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isoisoさんのヒマワリと恋の記憶の長文感想

ユーザー
isoiso
ゲーム
ヒマワリと恋の記憶
ブランド
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得点
75

一言コメント

最初から最後まで、茜に恋し続けた作品だった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

以下、いつも通りの要約、合間に感想。

◆共通
主人公(元倉優)が幼馴染の水押カナの弟(太一)にサッカーを教えた帰り道、忘れ物に気付いて取りに戻ると、イベント広場の方から歌声が聞こえる。
歌声の方へ行くと、同じクラスで席が隣の萩浜茜の好きな人(サッカー部副部長でエースの門脇隼人)を偶然にも知ることに。
また、主人公の片思いの相手(茜の親友にして幼馴染の月浦亜依)は元々茜にバレており、秘密の共有、そしてお互いの恋を応援する同盟関係が結ばれた。
あ、この設定知ってる。(とらドラ)
今まで話すことの無かった二人が、放課後の作戦会議を重ねる内に、親しくなっていく変化は嬉しく感じる。

ちょっとした髪型の変化や、学校を欠席した茜を心配し、見舞いに来る主人公の優しさに触れる事で、自分の気持ちが揺らぎつつある彼女は、体育祭(スポーツチャレンジ)の前日に隼人へ告白するも玉砕。
振られた茜をまだ諦めるな的な意味で、恋山公園(恋愛成就のデートスポット)に連れて来るも一笑。(いつもの調子の笑い声が聞けて、多少なりとも元気を取り戻す)
自身の恋は叶わなかったが、同盟関係は有効で、引き続き主人公の恋を応援する彼女。
そして同盟を理由に、これから迎える夏休みを一緒に楽しもうと約束する二人。
共通の話を踏まえて、やっぱり外見で好きになった相手よりも、内面を知り気軽に過ごせる二人が結ばれて欲しいと切に思う。


◆萩浜茜
勉強会の前に必ず自宅へ帰る理由が、弟たちのご飯を作る為という家庭的な一面を知ることで、当初抱いていた、ちょっとうるさいThe普通女子という印象がどんどん変わっていくのが良い。
授業をサボって戻ってきた亜依と主人公の楽しそうな会話を、無理矢理中断したことに罪悪感。
応援する立場でありながら、隠しきれない気持ちが行動に表れてしまう矛盾。
もう誰に恋しているのかは明白で、必死に目を逸らそうとする葛藤が好き。

茜は、二人をくっつける為にプレゼント作戦を提案し一緒に買い物。
渡す当日7/21は、茜の誕生日なのをカナから知った主人公が、茜にプレゼント(髪留め)を渡す。
予想外の贈り物に、嬉しい気持ちを隠そうとする姿が堪らなく愛おしい。

茜は二人が両思いなのを証明すると言って、一方的に同盟を打ち切り、告白のお膳立てをするが、主人公の亜依に抱く気持ちは憧れだった、間違いない(確信)

文化祭の出し物は茜のライブに決まり、主人公はマネージャーとしてサポート。
茜が隼人にした告白は、愛ではなく憧れを伝えるもので、本当は主人公のことがずっと好きだったと告白、そして逃走。
隼人の応援を後押しに、逃げた彼女を追いかける。
お互いにすれ違っていた想いが、ようやく正しい方向を向いて、恋人になる瞬間はホント良かった。

カナのお弁当に嫉妬して交換。
料理の練習を名目にした二人の心の内の一致が微笑ましい。
(やった!彼女の弁当)
(やった……これで堂々とお弁当作ってあげられる……)

東京のオーディションへ行く茜に自信を持って貰いたくて、過去の試合のビデオを見せた主人公の言葉が胸に響く。
「茜より歌が上手い奴がいるかもしれない。でも、今まで毎日のようにあの公園で練習してきたんだ」
「それは誇るべき、自信じゃないか?誰にも負けない実績じゃないのか?」
「誰も認めなくても俺は認めるよ。だからさ、自信持てよな。俺の中で茜は……もうすでに輝いてるよ……」

茜は歌手を目指し東京へ行くが、主人公も彼女に合わせ進学先を変更し、勉強に打ち込む。
彼女の家庭環境は、父の勤め先の倒産によって母は離婚。
親戚の援助で学校へ通い、茜は家事だけでなく、弟たちの面倒まで見るという過酷なもの。
文化祭当日、急なスケジュールの変更はあったものの、クラス全員の力で集客し、ライブは成功。
そしてエンドロールが流れて…終わり!?
アルバムに挟まれた写真の女性が茜にそっくりだったり、唐突に未来の声が聞こえたり、自称ラブリー・エンジェルの坂本が、本当にその選択で間違いはないか?と意味深なこと散々言ってたのはどうした??


◆月浦亜依
茜の好きな人を知った亜依は、主人公と結ばれたことを素直に喜べず、お互いに一歩を踏み込めない関係が続く。
二人が上手くいっていないのを察し、茜が亜依の背中を押すも、主人公と別れる最悪な展開。
茜が亜依に真意を問い質し、遠慮し合っていた二人が喧嘩をして、気持ちをぶつけ合う。
「……失恋だって……私の人生の一部だから……」
「あんたの事だって、あんたと過ごした小さい頃の思い出、そして、今こうしてあんたと喧嘩してる今だって、私にとっては大切なの。大切なあんたとの記憶なの」
「だから、あんな事であんたの事嫌いになる訳ないし、私の恋が叶わなくても、あんたを恨んだりなんてする訳ないじゃない……」
亜依は、完全に茜の引き立て役だなぁ。

翌日、いつもの場所で茜は主人公に告白するが振られ、初恋は終わってしまうが、好きな人の背中を後押し。
主人公は再び亜依に告白し、逃げようとする彼女を茜が押し留め、ようやく二人は本当の恋人同士となる。
亜依と茜は親友でありながら、どこか距離を感じていたのは、茜の父の会社が倒産した原因を、亜依の父が作ったから。

街でデートし、帰りの電車が運転見合わせ。
そのままホテルで一夜を共に過ごして、翌日もデートの続き。
茜がバイトを始めたのに感化されて、二人も求人探し、着ぐるみのバイト。
文化祭前日、父の稽古押し、母の衣装攻めに耐え切れずに家出し、駆け落ち。
当てもなく北を目指し、一面の向日葵畑でパッケージ絵回収。
道中知り合った不良の兵藤の世話になり、石神へ戻って、約束の茜のライブを見る二人。

亜依が自称不良を語るのは、鳥かごの境遇から見える憧れの表れか。
学年一の美少女の彼女が、どうして接点の無かった主人公を好きだったのかは、最後まで謎だった。


◆水押カナ
熱を出して学校を休んだ主人公を心配し、自分も学校を早退して付きっきりの看病。
弟の太一にサッカーを教えた帰り道、カナのモテ事情を聞かされ、告白を断り続ける幼馴染にホッとする。
カナのモテないもの同士で付き合っちゃおうか?発言に加えて、カナ母から恋人同士にしか見えない二人で、意識し始める主人公。
暗躍する太一と隼人の後押し、お茶碗のプレゼント交換で、ようやく自分の恋心に気付く。
茜に相談して告白し、晴れて二人は恋人同士となる。

幼馴染の関係改善をするべく、主人公宅でカナのご飯。
試合の応援に行くと無茶な接触プレーで病院に運ばれる隼人。
三人の関係はより一層ギクシャクするが、隼人が優に仕掛けたPK勝負で昔のような関係を取り戻しEND。

もう一人の幼馴染である沙紀の死が、3人の関係がギクシャクする理由。
全国大会準々決勝の試合後、隼人から沙紀が事故に遭い、病院で治療していることを知らされる。
隼人は沙紀との約束(優勝したら付き合う。そして優よりも多く点を取って試合に勝つ)を守るべく、翌日の準決勝に臨むが、優は試合に出ることなくサッカーを辞める。


◆蛇田汐里
いつもボッキー食べている貧乳で、幽霊を調べる不思議ちゃん。
彼女と過ごす毎日は酷く退屈で、ミステリアスな存在の彼女に一片の興味も抱くことはなく、真顔で淡々と読み進めた。
本屋のカップル応援キャンペーンに釣られて、お互いに本をプレゼントし、汐里を好きだと気付いた主人公は、恋山公園で告白し付き合う。
カナの外出禁止令(テストで赤点)が解かれ、以前流れたパーティー再び。
周囲に突っ込まれ名前呼びへと変わり初H。
皆が汐里の存在を忘れ、主人公も彼女のことを忘れたと思ったら、病院で目覚める汐里。
あ、夢オチですね。


◆True story
クリスマスの夜、公園で一人イチゴショートを食べる主人公と、横に座るホームレスの男(坂本)と会話。
スポーツ用品販売会社の社長で、東京の億ション最上階に住む、そんな夢から覚めると、亜依と付き合う現実が待っていた。
茜との同盟関係は継続中で、恋人の亜依は、茜と主人公を結ぼうとあれこれ画策する変な状況。
文化祭のステージ目指して練習に励む茜とサポートする主人公。
アルバムに挟まれた写真を見ることで、歌手デビューして三年目の茜と別れの瞬間の記憶が蘇る。
文化祭の日、亜依と二人で旅行に行き、向日葵畑で告げられる真実。
この場所は修学旅行の日、茜と訪れた思い出の場所。
そして付き合い始めてからの記憶が一つ一つ蘇る、走馬灯のような演出は最高だった。
やはり茜こそが本作のメインヒロイン!(知ってた)
まぁ茜にした酷い仕打ちは許されないけどな、主人公はギルティ。

坂本の仕事は、クリスマスの夜、愛に迷った人達を救う事。
主人公が過ごした日々は、全て記憶から作られた世界。
ちょっとした事故で、別の人間の意識が入り、記憶が飛んで現実と思い込んでしまった。
亜依は主人公を起こす為に坂本が連れてきた。
彼女がピアノで弾いていた曲は、茜と主人公が映画で聴いた曲。
(アメリカの古い映画『天使が贈る時間』のリメイクのEDで流れた)
蛇田汐里は現実の世界ではあっていない存在だから、記憶の整合性を取るために、排斥された。

現実の世界で主人公は、頑張ることを諦めた。
茜に一方的に別れを告げて逃げ出した。
今更謝り続け、好きだと言っても遅いけど、茜が本当に大切な存在だと気付き奔走。
もし許されるなら過去の青春時代ではなく、これから先の未来を茜と過ごしたいという思いを胸に、文化祭のステージで告白。

別れてから三年後のクリスマス、地元の石神へ帰る新幹線で偶然の鉢合わせ。
謝罪と告白。そして新たな青春の始まり。
また、君に恋をする。