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isoisoさんの11月のアルカディアの長文感想

ユーザー
isoiso
ゲーム
11月のアルカディア
ブランド
LevoL
得点
75

一言コメント

ハトリ・アイル・デビルーク。デビルーク星の第4王女!(※違います)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

■悪かった点

・主人公がオーブを狙う動機
理解は出来るが共感は出来ない。
というのも事故で死んだ妹のシオンが、読み手にとって絶対生き返らせたい魅力的なキャラクターとして描かれていない為。
読み手にしてみれば、妹と過ごした時間は過去回想のみで、肉親が大事という当たり前の事実が唯一の原動力。
物語の根幹であるのだから、シオンを愛おしい妹として魅せた上で殺し、主人公に感情移入が出来るよう話を作り上げて欲しかった。


・計画性の無さ
異能や身体能力が実戦闘で活かせるわけではなく、智謀を巡らすタイプの主人公。
そんな彼が、貴台学園に入学する前からオーブ奪取の計画を企てていたとなれば、さぞかし素晴らしい前準備がされているのだろうと期待した。
だが蓋を開けてみれば、チーズよりも穴だらけな杜撰な計画。
行き当たりばったりな展開の数々に開いた口が塞がらなかった。
愛瑠が自動人形の基盤をいじれなかったら?
開かずの間の暗証番号を心音が知らなかったら?
制限付きコンティニュー(7回)にしては、難易度VeryHard過ぎました。


・原画の統一感
基本的に複数原画はあまり好みじゃない。(※私の中でむりこぶは、一人としてカウント)
だが、作品内で違和感なくまとまっていれば許容は出来る。
本作品は二名の原画家によって描かれていたのだが、cccpoさんの絵がどうにも溶け込んでおらず、最後まで違和感が拭えなかった。


・CG差分の少なさ
エロメインというわけではない為、文句をつけるべきではないのかもしれないが、あえて言及しよう。
イキナリ局部を露出するよりも、一枚一枚脱がして気分を高めていきたいです。(淫らな願望)
自警団衣装のHが完備していた点は評価する。


・最終決戦
最強の自警団団長、獅堂を相手に総力戦!
一番盛り上げて欲しい場面であったけど、主人公が戦闘能力的に役に立たないのが歯がゆく、ノノちゃんも側で戦いを眺めるだけでイマイチ。
二人はあれかな、観客…?
キューブ使ってノノちゃんが完全狼化する展開があっても良かったんだよ?
主人公はアイルを見習って、閃光弾の一つや二つ用意しとけよ、くっそ!


・明かされなかった謎
糸に情報を提供していたのは結局誰だったのか?
学園関係者に裏切り者がいたと推測出来るが、最後まで分からず物語は幕を閉じた。
思わせぶりな伏線っぽいのは張らないで欲しい。
あ、最後まで滑稽なピエロ役、盗人”糸”お疲れ様でした。


■良かった点

・原画
早川ハルイさんの絵は、矢吹神を彷彿させる絵で非常に良かった。
メインヒロインの”3人”がより一層魅力的な存在として心に残ったのは、絵の力によるところが大きいのは間違いない。
ノノの半狼スタイルは反則。
開いた口から見える八重歯が非常にキュート。
アイルにはジト目でずっと見つめられたい。
毎朝一緒にコーヒーを飲む、幸せな新婚生活を夢見た。
明朗快活な瀬奈は、ノノやアイルにちょっかい出そうとすると一層魅力が増す。
眉を下げ、瞼を閉じた立ち絵がお気に入り。


・話の大筋
仲間を裏切りながら、揺るがない決意を胸に、目的遂行を目指す。
「これは、善人の物語ではない。」
「これは、悪を打倒する物語でもない。」
「これは、妹を救うために生きる人間の物語である。」
この流れは心躍った。
実際は意志が弱く、断固たる決意が出来ていない主人公だったが、先の展開が気になり読ませる足掛かりとなった。


・ピンチにヒロイン!(瀬奈)
瀕死の主人公の前に現れる救いの女神。
「”でも”はいらない。タクトは正しい。世界中が敵に回っても、私はタクトの味方」
「もしタクトが”悪”だったとしても構わない。信じる者が悪だとしたら、私は迷わず正義に刃を向ける」
繰り返す創立祭の記憶を引き継ぎ、例えそれがなくても彼女は主人公を信じてくれる。
作中一番胸にグッとくるシーンで大好き。


・主人公の異能を使ったギミック
強制逆行(タイムリターン)発動条件が、最後に発動してから28日後。
キューブを全て使い果たし、完全に積んだと思った所で起こる奇跡のような出来事は、非常に良く出来ていたのではなかろうか。


■総括

文章に書き起こしてみると不満点もそれなりに挙げられるが、良い点も同様に詰め込まれている良作。
ループものにありがちな同じテキストの繰り返しがほとんど無く、飽きずに読めた点も評価したい。
アイルちゃんの見た目がやっぱりモモにダブるんだよなぁ…可愛いけどさ。