リアンにいい感情を抱けないのでは?という心配は杞憂に終わってよかったです。
ほのぼのから一気に落とす展開のせいですんなりと入り込めまし、レヴィアルも自分を醜いと認めた上で行動しているので不愉快には思いませんでした。
また、セイルさんのキャラ設定は本作の方が優れています。終盤のとあるシーンでのセリフは息子を思う母親の気持ちが伝わってきて、思わずジーンとしてしまいました。
アフターストーリー3本目での相変わらずな駄目っぷりもグッド。
リアン側のキャラクターは問題なし。
しかし、これが本作における一番のがっかりポイント。
ヴィザルではあんなに魅力的だったフラウ、クリノラス、サブナック(悪役側)に魅力がありません。
しょぼい、しょぼすぎる。
特にフラウ。臆病者でずるがしこいとても残念なおかまでした。
サブナックもその出生の秘密に踏み込んでいれば魅力を感じたのかもしれませんが、これだけ見るとどうにも残念な悪役です。
クリノラスは……弱い。
・声
リアンの声が微妙…なんですがヴィザル、紅湖とプレイしているうちに気にならなくなってきています。
むしろ少数派でしょうがリアンはこの声じゃないと駄目と思えるようにまでなりました。
さすがに鼻詰まりみたいな声はもう少し改善して欲しいですが。
声はクリノラス、サブナック、フラウの声が良かったです。フラウの声は向こうよりもこっちの方が好きです。
他の人の演技も問題なし。
が、音質が悪く聞き取りにくいのがネック。
リアンの声も下手というよりは、音質が悪いせいというのもある気がします。
材料は良かったのに料理の仕方が今一歩だった、もったいない作品。というか、ここの作品で私が微妙と評価したもの(50点とか65点とか)は皆素材はいいんだけど……なものばかりです。
リアンとセイルがダークサイドに堕ちていく過程、悪役側の描写、バトルシーンがもっとしっかり描かれていたら80点くらいはいったのではないかと思います。
とは言え結末は分かっているものの、最後まで飽きずに読ませてくれるストーリー展開、魅力的なキャラクター、演出など目を見張るものが多いのも事実。
アフターストーリーの微妙に後味の良くない終わり方も好きです。
題材の良さとこれらのことを踏まえて69点をつけておきます。
以下、ネタばれ感想(ヴィザルのネタばれを含みます)
うわぁぁぁぁ。クリノラス死んじゃったのかー。
そうだろうなぁとは思っていたけどショックだな。
向こうと展開が違うのはコルクがいるかいないかなんでしょうね。
最期としては向こうの方が好みですが、こっちもなかなか悪くなかったです。
というか悪役3人の中で一番恵まれていたんじゃないかと思います。瀕死状態で彼女を追ってきて、そして再戦までできたのですから。
ただ……弱い。
歌姫とそれなりに渡り合えるところから見るとまぁまぁ強いのでしょうが、あの世界はチートキャラがいっぱいいるのでどうしても見劣りしてしまいますね。
上のキャラクターの項目でも書きましたが、果たしてセイルを哀憎の狂気に仕立て上げる必要があったのか?と疑問に思いました。
登場人物全て最強キャラにせんでも、一人くらい息子ことに関しては最強なキャラクターがいても良かったと思うのです。
本作ではセイルはリアンのお母さんなのに、ヴィザルでは自分の境遇すらも利用する狂った母親にしか見えないのが不満でした。
これだけに限って言えば本作の方が優れていたと思いますね。リアンがダークエルフ化するのを止めるシーンではグッときましたから。
結局最後にリアンを殺すのは、セイルなのかコルクなのか?
ただコルクのいないこの世界と違って、コルクが悪徒のルールを否定した世界ではまた違った未来になるのかもしれませんね。
それがわかるのはそれから800年後?なのでしょうが。
どうでもいいことなんですが、リアンって小学生くらい?と思っていたら作中で青年と書かれていてびっくりしました。
あの声はどうみても少年だ。アレで青年はさすがに無理があるのではなかろうか。