これは優しくて、悲しい御伽話。久しぶりに面白くて一気にプレイしてしまったノベルゲーム。4章の微妙さはちょっと減点対象ですが、それを差っ引いても非常にいいゲームです。近親相姦、レズと越えないといけないハードルは割とありますが、大丈夫な人はぜひプレイしてみてください。お勧めです!
それは、不思議な物語。
今ではないいつか、此処ではない何処か。
生きて動く人形たちの住む、『人形の国』の物語。
それは、恐ろしい物語。
悪魔が住むといわれる『黒い森』。
そこへ迷い込んだリーゼは、黒い森の悪魔と出会います。
それは、優しい物語。
『黒い森の悪魔』と呼ばれる少女型人形、ユーリス。
彼女はリーゼを通し、人々の優しさに触れてゆきます。
それは、悲しい物語。
変えられない運命、避けられない別離。
彼女たちには何の救いも、なかったのでしょうか。
―――それは、いつか夢にみた物語―――。
(以上HPより引用)
人形が生きて動く不思議な国、そしてそんな国のそばに存在する悪魔の棲む黒い森。
お話は黒い森に迷い込んだ元人形のリーゼが、悪魔と呼ばれる人形遣いの人形ユーリスに出会うところから始まります。
全4章構成で、1章クリアするたびに補足ストーリーが2つ追加されます。なので全部で12本のストーリーからなっています。
全体的な感想としては終盤までは本当に面白かったんだけど、4章がね~…と言ったところ。一応綺麗に纏まってはいるのですが、うーん。
ただ、そこまでは本当に面白かったです。
1章の救いのない悲しい終わりも、2章の最後の盛り上がりも、3章の少しだけハッピーEDもどれも好きな展開で、最後のまとめに期待していたんですけどね。
期待しすぎたのでしょうか。
では、個別に感想を書いていきます。
シナリオ
1章 黒い森の悪魔
童話のように第3者視点で語られるお話。ゲームにしては珍しい「です、ます」調だったのが印象的でした。
ものすごく雰囲気がいいです。人形も含めてとにかくみんな暖かくていい人ばかりで、とても最後が悲劇になるようには思えません。
ユーリスのデレやリーゼのアワアワしてる姿やセリカのとぼけたクールっぷりや、すべてが見ていて微笑ましく面白い。
ここまで嫌なキャラがいないってのも久しぶりですね。いい人だと思っていたのに最後にやりやがった…なんて某ゲームのようなのもいませんし。
そしてこのゲームの雰囲気作りに一役買っているのは、立ち絵の表情。決してうまいとは言えない絵なんですが、とにかくよく表情が変わって見ていて楽しいです。
リーゼの小動物っぽい表情やユーリスの照れ顔はたまらなく可愛いです。
リーゼのおかげで徐々に変わっていくユーリス、マキナの切ない思い…人形たちの楽しくもどこか切ないお話を楽しんでいたら…うわぁ。
リーゼとユーリスのバカップルっぽいやり取りを微笑ましく思っていた矢先にあれですか。
その後はもうどう足掻いても悲しい結末になるしかなく、バッドEDへ。
1章に救いはありませんが、ユーリスが覚醒してからの展開は燃えるシーンが多くてグッド。特にユーリスが最後に名乗るシーンはかっこよかったです。
ユーリスが○○を抱えているCGもぞくっとしました。
そして、1章終了後に追加される補足ストーリーではユーリスの過去と本編のその後が明らかになります。
過去の黒いユーリスが可愛かったですが、しょうがないとは言えやっぱ悲劇なんですよね。
本編のその後は…察してください。でも意外とこの終わり方は嫌いではなかったり…。
2章 わたしがいて、あなたがいる
1章では小動物チックだったリーゼ視点の話。大体の流れは1章とほぼ同じですが、結末はまったく違います。
それと1章だと壊れてしまったとある人も救われます。実質的なハッピーED?
で、一番言いたいのは……あなた誰?
いやいやいやリーゼさんが変わりすぎなんですよ。出だしの一人称で誰視点の話だ?と思ったくらい。
このゲームにおける一番のツンデレキャラってユーリスじゃなくてリーゼなんじゃない…そんな気がしてきました。
特にユーリスに対する心境の変化とか、どこのツンデレですか?ただもうちょっとそこに行くまでの心理描写が欲しかったな。
1章ではリーゼは脇キャラでしたが、2章ではリーゼが活躍します。エルファイアスとの駆け引きのシーンは燃えましたね~。
その後もユーリスとフリードリヒの親子のシーンにうるっときて、ユーリス登場シーンでテンションが上がって盛り上がったまま気持ちよく終われました。
マキナやセリカのことを思うと完全なハッピーEDとは言い難いですが、綺麗に纏まっているのではないでしょうか。
ユーリスが人間になるシーンはベタと言えばベタベタ過ぎるのですが、それでも1章が1章だったので多少のご都合主義には目を瞑ります。
…で、気持ちよく終わったと思いきや補足ストーリーで?????あれ?もしかして救われてない…の?
補足ストーリーはリーゼと父親の最後の会話が印象に残っています。親子のシーンはベタですがやはりいい。
3章 我が愛しき人形の姫
2章までは完全に報われないキャラだったマキナが主役。
ユーリスを諦めようとするマキナの思いにはグッときます。こういう終わりが予め分かっている関係は大好きです。
…がユーリスとマキナの50年があまり書かれていないので、ユーリスの行動に違和感を感じました。
どうしてユーリスがリーゼではなくマキナを選んだのか?
ゲームでは描いていない積み重ねの部分があったとしても、もう少しそこの描写があっても良かったんじゃないかな~と思いました。
最後が綺麗に纏まっていただけに…。
いや、本当終盤の展開は涙腺が緩むくらい良かったんですよ。特にマキナとユーリスのドア越しの会話のシーンは切なくて綺麗で好きです。
桜のシーンもベタですが…やばい涙腺がぁぁぁぁぁぁぁ。
そして補足を読むことで、4章へ。
この時点では次の話はセリカ視点かなと思っていました。
4章 人形たちの森
…………あ…れ…?誰お前?
主人公はいきなりユーリとかいう男に。妹はセリカではなく「セリア」、さらにはリザにマティアラ?一体どうなっているんだ?
???のまま進んでいきますが、どうやらユーリカの物語もユーリの物語も一冊の「本」のようなものであるらしいです。
うーん…納得できるようなできないような。
何だか主人公が受け付けません。
近親相姦という禁忌を犯しているのに妙に軽いし、妹をそういう目で見るようになったという理由がいまいち。
そもそも妹を抱いているという重みが主人公に感じられません。2回目のHシーンは色々ぶち壊し。背徳感の欠片も御座いません。
近親相姦は背徳感が命です。もっと背徳感を!!
ばれた後も私はルイーダさん寄りの意見なんですよね…。子供が子供同士で生きていくなんてのは難しいと思いますし。
ラストも私の理解力が足りないせいか???でした。
つまりは1章のバッドEDがユーリスの正しい未来であり、2章や3章はユーリスが見ていたそうあって欲しかった未来(願望)ということなのでしょうか。
そしてユーリスの物語はユーリによってハッピーEDとなる…でいいのかな?
補足見る限り主人公とセリアは幸せに暮らしているようですが、うーんハッピーEDなのかなぁ。
まとめ
人形の国のお話と思いきや最後の最後で意外な展開になってしまいました。
これはこれでありなのかもしれませんが、やはり人形の国の物語だけで完結させてほしかったです。
それと所々にはいるパロネタはこの雰囲気にそぐわなかった気がします。特に4章の絶○先生ネタは浮いてました。
パロネタに頼らなくても十分日常シーンは面白かったので、次回作以降はキャラの掛け合い一本で行って欲しいですね。
キャラクター
どのキャラもみんないい味を出していますね。
ツンデレと見せかけてデレデレのユーリスも、腹黒リーゼも、セリカもマキナもエルも…。レティシアのクーデレっぷりも萌えます。バカップル万歳。
一番好きなのはやはりユーリス……と見せかけて実は脇も脇なアゼルだったり。
いやーああいう馬鹿みたいに(誉め言葉)一途なキャラって大好きなんです。30年間片思いとかたまらない。
その一途な思いの報われなさもひっくるめて好きなキャラです。もう少しユーリスと語り合うシーンも欲しかったな~。
エロシーン
本作におけるエロシーンは「ほぼ」女の子同士で構成されています。(マキナとユーリスのも女の子同士でいいですよね?)
ほぼというのはノーマルなものもあるからでして。でも、ノーマルなのは1シーンを除いて近親なんですよね…。
だからまともなHシーンは1つしかないといってもいいでしょう。レズと近親に嫌悪感を抱く人にはお勧めできません。
エロシーン自体には問題はありませんでしたが、リーゼとユーリスの初Hシーンは1、2章とも唐突に感じました。
意外だったのは18禁という制限がちゃんとゲームで生かされていたこと。
そう感じたのはリリスとトーラスのエロシーンだったのですが、この痛々しいまでに切ない関係は18禁ではないと描けないと思います。
リリスの家族を失うことへの悲しみはエロシーンがあってこそだと感じました。
ちなみにエロシーンではないのですが、1か所(多分)男の子同士のちゅーがあります。
グラフィック
立ち絵はリーゼの正面向きやその他にも違和感があるものがあります。が、そんなことよりも表情がコロコロ変わるのが非常に魅力的。
ユーリスの照れ顔が可愛いです。
CGについても1章のユーリスとリーゼの初Hはリーゼがむちむちすぎて違和感がありましたが、それ以降はよくなっています。
特に4章のセリアH(2回目)の汁描写はなかなかのもの。Hシーン自体は展開のこともあり好きではありませんが、この汁描写は頑張っています。
ちゃんと3回目まであるとは…。
お気に入りCGは1章ユーリス覚醒(?)、ユーリスとフリードリヒの最後の親子の会話(2章)、3章のマキナの笑顔。
好きなCGがあるのにCG鑑賞がないのが惜しまれます。
4章で一気に伏線回収とか大きな仕掛けがあれば名作になっていたかもしれない作品。
1、2、3章の雰囲気が好きだったので、4章次第では90点は行くかもしれないと思っていたのに4章の微妙さが残念でなりません。
ただ一言感想に書いた通り、それを差っ引いてもいい作品であるのでレズや近親相姦が大丈夫ならお勧めします。
このボリュームでこの値段(1050円)ならやってみて損はないと思いますよ。私もグダグダ文句を言っておりますが、少なくとも値段以上には楽しめました。
点数は基本点80点、4章-3点の77点で。
このゲーム中盤まで親子愛や色々な愛を描いたものだと思っていました。もしそれを中心に描いていたらもう+5点してたかも。