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isoisoさんの残念な俺達の青春事情。の長文感想

ユーザー
isoiso
ゲーム
残念な俺達の青春事情。
ブランド
Chuablesoft
得点
75

一言コメント

咲耶「内容はなんか青春!って感じだし、残念な私達もヤバくて、なんていうかもう、ホントにおもしろかったわー」

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

語彙力に関して咲耶レベルの私が書き記す、残念な感想。
変態、コミュ障、アホの子、守銭奴、自堕落、脳筋、ヘタレ。
特有の残念さ(個性)を持ち得た七人で構成される非公式生徒会。
非公式と謳ってはいるものの、その存在と活動は学園中に周知されており、「楽しませる」を根底に起こす彼らの行動は、学校だけでなく読んでいる私たちを含め、存分に楽しませてくれるものだった。

物語の冒頭ー
学校の屋上で綺麗な夕焼けを背景に、主人公が黒髪貧乳美少女の力を必要としているシリアス展開…で始まるかと思いきや、
その内容は、猫耳メイドのコスプレをお願いし、全力で拒否られている場面であった。
上原あおいさんの演技も相まって、猫耳オプションを嫌がる姿や主人公への罵倒がキレッキレで、なんだかもう話の掴みとして非常にナイスと言わざるを得なかった。

また、この場面が4章(文化祭の準備)へと上手い具合に(回想として)繋がる瞬間は燐音同様、
「ここまで全部回想だったの!?長ッ!!イントロ長っ!!」
と、ツッコミを入れつつ笑ってしまうのは仕方のないことだと思いたい。

個人的に一番ツボったシーンは、全国共通試験の上位5名がクラスに勢揃いしていた場面。

全国5位の学力に、燐音が薄い胸をめいっぱい張りながら、ちょいと得意げになっているシーンに、追い打ちをかけるがの如く明かされる上位の面々。
3位のもっさん以降、2位(道太郎)1位(主人公)への繋ぎ方がホント秀逸。
謙遜から謙遜へのバトンタッチ。
あまりの驚きにヒロインらしからぬ顔へと変貌する燐音。
合間に咲耶のツッコミを挟みつつ、湧いてくる当然の疑問…なぜこの学校を選んだのか?
1位「家から近かったから」
2位「友達二人(泰と慶次)がここがいいって言ったから」
燐音「雑!君たちの進路の選び方雑!」
読み手の言いたいことを全て代弁してくれる燐音ちゃんは素晴らしき存在。

日常の一コマにおいて、面白い掛け合いが描かれた共通ルートは、非常に楽しませてもらったのだが、個別ルートへ入ってしまうとその面白さが薄れてしまった点が非常に残念。
恋愛メインへ話が推移してしまう為、日常描写が薄くなるのは仕方がないにしろ、ヒロインとのイチャラブに関しても今ひとつ物足りないのは、どうにかして欲しかった。


◆個別感想

・皇 燐音√

学園祭前日に咲耶から
「あのね。もしも……もしもの話よ?もしもこれからあたし達に、好きな人ができたとするでしょ?」
「それで、その……もしあたしたちが、同じ人を好きになったとしたらさ」
「その時は、たとえどんな結果になったとしても、恨みっこなしってことにしない?」

その問いかけに同意したにも関わらず、咲耶の主人公への気持ちを知ると、恋人のフリで妥協。
しかし我慢できず主人公にHを迫るも、拒否られ逃走。
仲間内(非公式生徒会)の空気を壊したまま逃げる自分勝手な行動は、彼女の株価を大きく下げた。
私服で腐敗Tシャツを着ていたが、よもやそれが彼女が腐敗することを示唆する伏線であったとは、気付かなんだ(違う)。

燐音の印象は悪くなったが、その分咲耶の好感度は鰻上り。
他のヒロインのルートにおいても、自身の覚悟を貫き、応援する姿勢は率直に言ってカッコイイし、作中一番愛しいヒロインとなった。
(あれ?燐音ではなく咲耶メインの感想に…)


・藍川 咲耶√

クリスマス(仮)デートのキス。
その行動の真意を問うことはなく、月日は流れて新学期。
この空白の期間長すぎだろと思いつつ読み進めるも、咲耶の気持ちに気付かず、あまつさえ傷つける言葉を投げる主人公。

共通ルートで、他人の心情の機微や心遣いが良かっただけに、恋愛における鈍感さが余計に悪目立ちした気がしてならない。
主人公の残念さとは「変態」にあらず。
「恋愛に疎いこと」が何より残念な点だと私は思った。

親友二人のおかげで、自身の気持ちに気付いて告白って流れは王道パターンだけれど、上記の理由から滑稽なシーンに見えてしまったのは残念なところ。
勉強に関してはアホの子で、日常の会話においても間違った言葉を使ったりするけれど、むしろそれが彼女の魅力であり可愛いところ。
裏表がない性格で、主人公と軽口を言い合える関係も非常に好ましい。

余談だが、この学校の赤点ボーダーライン高すぎぃ。(60点ってマジかよ)
咲耶って実は頭が良い…?(結論:私がおバカなだけ)


・中丘 ちまち√

父の浮気相手の子供で、母はガンで死別。
彼女がお金を貯める理由とは、将来の為の貯蓄であり、保身の為の盾が欲しかったから。

「他の誰がボクのことを裏切ったとしても、お金だけはボクを裏切らないからね」
守銭奴と聞いてた割にお金に汚いキャラじゃなく、むしろその理由に感心を抱いた。
ただ、長年に渡って解決しなかった両親との不仲が、話し合いでさっくり終わったのは肩透かし。
大きな山場を想像していたら、緩い丘だったみたいな…。

キャラに関しては、身長に比べて大きな果実を実らせており、Hにも積極的で満足。


・東雲 棗√

自身の部屋を人外魔境へと変える。
炊事洗濯食事とお嫁さんスキルが全て駄目。
乏しい女子力に加え、寒いギャグしか言わない、一番魅力の乏しいヒロイン。

シナリオについても特に突っ込む所がなく、非公式生徒会の活動が普段と違った方向を見せただけ。
おそらく数ヶ月ほど経ったら、記憶から忘却されるくらい薄い内容。


◆エピローグ

大切な仲間と過ごした、秘密基地(活動拠点)の取り壊し。
思い出深い場所が無くなる寂寥感。
非公式生徒会が卒業した今尚、学園に語り継がれる彼女達の話は、意味ある活動であったことが予想に反し受け継がれていた。
これから先、10年、100年経っても忘れないよう写真に残そう。
残念な日々を過ごした、残念な私達に相応しい場所で…。
その記念写真が、パッケージ・タイトル画面へと繋がる様は、非常に締まりが良い。
残念な仲間と過ごした青春の日々に思いを馳せながら、作品の余韻に浸ることが出来る良い終わり方だった。