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isumiさんのゲルニカの長文感想

ユーザー
isumi
ゲーム
ゲルニカ
ブランド
Nightmare Syndrome
得点
85
参照数
1604

一言コメント

『大人』は虐げて虐げて痛みつけて殺す。それが、僕たちの、平和、だった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

そこは、子供による子供のための、未完成の王国。

入国条件はただ一つ、あなたが子供であること。

もしも貴方が、無力で、か弱い子供ならば

この王国にいらっしゃい。

国は全力をかけて、貴方のことを守りましょう。





ただし、


貴方がもし、我々の天敵の『大人』ならば。

その時は――





国は、容赦なく、貴方を―――








フリーゲーム インモラルADV プレイ時間2時間 BL要素なし
公開日の日にちがわからなかったので05/01としておきました。
ストーリーと一言感想に書いた言葉に惹かれてプレイ。
相変わらずえげつない展開が多いですね。…大好きですが。
何だかんだ言いつつここのゲーム12作品中10作品はプレイしました。
会話だけだと鬼ガナクが一番ですが、今のところこれが一番好きです。

子供だけの王国に迷い込んだ青年は、国のルールに従い殺される。
が、なぜか死ななかった青年は「コマドリ」と名付けられその王国で暮らすことになった。
コマドリという名はマザーグースに由来するそうです。

まず、音楽がいいです。特にタイトル画面のが。
暗めの曲が好きなので他の音楽も好みのものばかりでした。
絵については毎度のことながら可愛いです。これで全員♂でなければなぁ…
特にメイ、アンネ、アラクネは女の子でもいいと思うんだ。

オトナは殺すと言っている割にみんな普通に接してくれます。でも大丈夫です。マリアがいますから…
彼のやることはシャレになりません。(○○に○○○を入れるとこなんて特に)でもここは「子供の王国」なんで彼のやっていることは正しいのです。だから彼のやることに腹を立てて彼を殴ったとしても、罰せられるのはコマドリの方です。理不尽。
ちなみにヤンデレ。まぁヤンもデレも向けられるのはコマドリに、ではなくて兄のメイにですが。
彼だけは最後まで同情できませんでした。
他のキャラではメイがいいですね。特に個別イベントは綺麗でした。そういえば「食べること」が究極の愛情表現だという言葉をどこかで聞いたことがあるんですが、どこだったかな…?

ストーリーは暗め。ここは明るいゲームよりも、ど暗いゲームの方がうまいと思います。あくまで私の主観ですが。
ENDは3つで初回はバッドエンド固定。個別ENDはありませんが、条件を満たせば個別イベントは見れます。マリアにムカついた人にはマリアのイベントがお勧め。ざまーみろと思いました。(最低ですね…
ENDはどれも救いはないです。初回プレイ時は鬱になります。ただ2回目からはそんなにインパクトはないかな。あと、初回はあれこれ考えるよりもこの雰囲気に浸りながら適当に進めていた方が楽しめるかと。

気になったのは場所移動選択性なので整合性がとれていないところ。
具体的に言うとある場所で主人公が王国から逃げるイベントがあって、その後続けてそこを選ばないとなぜか逃げたはずの主人公が王国でメイと会話している…というところ。瞬間移動???
会話シーンも条件を満たしていないと、同じ会話を見続ける羽目になります。
そして一番はスタッフロールのあれ。ホラーじゃないんだから…
特に再プレイ時は余計そう感じました。

このゲーム少し前にやった時は彼らの言う「戦争」の意味がわからずただの鬱ゲーかと思っていました。
でも最近になって再プレイしてみたところ戦争の意味が何となくわかり、それと同時にやるせない気分になりました。
これはとても悲しい話なんだと思います。ラストのCGや彼の言葉はそう思うとものすごい切ないです。ラストのCGなんか初回プレイ時には見つけられなかった、ある事に気づいてね…もうやるせないというか…
それだけにやはりスタッフロールで若干台無しになった感が…
もし彼らの言う「戦争」が私の想象通りのものだとしたら、きっとこの戦争には永遠に終わりが来ないし、そして彼とコマドリとの約束は永遠に果たされることはないのでしょう。

いろいろ投げっぱなしの部分があり、また粗もありますがそれよりも私にはtureのラストの衝撃があまりにも強かったのでこの点数。

願わくば、未完成の王国に行く子どもがいなくなることを―――                                                


以下、ネタバレ感想



























コックローチ(Cockroach)=ゴキブリ
つまりアンネは最初からコマドリをそういう目で見ていて、だからあんなものを食べさせていたと。
ゴキブリには残飯で十分ですから。
この単語を知らなければ、あそこでもっとああああああとなったかもしれませんが、何となく序盤でわかってしまいであああくらいでしたね。
どうして水性コックローチなんて単語がチラついてしまったんだろう…。
あれさえチラつかなければ、最後はもっと驚けたのにー…。



別の意味で心に残ったマリアの台詞

「愛してるの、本当。兄さん以外、何も要らない。兄さんの中にいるのは、僕だけで良い、兄さんは、僕だけの、物だもの」
「兄さんは僕だけのものなの、兄さんは僕のもので良いの、兄さんは僕が、ずっと守ってあげるんだから。兄さんのすべては僕のものなの」

女の子だったらなぁ…
それだけが悔やまれます。
このイベントの後、なるほど確かに「自己中心的な博愛」は彼に一番ふさわしいなと思いました。

あと、このゲームにおける大人って何かの比喩表現なのかな。
戦争=○○だったので、大人も文字通りの意味ではない気がします。
それとこのゲームってもしやループものなのかな。
1回目のBADからtrueへの繋がりを見てそう思えました。コマドリのセリフもそれだと説明付きますし。

(2009/04/27 追記)
何だかんだでトゥルー3回目クリアー…どんだけやっているんだよ私。
いやー、再プレイの度にどんどん彼らが愛おしくなっていきます。マリア以外。
何度聞いてもアンネの「仕方ない、仕方ない」は切ないですね。
主人公が逃げた後、絶望の中で無理やり納得させる(諦める)ために使っていたのかなーと思うと…。

えっと作者様のブログを拝見したところ、どうやらゲルニカがリメイクされるようです。
……マジっすか!?ホントにホントですよね!?
うわ―ものすごい楽しみです。どうやらマリアのイベントなどが追加されるらしい。
…マリアはいいから、メイのイベントが欲しいな。と言いつつ、リメイク公開後は「マリアー!!」とか言っているかもしれませんね。
何はともあれ、首を長くして待っています。